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大人になったら恋愛ではなく愛着
駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。
今回のテーマは「#大人の恋愛」です。
昨今流行っている「恋愛リアリティーショー」にイマイチついていけない。
好きだ嫌いだ、惚れた腫れた、とキラキラした世界の隙間から、「何とかして売れてやる」という暗闇が見え隠れする様子がどうもいただけない。
そんな中、唯一、ドはまりした恋愛リアリティーショーが『あいの里』である。
さまざまな経歴を持つ35歳以上の男女が、共同生活を送りながらパートナー探しに挑む。もう一度恋がしたい彼らに運命の出会いはあるのか、それとも一人で去ることになるのか。
一部界隈では「人間観察バラエティー」と揶揄されるくらいに、恋愛関係が進んでいく道のりが楽しいというよりも、参加者たちの人間性が露になっていく姿が面白い。
例えば「将来子供が欲しい!」というのが恋愛条件に入っているとして、恋愛を楽しむのであれば「いいね!俺も欲しい!」か「そか・・・俺はいらないな」というYes/Noの二択で条件をすり合わせていけばよい。
しかし『あいの里』では、「なぜ子供が欲しいという考えに至ったか」にまで迫る。
そして「なぜ」が人格を形成している絶対的な部分なのか、もしくは社会的な価値観によって変わりうるものなのかによって、「将来子供が欲しい」という条件は譲れるものなのかそうでないのかが決め手となる。つまりマッチングアプリの検索条件のように、表面的な価値観マッチングなどはしないわけである。
その「なぜ」を互いに理解しながら、そして視聴者にも分かるように構成されていて、非常に見応えのあるリアリティーショーになっている。まるで居酒屋のカウンターで、その日初めて出会ったおじさん(おばさん)たちの会話を覗き見しているような感じだ。
具体的に印象に残っているシーンを語っても良いのだが、今回は『あいの里』を通じて考えた「大人の恋愛」について述べたい。
『あいの里』でカップリングする直前、必ずと言っても良いほど出てくる「里を出て普段の生活に戻ってもカップルを続けられるだろうか」という悩み。
カメラが向けられている場所での共同生活という非日常から、仕事をして生活をする日常に戻った時に、相手(もしくは自分)が変わってしまうのではないか、という不安である。
この悩みに向き合う姿を見て「大人だな~」と毎回思う。なぜなら「若人の恋愛」であれば、未来をそこまで凝視せずにその瞬間のノリと勢いでイケてしまうからだ。大人であるからこそ相手を想い、自分の家族を想い「本当に良いのだろうか?」と悩む。
若人と大人の違いを簡潔に述べるならば「刺激を取るか安定を取るか」に集約される。「付き合うならこの人だけど、結婚するならこの人だよね~」でお馴染みの価値観である。
大人になるにつれて、刺激よりも安定、非日常よりも日常、普段をどれだけ安心して一緒に過ごせるかが「大人の恋愛」において最重要な要素である。
本当にそうであろうか。
たしかに、大人になるにつれて、生活には刺激より安定を求めるのが一般的だ。それは分かる。しかし安定ばかりを追求しても、逆に良い結果にならないのではないか。
青田麻未著『「ふつうの暮らし」を美学する 家から考える「日常美学」入門』という本に、目を引く一文があった。
私たちの生活は確かに親しみによって支えられているものの、この親しみを維持し続けるためには、日常のなかで新奇さを感じることも必要なのではないか、ということです。
一定期間を同じ場所で暮らすことで、私たちはその場所に親しみを感じるようになります。
しかし、すなわち新奇さを発見することがなければ、その親しみは退屈へと転じ、その場所で暮らすこと自体をネガティブなことに感じるようになってしまうかもしれません。
おそらくこうした日常生活の場における新規さとの出会いは、自分の暮らす街に愛着を感じ続けるために必要なものです。
この本では場所、特に生活をする「街」に対する愛着として「親しみ」と「新奇さ」の必要性を述べている。しかしこれは、人に対しても同じことが言えるのではないだろうか。
どんなに落ち着く相手でも、親しみを感じるばかりでは、いずれは「退屈」になってしまう。(だから世の中に"不倫"が存在するだろう)
親しみがある関係に「新奇さ」を見出すこと。そして親しみと新奇さを繰り返すことで形成される、「愛着」こそが「大人の恋愛」に必要なことなのではないだろうか。
あいの里のシーズン2は過酷だったと聞く。非日常という「新奇さ」ばかりではなく、落ち着いて生活ができる「親しみ」を、シーズン3があるならば取り入れて欲しい。
一生を添い遂げる人生最後のパートナーを見つけるのは、恋愛ではなく愛着なのだから。
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