小林賢太郎とアンパンチ。
みなさん
五輪、楽しんでますか。
私は…あまり楽しめていません。
私がnoteをはじめるきっかけだった彼へのスキャンダラスな注目に
日々心が摩耗していくのを感じています。
スピード解任劇からもうすぐ一週間経とうとする中で、
すでに何人もの方が筆をとり、私の思うことを言語化してくれています。
私には理論的な文章は書けないので、
「例え話」で 今抱えているモヤモヤを言葉にしようと思います。
念のためにお伝えしますが、以下の話はフィクションであり例え話です。
何かを今回の問題に巻き込んだり、問題の矮小化や誇大化を目的としたものではありません。
例え話:
『もし、アンパンマンが世界中から嫌われてしまったら』
ここに、いかなる暴力も許してはいけないと主張する人がいるとします。
「暴力は人類最大の欠点であり汚点だ!」
海外からお越しのAさんです。
この人は日本に初めて来ました。
Aさんがとても怒っています。
テレビのザッピング中にとある暴力的なアニメを見てしまったのだとか。
「殴った相手が空の彼方まで飛んでいったぞ!乗り物ごと吹き飛ばす威力なんて、殺傷能力が高いことの証明だ。非常に暴力的な表現だった!」
彼が見たのは、『アンパンマン』でした。
アンパンマンがばいきんまんをアンパンチでやっつけたシーンを見て非常にショックを受けたそうです。
Aさんは日本で最もポピュラーな子供向け番組であることを知りました。
「これを日本の子どもたちは好んで見ているだと?!なんということだ…
直ちに国際団体の子どもの人権協議会に連絡させてもらう!」
Aさんから怒りの猛抗議を受けた団体は、
「文化を問わず、暴力を是認する子供向け番組は放映すべきではない」
との声明を出しました。
そしてアンパンマンは、瞬く間に『兵器並の圧倒的な力による暴力で相手を撃墜するアニメ』として世界中に広まってしまいました。
その報告を受け、日本テレビはその日のうちに『アンパンマン』のアニメ放送打ち切りを発表しました。
ところで、
アンパンマンは
『兵器並の圧倒的な力による暴力で相手を撃墜するアニメ』である。
この説明は間違っているのでしょうか?
…間違ってはいないですよね。
ばいきんまんの乗り物ごと”ワンパン”で空の彼方へとブッ飛ばすのだから、よくよく考えてみると物凄い馬鹿力なのは本当のことですし、
基本的には毎回毎回ばいきんまんがお空にばいばいきんするので、ある意味では正しい表現だといえます。
「じゃあ、アンパンマンは暴力を振るっていることを認めるな?」
この人は海外在住のBさんです。
今回の騒動で『アンパンマン』という”暴力的なアニメ”が日本で放映されていることを知りました。
近所に住む日本人の友人にアンパンマンへの批判を熱く語っています。
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- アンパンマンがばいきんまんをグーでパンチしていることは認めます。
「暴力は良いことか?悪いことか?」
- 悪いことです。
「わかっているじゃないか。
それでは『アンパンマン』は暴力的なアニメだな?」
ー …そうとは言い切れません。
「アンパンマンは相手を殴り飛ばす暴力アニメ」という表現だけで
アンパンマンのすべてを説明できているかといえば、その答えはNOです。
「何故だ?!」
ー アンパンマンは困った人のお手伝いをすすんでやるし、お腹が空いている人には自分の顔をちぎって食べさせてあげるような、やさしいキャラクターなんです。
「顔を食べさせるだと…?なんてグロテスクなんだ。」
ー 彼はパンの擬人化なので、顔がパンで出来ているんです。
「意味がわからんな。」
- そう言われましてもそういう作品なので…。
「とにかく! アンパンマンがパンだろうがなんだろうが、子供向け番組で暴力描写はよくないだろ!!」
暴力を振るうことは確かに悪いことですし、それを子どもに見せるべきではないという意見は否定しませんが、だからといって「アンパンマンは暴力を助長するアニメだ」といった紹介のされ方はあまりにも腑に落ちません。
アンパンマンを知っている人たちは
アンパンマンが悪者ではないことを口々に説明します。
ー たしかにアンパンマンは ばいきんまんを殴って懲らしめるけど、そもそもみんなを困らせてるのはばいきんまんの方じゃん。
ー 暴力をふるうことはたしかによくないけど、別に暴力を推奨しているわけではないんだよなぁ。
ー 『アンパンマン』て作品は、擬人化された食べ物と動物が人間と共存している世界にウイルスとか雑菌とかカビがやってきて世界に害をもたらすって構図で作られたストーリーであって、たしかに敵キャラをぶん殴ってるけどそれは「バイキンはちゃんと消毒しよう」ってことの比喩になってるんだ。
でも、世界はこう言います。
「たかがアニメだろ?何を力説してるんだ。」
「何をどう言っても暴力を扱う子ども番組は批判されるべき。」
何もアンパンマンがパンチしてないと言いたいわけじゃないんです。
もちろん暴力を正当化するつもりなんてありません。
ただただ、「アンパンチだけがアンパンマンじゃないんだよ」って伝えたいだけなんです。
改めて、小林賢太郎氏について
ファンを含む、小林賢太郎氏を知る人たちの多くが
「あの表現はコントだとしても絶対にダメなものだ」と認識しています。
20年以上前だとしても、決して言ってはいけない言葉でした。
彼は大虐殺のネタだけをやっている人ではありません。
もうやっていません。
(本来ならあのコントは既に新しい誰かが見ることのないものでした。)
彼の作ったコントには、皮肉が効きすぎているものもあるし、下ネタだらけなネタもあります。
怖いコント、切ないコント、気分がぶち上がる演劇、言語のいらない笑い、いろんなものを小林賢太郎という人は生み出しながら、
「人を傷つけない表現の形」と真摯に向き合ってきました。
件の台詞は決定的によくないものですから、式典ディレクターを解任するに値するという判断自体が間違っているとは思いません。
でも、たとえ針が1ミリも振れなかったとしても、彼が選ばれた理由や、彼の優れているところ、彼の想いは、天秤に乗せる価値のないものでしょうか。
小林氏は元々、パラリンピック閉会式の演出を担当する予定でした。
2020年の東京五輪開催自体の決定は2013年です。
演出陣が発表された2019年12月よりも、ずっと前から人選作業はされていたでしょうし、発表から今に至るまでも1年半以上の月日がありました。
20年以上前のモノを調べられっこないという人もいますが、
個人的には「演出家クラスの身辺調査は十分できた」と思っています。
現に、今は出回っていないはずの20年以上前に発売されたビデオがきっかけで解任することになりましたし、別にこのタイミングでアップされていたわけでもなく何年も前から動画投稿サイトに転がっていた無断転載動画のはずです。
選任したからには、ちゃんと調べてほしかったし
一緒に責任を取ってもらいたかったし、ちゃんと説明してほしかったし、
外すにせよ”今の彼”を世間に示して欲しかった。
一部の海外メディアには、
小山田氏の辞任とゴチャ混ぜで伝わってしまっているようです。
自身の発言で叩かれるのはともかく、本人以外の行為を背負わされるのは
流石におかしいと思います。
今回の騒動で初めてラーメンズを、小林賢太郎を知ってしまったという方、
あなたは象の皮膚が硬いことだけを知っている人だと思います。
(また別の例え話でごめんなさいね)
皮膚の硬さだけで象を示すことはできません。
ぜひ、大きな耳や長い鼻、太い足をご自身で探してみてください。
それで結局「嫌いだわー」「興味ないわー」って
なったとしても、問題ありません。
私が「残念だわー」って言うだけですから。
お恥ずかしながら、私がコントを紹介している記事も貼っておきますので、ご参考までに。