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下僕の務め
全ての鳥飼いは下僕である。仕方がない。可愛い鳥さんの前にひれ伏さずにいられる鳥飼いなどいようか、いやいない(逆説)。
鳥は言葉を話さず、表情筋も持たないが、代わりに全身でその豊かな感情を表現する。表現しまくる。それを鋭敏に汲み取り、愛鳥の快適な暮らしをお約束するのが、下僕の務めである。
本を読めば、鳥の出すサインをいくつか知ることが出来る。しかし実際には、必ずしもその通りになるとは限らず、個々に表現方法は異なり、表現したいものも違っている。
「ウチの子」の言葉を聞き取ることが出来るのは、下僕たるかいぬしだけなのだ。
だからかいぬしは、愛鳥がなにやらワクワクした表情で落ち着きなくケージ内をウロウロしている時に、うっかりケージの扉を開けようものなら、それがたとえ夜の23時であっても、愛鳥が飛び出して来て遊ぼう遊ぼうと熱烈にかいぬしを誘い、やがて猛烈な帰宅拒否に遭う、ということが分かっている。分かっているのになぜ開けたんだ私…ということが、たびたびある。
なぜ、と言うか、理由はある。止まり木が汚れていたから洗いたかった。おやつが切れていたから追加したかった。きみちゃんが可愛かったから構いたかった。等々。
かいぬしは、この愛鳥のワクワク顔に弱い。ワクワクされると、つい期待に応えたくなってしまう。
こうして今日も放鳥タイムが延長されるのだ。むろん、かいぬしの睡眠時間より、愛鳥の満足度の方が重要だ。
それが下僕の務めなのである。