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幸せのお仕事
きみちゃんはおちりがもふもふだが、子供の頃からもふもふだった訳ではない。実はお迎え当初から3ヶ月ほどの間、我々かいぬし(私=ツマと、オット)ときみちゃんとの間には、常に緊張感があった。
我々かいぬしは、ともに鳥さんと暮らした経験がなかった。
私は犬猫と暮らしたことがあったが、鳥類は体の構造も違うし、食べ物も習性も、全く違っている。犬猫の経験が応用出来るかというとそうではなく、何から何まで一から勉強しなければならなかった。
一方でオットは、これまでの人生の中でただの一度も動物と暮らしたことがない。私が一から勉強なら、オットはゼロからのスタートだ。
人間にとって一とゼロの差は大きいが、きみちゃんにとっては一もゼロも同じだっただろうと思う。
本を読んだり、ネットで検索したり、経験者から話を聞いたりなどして、ようやくなんとか鳥さんと暮らすことを楽しめる余裕が出て来るまで、最終的には半年近くかかっている。
つまり、その間、きみちゃんのおちりはもふもふではなかったと思われる。少なくとも、その頃の私は、まだちりグラファーではなかった。
もともとおちりが好きで、犬のおちりを触って怒られつつ「減るもんじゃあるまいし」と触りまくっていたが、その私がいきなり鳥さんのおちりを撮ろうとしなかったのは、ひとえにきみちゃんのおちりがもふもふではなかったことと、私自身にその余裕がなかった為ではないかと思われる。
そう思うと、きみちゃんが新しい生活に慣れ、安心してご飯を食べ、すっかりくつろいで羽のお手入れをする安泰な暮らしが出来るようになったことは、ちりグラファー以前に、かいぬしとしての喜びでしかない。
ちりグラファーのお仕事は、もふもふのおちりがなくては成り立たない。そしておちりがもふもふである為には、鳥さんが幸せであることが不可欠なのだ。
つまり、ちりグラファーとは、鳥さんの幸せをお約束することによって初めて発生する副産物のようなもので、鳥さんが好きで好きでたまらないおへんたい諸氏にぴったりな職業と言える。私にとって天職だなと思うゆえんである。
そして今日もきみちゃんは、もふもふのおちりを丁寧にお手入れして、ますますもふもふなところを見せつけてくれる。
ああ、またスマホのメモリーがパンパンだ…(カシャカシャカシャカシャカシャ)