メンズエステのお客様①
※このnoteは私の実体験を元にしていますが、関係者に迷惑をかけぬよう事実とは異なるアレンジをしています。創作作品としてお楽しみくださいませ。
いよいよデビューの日が来た。
朝早くに出勤し、店長さんからルームの使い方、掃除の仕方、接客の流れの説明を受ける。
もう既に、朝イチ予約が入っているらしい…。
【どこの馬の骨とも分からぬ人間にご予約とはっ!ありがたや〜っっ!!】
技術が半人前なのを承知でご予約くださるなんて仏にしか思えなかった私は、お客様に土下座したいほど有難く感じた。
(「新人期間」という一定のフィーバーがある事を知ったのは、その後の話)
一通りの説明を終え、事務所に戻ろうとする店長さんの背中を、不安な気持ちで見送る。
この業界に入ってからまだ店長さんとしか関わってなかった。今日から始まる未知の世界を思い、「やってやる!」という意気込みとは裏腹に、鼓動はどんどん早まり続けた。
【どんな人がいらっしゃるんだろう…】
■メンズエステのお客様
まず最初にいらしたのは、白髪で体格のよい初老の方。
女の子との会話に慣れた様子で、美味しいご飯屋さんや美容ネタまで面白おかしく話してくださった。
次にいらっしゃったのは、爽やかなアラフォーの方。にこにこと穏やかに会話してくださり、お見送りの際には「君、絶対人気でるよ」と白い歯がキラリ。終始爽やかなまま、パタンとドアが閉まった。
この日は、これにて終了。会計を済ませ、店長さんに軽く挨拶をし、帰宅。
【何もなかった!!!!!!】
玄関入るとともに、
大きく息を吐きながら床へ脱力。
いや、ほんと当たり前っちゃ当たり前だけど、もしかしたらお客様が興奮してしまったり、何か強引な事を求められる場合もあるかもしれないと気を張っていたのが正直なところ。
何もなかった。
お触りとか怖い思いもなく、
むしろお客様との会話が楽しく感じた。
良かった。
ちゃんとお金も手に入る。
【私、やれる。やろう。頑張ろう。】
ひんやりとした床に頬を預け、
私は目を閉じた。
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