「趣味は映画です」といつか胸を張って言いたい

「趣味は映画です」と答えるのに抵抗がある。

観たことない映画なんて沢山あるし、映画好きの人たちが必ず見ているような往年の名作は、ぶっちゃけほとんど観ていない。

真の映画好きと話している時に、出てくる監督名、俳優名が全然わからない。


おそらく映画作品そのものが好きなのではなく、映画を通して考えることが好きなのだと思う。たぶん、こじらせた映画好きだ。

そして映画について考えつづけた結果、「すべてのことは映画に通じている」と思うようになった。だからどんなテーマでも大抵は映画につなげて書ける。

今回メンバーから「映画を好きになったきっかけは?」というリクエストがあったので答えていきたい。

振り返ると、これまでの人生で、映画の奥深さを感じた出会いが2つあった。

ひとつは大学4年生の時。それまでは年に2,3本しか映画を観ていなかったが、大学にあったメディアライブラリーなる施設との出会いが運命を変えた。この施設では、学生証を見せれば無料で映画を観れたのである。 

大学4年生時は授業も少なく、暇さえあればここで映画を観ていた。映画にハマり出したのはこの頃だと思う。

たくさんの作品を観ていく中で、衝撃を受けたのは西川美和監督の『ゆれる』だった。

それまで観てきた映画は、「全米が泣いた!」「かつてない興奮」「きっとあなたは涙する」「衝撃のラスト」といった触れ込みの通り、観てすぐに感想を持てる作品ばかりで、それはそれで面白かった。

しかし『ゆれる』は今までとは違った。映画を観てすぐには感想が持てず、自分の中で映画を反芻して、ようやく感想らしきものを見つけた。

その時に「この映画は、観た人がこれまでどんな経験をしてきたかによって感想が違うのかもしれない」と思った。映画を通じて自分の経験を振り返るなんて初めてだった。

そして「こんな映画もあるのか」と、「もっと同じような映画を観たい!」と思うようになって、邦画ばかり観るようになる。

西川美和、是枝裕和、園子温、行定勲、三池崇史、中島哲也・・・などなど、
作品のポスター並べたら真っ暗になりそうな暗めの邦画ばかり観るようになり、邦画沼へと突き進んでいく。

2つ目の出会いは、それから5年後、社会人になってからだ。

ここまでどっぷり邦画沼に浸かってしまったので、だんだんと洋画を観なくなっていた。特にアクション系、ヒーロー系の洋画から離れていった。だって、観る前から感想が決まってそうなんだもの。

そんな時に出会ったのがMCU作品だった。

それまで「観ず嫌い」をしていたのだが、観ようとなったのは「MCUは西海岸のハイテクITアメリカと東海岸の古き良き軍国アメリカが、時に結託し、時に戦う話。MCUを観ればアメリカが分かる」という話を聞いたことだった。

映画を通じて現実世界を知れるなんて、それも直接的な表現ではなくヒーローたちの裏に潜ませるなんて、なんと奥深い映画なんだ・・・と思ったからだ。

案の定、MCUはとても面白くて、それから映画を好き嫌いすることはなくなった。
どんな映画だって面白い。観てすぐに感想が持てる映画も、考えてしまう映画も、邦画も、洋画も。映画は全て面白いし、奥が深いと思えるようになったのはこの頃だった。

そうして多くの映画を観て、考えることで「すべてのことは映画に通じている」と思うようになった。

しかしそれによる弊害もある。初めて観た映画も、すでに観たことある映画のような気がしてしまうのだ。
そうならないように、最近はなるべく頭を空っぽにして観るようにしている。気になったことはその場でメモ帳に書き出して、頭の中で考えながら観ないようにしている。


今回のリクエストに「映画以外の趣味について」とあったので、こんな話を書いた。

今でも「趣味は映画です」と答えるのに抵抗はある。だけど映画は好きだし、いつかは胸を張って「趣味は映画です」と言えるようになりたいと思う。

編集:円(えん)

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