血迷う神経? -気絶経験8回の女 ( ・`д・´)ドヤッ 中編-
(この話には前編がありますので、まずは↓そちら↓を先にお楽しみください。)
5回目の前に 迷走神経の話
小学校時代は、よく予防接種を受けた。
注射を座って行うと、私は必ず視界がチカチカモヤモヤと暗くなり、吐き気がし、なんとかトイレに駆け込み、座って深呼吸して、なんとか気絶をしのぐ、ということを繰り返した。
「血管性迷走神経反射失神」とは、血管に刺激を受けたとき、迷走神経が異常信号を出し、その場所に血液が集中してしまうことにより、血圧が下がり、脳に行くはずの血液が不足し、脳貧血になり、失神するシステムのようだ。
もちろん、どんな人でも「迷走神経反射」システムは稼働しているようで、血管に針が入ると、どんな人でも多少血圧は下がるようだ。
しかし、私の場合は、元々の血圧が低いのに加えて、その刺激による血圧低下の振れ幅が大きいから、限界値を越えて気絶する、そう医師から説明されたことがある。
また、男性に多いようだが、お酒で副交感神経が優位なときに、トイレに行って小をすると、徐脈や低血圧になり、失神するという排尿失神というものがあるらしいが、それも迷走神経反射によるものらしい。
迷走神経という名前は、この神経が、枝分かれして上に行ったり下に行ったり、迷走、放浪しているように見えたから、解剖学者がつけたという説があるらしいが…
私からしたら「何を勝手に血迷ってくれてんだい?迷走神経さんよ…」でしかない。
久々の5回目 気絶の新法則
中学生になり、横たわって採血や注射をすると脳貧血にならないことを知り、病院や学校でそういう機会があると、お願いして横たわる形を取らせてもらうように工夫を始めた。
その他にも、衝撃的な怪我をしての出血や激しい痛みに見舞われることもなく、私は高校生まで、気絶を忘れていた。
高2になった、あるとき。
美術部の友人が、鼻血を出した。
私自身、鼻血は人生で一度しか出たことがない。
中学生のあるとき、朝起きてトイレに入ると鼻水が垂れてきたので指で拭おうとしたら、鼻水ではなく血だった!というものだ。
でも、その友人は、日頃から鼻血を出し慣れている子だった。
鼻ので中に溜まってくる血を、いっぺんに出してしまう技も心得ていたらしい。
それをするために、トイレの洗面所に向かいたかったのだろう。
「トイレいくわ…」と言った。
私は念のため、鼻を押さえて上を向いて歩く友達の体に手を添えながら付き添った。
トイレにつくなり、その友達は、おじさんが痰をカーーッペッ!とやるように、鼻血を口から出した。
白い陶器の洗面ボウルに、私の視界に、鮮明な赤い血が、一面バーッと広がった。
私は、ただ驚いていた。
大量の血を吐く人を初めて見たからだろうか。
頭では、ただの鼻血を口から出しただけだ、と理解しているのに。
その鮮明な赤い血の広がりが、私の目から脳に、異常事態の物証として伝えられてしまったのだろうか。
とたんに目の前がモヤモヤしてきて、視界が狭くなる。
(あーなんかまた気持ち悪いな…でも私、付き添いなのに…しっかりしなきゃ…気持ちが悪いけど、ここは運良くトイレだから、すぐトイレにしゃがみこめるな…)
その辺りまでしか記憶がなかった。
…
なんだかパンパンと刺激音がしている。
ぼやけた映像が写り始める。
左のほうに水色が見える。
人の顔が見えるような気がする、女性のようだ。
動きが見えてくる、肌色のものが動いている。
何かを喋っているようなこもった音声を感じる。
「パンパンパン… ○…○…ぃじょーう…? …ぃじょーぶ?…っかり…!」
「パンパンパン!」
「○○(私の名前)、大丈夫ー??しっかりーー!」
あれ?あぁ…あ?!
私はようやく、
目の前に写る私に話しかけている女性が友人であること、
パンパンが手を叩いている音だということ、水色に見えたものは、トイレのスリッパ!
そして、私はトイレの洗面所前の床に倒れている!
ということを認識する!
脳がすべての事態を思い出したとたん、最後に、気持ち悪さが一気に復活した。
鼻血どころではなくなってしまったであろう友人には、本当に申し訳なかった。
今回は私は痛くも痒くもジンジンもなかったのに…
血を吐くということは、私にとって、そんなにショックなことだったのだろうか…
「迷走神経さん、早とちりもいいとこだよ…ホントに…」
お疲れ社会人 謎の6回目
大学4年間は、中学3年間と同様、気持ち悪くなったり、立ち眩みすることはあっても、おかげさまで、気絶とは無縁に過ごすことができた。
経験からの教訓が出来てくるし、それなりの対処が取れるようになっているからだろう。
しかし。
私は、また新たな謎の気絶体験をすることになる。
社会人になって数年目のあるとき。
朝は早く出勤し、残業で遅くまで仕事をする、という日々が続いていたが、その日は早く上がることにした。
底が見え始めているファンデーションの替えを買いに行くためだ。
デパコスコーナーのいつものお店へ。
カウンターの高いスツールに腰をかけ、お目当ての商品を伝えると、BAのお姉さんが、
「新作のファンデーション出てますよ、試して行かれますか?」
と教えてくれた。
タッチアップのために、今のメイクを落とすついでにマッサージやパックもしますよ、とのことで、ありがたく受けることにした。
ご存じない方もいるかもしれないが、化粧品のコーナーは、化粧うつりがよく見えるようになのか、女優ライト効果のためなのか、やたらと明るい。
ライトの熱を感じるほどだ。
そんなところでメイクを一度落とされ、煌々と照らされるほど素晴らしい顔と肌の持ち主ではないのだが、ライトは誰にでも降り注いでいた。
しばらくは、顔をマッサージされていて、気持ちがいいな、日頃の仕事の疲れも取れていくようだな…と癒されていた、はずだった。
しかし、雲行きは突如怪しくなった。
なんだか頭の中と、胸のあたりがムカムカモヤモヤし始めた…
これは、やばい…いつものあれだ…
でも、なんで?
とりあえず、お姉さんには現状を伝えなければ…
「ごめんなさい、なんだかちょっと気持ちが悪いので、ちょっと止めもらっていいですか…」
そう言って、私はカウンターの上に両手を重ね、その上に顔をうつ伏せに乗せ、なんとかしのごうとした…
…
あれ?
これ、誰だ?
気が付くと、なんだか大きな女の人のようなぼんやりとしたシルエットが覗き込んでいるような光景が目に入ってきた。
なのに「…だい…ょうぶ…です…か…おきゃ…さ…?」と聞こえてくる声は、なんだか低い男性のよう…
(さて、私はどうなって、何を見ていたのか?皆さんお分かりになるだろうか?)
そう。
私は意識を失い、カウンターの机、高いスツールからずり落ち、カウンター下に貼られていた女優のポスターの前に倒れ込んでいて、BAのお姉さんに呼ばれて車椅子を持って駆け付けた警備員のおじさんに、呼びかけられているところだった。
多少気持ち悪さは残ってはいたものの、具合が悪いわけでもなかったので、全然大丈夫だったのだが、周りからしてみればいきなり気を失った事件、ということで、たまたますごく近くにあった総合病院へそのまま連れていってくれた。
病院で点滴を受けながら看護師さんと話す中で
「元々疲れていたところに、顔のマッサージ中、頚部を後ろに曲げた状態で血管の通りも悪かったのと、化粧品カウンターのライトの熱でのぼせたのもあるのでは?」
ということがわかった。
しかし、替えのファンデーションは買えず、化粧も落とされて、お試し新作ファンデーションもつける手前でのシャットダウン…
(なんなんだ…私はポンコツPCか…)
ここで初めて、私は、自分の気絶のときの感覚が「PCのシャットダウンに似ている」と感じた。
さて、似ている感覚の話と、残すはあと2回の気絶歴…!
次回へつづく!