巣材名人
きみちゃんにかかると、なんでも巣材になってしまう。
コザクラインコの女の子には、チラシ等を細長く噛みちぎり、巣材として持ち帰る為に腰羽の辺りに一本一本差し込む習性がある。個体差はあるが切り口は鮮やかで、長いものだと、ゆうに30センチを超える大作を生み出すこともある。
チラシや葉書、封筒といった紙類はもちろんのこと、ダンボールでも臆せずシュレッダーしようとするし、お菓子の袋も構わず齧る。
もともと細長い形状の紐類は、齧る手間が省けたとばかりに、喜んで適当な長さにちぎって腰に差す。紙紐はもちろん、藁様の植物、ビニール、合皮等、たいがいのものは巣材になる。
これが野生のことであれば、大変たくましい、頼もしいことだろう。どんなに巣材に乏しい環境下でも、あらゆる素材を用いて巣を作り、卵を産んで育てることが出来るなら、野生動物としては最高にポテンシャルが高い。
しかしきみちゃんは飼い鳥だ。三食どころかご飯はいつでも食べ放題、おやつも、ちょっと可愛い声でかいぬしを呼びつけ、可愛く首を傾げたりなんぞすれば、いくらでも貰えるのだ(※体重の推移を見ながら加減しています)。
室温は一年中、快適。外敵はなく、大好きなかいぬし1号と、まぁまぁ好きなかいぬし2号が常に世話を焼いてくれる。
きみちゃんはとても発情しやすい。かいぬし2人による生活環境のせいでもあるが、もともとの、きみちゃん自身の情の深さも手伝って、油断するとすぐに卵を産もうとする。
その為、「巣材を与えない」ことには常に細心の注意を払っており、数年前から我が家のリビングには、カレンダーすらないので割と不便な思いをしている。
完璧に気をつけているつもりでも、思いもかけぬものが巣材になることもあり、全く気が抜けない。
なんでも巣材にしてしまう、全く困った巣材名人なのだ。