Voyager 打ち上げ 45 周年!
先日,NASA の火星ローバー Curiosity が着陸 10 周年を迎えました。
この記事の最後に触れたように,今年は NASA の外惑星探査機 Voyager 1,Voyager 2 が打ち上げ 45 周年を迎えます。
前回の記事でも述べましたが,しばらく忙しく記事を書く余裕がないため簡単な紹介だけに留めます……。
Voyager について
Voyager 1,Voyager 2 は米航空宇宙局 (National Aeronautics and Space Administration, NASA) ジェット推進研究所 (Jet Propulsion Laboratory, JPL) が開発した外惑星探査機です。Voyager 2 は 1977年 8月20日に,Voyager 1 は追って同年 9月5日に打ち上げられました。
2 機は当初,巨大ガス惑星の木星と土星やそれらの衛星の探査を目的としており,設計寿命はなんと 5 年でした。しかしまだその後も探査ができるということで,延長ミッションとして Voyager 2 はさらに氷惑星の天王星と海王星の探査を行いました。Voyager 1 は土星接近の際に土星の衛星タイタンでフライバイを行い,黄道面を外れました。
Voyager 2 の氷惑星探査は延長ミッションとはいったものの,開発当初から視野に入っていました。なぜなら,このように全ての外惑星を 1 機の探査機で続けて訪れることのできる機会は非常に限られていたからです。この探査は通称「グランドツアー」と呼ばれていますが,惑星たちがうまく並ばないとグランドツアーは実現できず,これは 175 年に一度のチャンスでした。だからこそ Voyager が計画されたのです。
さらにミッションが延長された 2 機はその後も飛行を続け,Voyager 1 は 2012年 8月25日に太陽圏と星間空間との境界であるヘリオポーズを通過し,史上初めて太陽圏を脱出した人工物となりました(参照)。2018年 11月5日には Voyager 2 も太陽圏を脱出し,Voyager 1 に続き 2 機目の星間空間探査機となりました(参照)。太陽圏については JPL の石松さんの記事をご覧ください。
執筆時現在,Voyager 1 は地球からおよそ 157 au,235 億 km,Voyager 2 は 130 au,196 億 km 程度のところを航行しています。
原子力電池の出力の低下が続き,稼働できる時間は残りそう長くないと考えられていますが,停止した後も恒星間空間を飛行し続けることになります。そんな Voyager を遠い未来に地球外知的生命が発見するかもしれないという微かな期待から,Voyager には Golden Record と呼ばれる,太陽系や地球,地球の生命や人類の文化について記録したレコードが搭載されています(私のアイコンはこれです!)。レコードには地球の自然の音や生物の鳴き声,人間の音楽や多くの言語などの音声や,様々な写真が記録されています。
コメント
45 年も前の探査機が,太陽圏の外,地球のはるか彼方でまだ稼働し,か細いながらも地球に信号を送り続けているという事実。信じられますか?言葉では言い表せないですが,本当にすごいことだと思います。原子力電池が稼働するのはあと 3 年とも言われていますが,動作し続ける限り,Voyager には貴重な星間空間の観測を行ってもらいましょう。
氷惑星である天王星と海王星を探査した探査機は今なお Voyager 2 のみです。Voyager の成し遂げたことがいかに偉大か,Voyager の成果がいかに我々にとって重要かということがわかると思います(全く紹介していませんが,Voyager のもたらした科学成果は膨大です)。一方で今年公開された Decadal Survey では,次の Flagship Mission 枠として天王星の探査機 (Uranus Orbiter and Probe, UOP) が最優先だと提案されました。まだ先にはなると思いますが,いずれ天王星,さらには海王星に探査機が再び訪れるときが来るでしょう。すでにそのときが待ちきれません。
ちなみに,Golden Record が搭載されているとはいえ,Voyager が他の恒星に近づくのにはまだ何万年も何十万年もかかりますし,もちろんそこに知的生命がいるとも,それが発見されるとも限りません。地球外文明に奇跡的に発見されたとしても,そのときには私たちは生きていませんし,人類も滅んでいるかもしれません…… 。
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