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恵まれているはずの家族スタイル

一生に出会える人の数は30,000人と言われ、本当の友だちになるのは30人、親友と呼べる人は3人、と言われている。
では親と呼べるのは何人だろうか。

今回のかき集めテーマは「#好きなスタイル」である。スタイルということなので、好きな形を考えてみたところ、一番に浮かんだんのは家族の形だった。

家族の定番の形といえば「核家族」スタイルで、これは「夫婦のみ」「夫婦と未婚の子供」「父親また母親とその未婚の子供」の家族を指し、アメリカの人類学者であるジョージ・マードックが人類に普遍的ですべての家族の基礎的な単位(nuclear family)として名付けたらしい。
冒頭の質問に戻れば、親とは2人なのが普通である。

しかし世の中には色々な親に育てられた子供もいる。その場合には親と呼べる人は2人に限らず、3人4人…といるだろう。一生のうちに出会って仲良くなる人数も限られているのに、親ほどの絆で結ばれる人が3人以上いるなんて、恵まれていることだろう。僕自身も幼少期から親戚の家にたらい回しに預けられ、その後母親が3回変わった経験から、恵まれているなと今では思えるようになった。

しかし子供自身がその特殊性に気が付くことは早くても、それが恵まれていることだと気が付くには時間がかかる。


なぜ恵まれていることに気が付かないかというと、親が子供に対して申し訳ないという思いがあるからで、また子供の周囲の大人たちからの腫物に触るような目を受けて、良くないことなのではないかと思うから、だと推測している。ようは大人たちのせいなのだ。

最近ある映画を観て、そんなことを考えた。それが『そして、バトンは渡された』である。

父と娘の二人暮らしのある家族。娘の森宮優子は高校3年生で、料理上手な義理の父親・森宮さんと2日とで暮らしていた。今は卒業式に向けピアノを猛特訓中。将来のこと、恋のこと、友達のこと、うまくいかないことばかり…。
一方で、母と娘で暮らすある家族。母親の梨花は、何度も夫を替えながら自由奔放に生きている魔性の女。泣き虫な娘のみぃたんに目いっぱい愛情を注いで暮らしているようだったが、ある日突然、愛娘を残して姿を消してしまった。

そして、優子の元に届いた一通の手紙をきっかけに、「核家族ではない」2つの家族がつながってゆく……というお話。

(ここからはネタバレがあります)

森宮優子は、いつも笑顔を絶やさない女子高生。彼女は母親に「つらい時にこそ笑うの」と教わって育ってきたからだ。そのせいもあって、クラスから大変な仕事を押し付けたられたり、男子に媚びを売っていると陰口を叩かれたりしていた。

なぜ彼女が笑顔を絶やさない子になったかというと、森宮さんに出会うまでに2回名字が変わるという経験をしたことによる。親が次々と変わっていく大変な状況の中で、彼女が生きていく術だった。

この話は自分自身でも、とても共感できるところだった。前述したとおり、僕自身も幼少期から親戚の家にたらい回しに預けられ、その後母親が3回変わった。そんな環境で生きていくうえで一番大事なことは、やはり笑顔を絶やさないことだった。とにかく笑っていれさえすれば、その中で受け入れてもらいやすくなるし、何より辛さが少なくなる。

辛いほど笑顔が増える。笑顔が増えれば辛さは減る。しかし作り笑顔によって減るのは悲しみや恐れだけでなく、その時々の親たちへの感謝の気持ちだと思う。

少しでも子供に辛い思いをさせないようにと、その時々の最大限の愛情をその子供に対して注いでくれていた。

そのことに気が付かず、辛いことばかりに注目して笑顔を作らせる。それでは、せっかくの恵まれた環境に気が付けなくなってしまう。

映画のラストで優子自身も「辛い時にこそ笑う」と自分に言い聞かせながらも、目からは大粒の涙を流す。彼女もきっとその辛さの裏に、大きな愛情を感じたからだと思う。

親がたくさんいる家族スタイルは、本当とても恵まれている。この映画を観てより一層そのことを確信した。

編集:アカ ヨシロウ

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