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ブレアソールの思い出
本日はシェア・バーに出品した2本のブレアソールを紹介したい。
シェア・バーというその仕組みや、僕がそこに参加した動機、そもそもシェア・バーにどのような機能があると期待しているか?ということは語るべきこともたくさんあると考えるので、その件はまた日を改めて。
本日はこの2本のウイスキーに対する思い出を語りたい。
小瓶に詰め替えられた2本のウイスキーはこちらでお買い上げいただける。
リリースの少ない地味な蒸留所という印象がある。
もしも、ブレアソール蒸留所がUD傘下に所属ぜず、「花と動物シリーズ」の一枠を担うことがなければ、僕とブレアソールの出会いはもっと時期が遅れていたことだろう。
だから、僕とブレアソールの初めての出会いは「花と動物シリーズ」のそれであったことをよく覚えている。東京駅、八重洲の地下街、リカーズハセガワさんだったはずだ。90年代も前半の頃だったろう。
「初めての出会い」という点で言うなら、「花と動物シリーズ」と「GM コニッサーズ・チョイス」。その両者には随分とお世話になったものだ。
今回出品させていただいた「UD レア・モルト」の瓶詰めが2003年とあるから、僕らの初めての出会いから、およそ10年ほどの間に僕が試すことのできたブレアソールは2,3種類だったのではなかろうか。
その2,3種類のブレアソールもそれなりに印象に残っていたが、「花と動物シリーズ」との初めての出会いは(失礼ながら)些か凡庸と感じていたことは確かだ。
そんな僕の認識を改めさせてくれたのが、この「UD レア・モルト」のブレアソール。今でもいくつかのウイスキーに「好きなのに、嫌い」という感情を抱くことがあるが、初めて強くそれを感じたのはこのブレアソールだったかもしれない。
あるいは「嫌いなのに、好き」ということなのかもしれない。
どうにも悪い印象があるのだが、気になって仕方がない。あるいは、とても素敵なんだけど、その悪い癖は直してもらえないものなのだろうか?相手に対してそのように思うことがるけれど、それは、人でもウイスキーでも同じこと。
初めてこのブレアソールを飲んだ時、「何でこいつは錆びたイチゴのようなんだろう?」と感じたことを今でもよく覚えている。もちろん、イチゴは金属ではないので、錆びることはないのだが。
錆びていなければ美味しいイチゴなのだろう。そこは直して欲しいのだが、それでも嫌いになることはできず、辞めておこうと思いながらも気になって仕方がない。
相手が人でもウイスキーでも、そのようなことは起こり得るのだが、僕の個人的な経験を語るなら、それは人よりもウイスキーであった時によく起こること。
それから十数年の時を経て、僕はちょっと気になるブレアソールに出会うことになる。2016年のことだ。初めての時、控えめで上品で優しい印象があった。
先に「UD レア・モルト」のブレアソールについて、ひと言付け加えさせてもらおう。彼女は当時、とても元気が良かった。元気が良かったという言い方は、僕の優しさによるもので、素直にいうなら大声でうるさかったということ(笑)。
だけど、今思い返すなら、彼女はきっと「私を認めて!」と叫んでいたんだろう。
あれから17年の月日が流れ、27歳の女の子だった彼女は40代も中頃になっている。今、彼女が随分と穏やかな表情を見せてくれていることは僕が保障しよう。ただ、今でも「錆びたイチゴ」の面影は少し残っている。
さて、ヴァリンチ&マレットのブレアソールに話を戻そう。
初めての時、控えめで上品で優しい印象があったことは先ほど申し上げた。
個性とは何だろう?もしも、それが「極端な歪み」のことを指すのなら、僕はあまりそれを好ましいとは思わない。
ヴァリンチ&マレットのブレアソールが「UD レア・モルト」のそれに比べ、大人しく落ち着いた印象であることは確かだろう。「UD レア・モルト」の方が「分かり易い個性がある」と説明することは可能だ。
ヴァリンチ&マレットの方が付き合い易いことも確かで、だけど、彼女がそれだけではないことも明らかだ。口数が少ないだけ、聴いてあげたくなる話がある。
そして、時間を掛けて話を聴くと微かに「錆びてないイチゴ」の表情を窺わせる。
インチガワー 1975 - 2003 27Yo / UD レア・モルト
インチガワー 1995 - 2016 21Yo / ヴァリンチ&マレット
実は今回、このふたつを同時に飲み比べるのは初めてのことだったが、同じ血が流れていることは明らかだろう。ヴァリンチ&マレットのブレアソールに向かって、思わず僕は心の中で囁いてしまった。
あなたのお母さんのことを良く知っている。