可愛い可愛いと育てられたら~現実を知るとき
と、ショッキングなタイトルにしてみた。
大した話ではないですよ、いつものことだけど。
私の体験ではなく、知人から聞いた話です。
ある女性A子の話。
彼女は、そこそこ裕福な家庭にやっと生まれた一人娘。
蝶よ花よと育てられた。
祖父母もやっと生まれた孫。
そりゃあー目に入れても痛くない。
可愛い、可愛い。世界一可愛い娘!
呼吸をするかのように、両親は彼女に浴びせかけていた。
中高短大とお嬢様学校に通って
短大を卒業したA子は、名の知れた商社に就職した。
商社マン。ギラギラした男性社員も多い。
それまで男性とのお付き合いの経験もなく、男性とデスクを並べて仕事をするのも緊張していた。
そんなある日、食堂で同僚とランチ中 。
隣の席から聞こえてきた、同じフロアの男性陣の会話。
「今年の新人でどの子が一番好み?俺はB美かなー」
「俺はC美かなー」
次々と、新入社員の名前が上がっていく。
内心、ドキドキのA子。
しかし、誰もA子の名前を出さなかった。
そしてある日、同期女子の飲み会。
誰がおしゃれか、誰が美人かというような話になった。
男性からは名前は上がらなかったが、さすがに同性からは褒められたりするはずと思っていたA子。
結局、名前は出ない。
もしや、自分はあまり可愛くない?いや、そんなことはない、両親はいつも可愛い可愛いと言ってくれていたし。
また別の日、社内で男女が立ち話をしていた。
男「あのさー、A子ってさすごく自信ある感じだよね。」
女「仕事はそこそこできるみたいだし、自信ある感じ出てるよね。」
男「いや、違う。仕事じゃなくて、『私、いい女です』感出てない?なんかとっつきにくいし、いい女でもないし、なんだろうなあの感じ。」
女「あー、そっち。多分、自分のこと可愛いとか美人と思ってるはずだよ。」
そう、可愛い可愛いと育てられた女は、自分が本当に世界一可愛いと思い込んでいて、立ち振る舞いが「いい女風」だったのだ。
それを偶然通りかかったA子は聞いてしまった。
そこまで言われても、「可愛い」にある意味洗脳されている彼女は「聞き間違い。私のことじゃない」と自分に言い聞かせた。
時は流れて、とあるパーティーが開かれる。
そこでは新人女子(の中でも綺麗な子)は受付をするのが慣例。
(ルッキズムについて問題視される前の出来事なので読み流してください)
大体、ミーティングで自然の流れで担当が決まる。
綺麗な子が受付をするのをA子は知っていた。
そこでなんと彼女は立候補したのだ。
ドン引きする周り。
女の先輩から「え?Aさんがやるの?あなたには違うことを任せたいんだけど」と遠回しに言われるも
A子「いいえ、私が適任だと思います。よく両親からもA子は花がって可愛いと言われてきましたし」
ドン引きにつぐドン引き。
ここまで実際の彼女の容姿には触れてこなかったが、、、
この話をしてくれた人曰く、中の下、下手すりゃ下の上くらいとのこと。
せめて、中の上ならね。
時代が時代。
口悪上司「いや、Aじゃないな。B、おまえやれ」
鶴の一声じゃないが、そこでその話は終わった。いや、終わらせた。
実家に戻ったA子は、この一連の話を両親にした。
A子「今まで自分の容姿が劣っているなんて誰も言わなかったのに、むしろ両親は褒めてくれていたのになんでだろう」
母親「Aちゃん、ごめん。お母さんは、あなたが一番かわいいと思って育ててきたし、今もそう思っている。でもね、それは私の娘だからよ。」
父親「そうだね。お母さんとお父さんは、おまえが一番かわいいと思う。でも、世の中的にはそうでもない。たぶん、普通だ」
衝撃の事実。
20年以上、ずっと自分は可愛くて特別だと思っていたA子。
頭に雷でも落とされたかのようなショック。
自分は、可愛くない。
これがきっかけかはわからないが、それから1年もしないで仕事を辞め、実家に戻り、引きこもりになったらしい。
自分の子供を褒めるのもほどほどにした方がいい。
ちなみに、私は親に「中途半端な顔」と言われて育ったため、自分を過信せずにここまでこれて良かったと思う。