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梅枝を深掘りする2月の旅アロマ

千葉市でアロマスクール「マロウズハウス香りの教室」代表のアラカン(笑)の太田です。2024年に取得したフレグランスセールススペシャリストの資格が励みとなり、70才の香水売りを目指して日々クンクン修行に励んでおります。そんな夢実現のためもあり現在のお仕事はアロマ講師のレッスンの担当と源氏物語とアロマテラピーにまつわる体験アロマなじゃらん旅の担当。そしてアロマブレンドデザイナーとしてのお仕事とアロマセラピストとしては社会還元のため(笑)緩和病棟や他の施設でのアロマセラピストをゆるっとやっております。さて近況なのですが、2月に入り、花粉症デビューと思いきや、なぁんと、副鼻腔炎を患っちゃいました〜💦
それでもぼんやりと香りをクンクンできる幸運に恵まれております!
発熱ありのひどい鼻詰まりとはいえ、なんとか香りがわかる?ぼんやりなのですが、、。
クンクン修行を続けてよしと神様からも推薦されております(笑)

2月は絶対、梅とチョコレートブレンド
梅に鶯というくらい絶対完璧なこの組み合わせが梅にチョコレートの香り。実はこの絶対な組み合わせのブレンドは3年目。
そしてその上、今年はなんと1年目と同じ源氏物語のお題ででチャレンジ!
3年目にもう一度っていうの、このお話になるってバレちゃいそうだけど、どうしてもこれ=梅枝をやりたいと思う理由があったからなのです。
ここについてはその気持ちになるまでの長い説明になっちゃったりするのですがそこが今回の肝、どうしてもお伝えしたい💕

梅枝の基本的なお話というのは、これ。
11歳になった明石の姫が入内する幸せなお話し

と言われていて、3年前のじゃらん旅アロマでは単純に幸せな雰囲気を醸しているブレンドストーリーでした。
そう、源氏といえば、やっぱり「梅枝でしょ」ぐらいの感じ。

ところが今年3年目の「梅枝」では、紫式部がなぜ題名をここに選んだのか、というところが謎となり、、、
「はて?」なぜ「梅枝」なの?に引き摺り込まれた話へ
毎回、どうしてこのお話に式部はこのお題にしたのかなぁって考えます。だって香りを作るブレンドファクターはその話の全体の雰囲気が重要。なので深ぼった先にやっと辿り着く香りパレットに「うんうん」って満足する
この「うんうん」って感じは精油チョイスと似ている作業なのですが、でも、物語は、現実がそこにいいない人。だから私的にもっと色付けしてもいいかなって思ったりもする。

そして香りがあることで、いない物語の人物が、まるでここにいるみたいになる。匂いは人肌を連れてくる
あ、この主人公はまだ心が幼そうなおじさんだから柑橘入れちゃえ、とか嫉妬まみれの10代だからこいつにはフローラルにシステだ!とか。
こうして想像から生まれて、自分なりに良き良きな香りとなって、素敵なブレンドデザインになる世界は本当に楽しい。ましてや「いい匂いですね〜」とか言われちゃったりすると、「うふふ」となるのは当たり前なのです。

なのでお話しの「はて?」の要素は小さなことでも、探してみる
紫式部がつけた物語のお題の意味っていうのは、「なんで?」って思っても、意外と単純だったりする。例えば、源氏が読んだ句にその言葉があるから、ただ季節だからとか。「特に意味なし」「ちょっとその雰囲気を醸してるから」例えば、「朝顔」のお話は、源氏から朝顔の花を添えた和歌が贈られたとのところからついたお話。源氏のいとこに当たる方で彼女が源氏になびかなかったお話もなかなかのものなのです。朝顔は朝さいて夜しぼむ、今の朝顔だけじゃなくて槿や桔梗などもその類に入るそう。
この時代は今とは違う常識があることに気がついたのも、この朝顔をお題にしたあたりからなのですが、結局朝顔の題名をふかぼってもその先には岩盤あり(笑)
ま、そんなもので良いのだなって思ったり。
でも紫式部よ!そんな単純に決めちゃうの!って思うとワクワクしていた深ぼり深掘りスコップを投げ出したくなっちゃっう(涙)

「人間は考える葦である」
パスカルが言うように「人間は考える葦」という呪縛。この呪文のようなものが、絶対裏ありだよね〜ってなっちゃう。
その意味でも、岩盤に当たったとしても、この物語に「なぜ」をいつも突きつけてみています。
この紫式部様との深掘りスコップのやり取りは、実は意味なし〜って思いっきり紫式部様からバシッと攻撃されちゃったりもするので、このところのじゃらん旅アロマはそんなやりとりが続くのもかえってより楽しみとなってきました。

そうして3年目の「梅枝」に行き着く
前回の「梅枝ファクター」は、春、11歳になった明石の姫が入内する寿ぎの日。育ての母と産みの母が晴れの日を祝うそんなシーンが中心のテーマ。アロマやお香の世界ではチョー有名なイベントとなるこのお話は、父・光源氏だけでなく、六条院の女たちがこぞって彼女のお祝いのために香りを調合し、入内の祝いの香りを作っていくのです。
源氏「侍従」、朝顔「黒方」、紫の上「梅花」、花散里の「荷葉」
そしてその会に出られない産みの母、明石の君は「薫衣」
絢爛豪華な描写の中で、ふとよぎる明石の君の感情。
実は梅枝というお題の不穏さはこの感情にあるのではないかと気づいた出来事がありました。

最初のイメージは少女のような、、、


カモミールローマン 1滴
ベンゾイン 1滴
バニラ 1滴
ローズオットー 2滴
ベチバー 3滴

最初の梅枝の天然香水作り

11歳の少女が喜びそうな仕立てたブレンド「梅枝」2023年バージョン。
「甘い甘いバニラに野の花の甘くって酸っぱいカモミールローマン。そしてこれから花開く彼女の将来のためのローズオットーとベチバー」
裏の事情なんぞを考えずに作った香りのトーンは明るくて屈託のない、そのまま大人に変身していくようなブレンドとなりました。

からの、梅枝の不穏に気づいたエピソード
3年目だから、どんな香りにブレンドデザインするかなって思っていたある日。昨年奇跡的な出会いを果たした方が、謡をしていた頃のお話をされていました。源氏物語の「梅枝」っていうのをブレンドファクターにしたことがあるの、と話した私に
「私、梅枝を演ったことあるのよ。梅の妖精が舞うやつよね」

え?梅の妖精って何??源氏物語とは違う話なの〜!!
そこから始まる、不穏?いえ深掘りスコップが今回の旅の始まりとなりました。

謡@あのお能とかに出てくるやつらしい。
謡って何?
ネットの海を泳ぎながら調べていくと、謡のリズムは七五調の12文字を一文として八拍子に当てはめるとのことと音階が奈良時代に日本に伝わったヨナぬき音階。ヨナっていうのは1、2、3、4、5、6、7、8のオクターブにあたはめて、和語「ひ、ふ、み、よ、い、つ、む、なな、や、こ、と」の8音階の4(ファ)と7(シ)の和語ヨナからきている。5音階のこと。
この音階、あのYOASOBIが歌ってる「アイドル」や、おーた垂涎の米津様の「虎つば」(虎に翼)もそう。黒鍵だけでヨナ抜きができるのでよく子どもの頃に「はーるばるきたぜ、函館」ってやってみたりしていた。
そう考えると平安時代の音が現代に響く5音階に繋がっているのはすごいことだなぁと感じる。紫式部の時代も虎つばとかアイドルみたいな歌が流れていて、彼女が物語を執筆している時に流れていた曲はこの頃巷でヒットしている「アイドル」や「夜に駆ける」それだけじゃなくて「蛍の光」「さくらさくら」この郷愁ってやつはまさに源氏物語の謎の深掘りの響きに似ている。梅枝の単純なキラキラじゃない、娘を思って、いや、源氏を思って執着している明石の君のドロドロした感情を浮き彫りにしていたのかもしれない。

謡「梅枝」はこんな感じ
山梨県にある身延山(みのぶさん)の僧たちが、諸国巡業の修行をしてる時に、大阪の住吉で突然の雨にあったことで生じる一夜の不思議なお話し。
雨に降られた僧たちが宿がなく、結局やっと見つけた質素な家で一泊することになる。そこには謎めいた女がいて、ちょっと不穏さはあったものの、やっと見つけた場所、少し不安があったのだが泊まることになる。不思議なことに、この家には、舞楽の太鼓や舞の衣装が置かれていて、なぜこのようなものがあるかと問うと、その家の主人の女は語り出します。

夫は住吉大社の雅楽をするもので富士と言いました。
彼の腕はすごいもので、天王寺のライバル浅間と雅楽の管弦で内裏の役に決まったのです。でもそれを恨みに思った浅間に夫が殺されてしまい、今はこんな状態となっているのです、と、そんな顛末を語る女。今でも夫を恋しく思いながら形見の太鼓をたたいて心を慰めていたという。
この梅枝のクライマックスは、そう語った富士の妻が夫への恋しい思いを込めて謡い舞う様。その謡が「越天楽」(お正月によく聞く雅楽)で、幻想的なシーンの先には仏教の話に繋がる「回向」となっていく。
僧に亡くなっている私も供養してあの世に送ってほしいという舞と謡。
そして僧侶のお経とともに、富士の妻は姿が消えていく、という幻想的なシーンで終わる。古代の演奏テーマがすごい哲学的でこの謡になぜ『梅枝』という曲名がついたかというと
「梅が枝にこそ、鴬は巣をくえ」
という越天楽の謡から名付けられたそう。この梅と鶯の話が後半に続くのですが、源氏物語の明石の君の気持ち。
梅の鶯の印象が深掘りスコップ的には肝だと勝手に繋がったところでした。

紫式部の時代にはこのお話は当たり前に皆が知ってたということであるならば、明石の君の心のどろどろした部分はあるのが当然なのだなぁ、そして昔の人はそれをわかっていながらの「梅枝」に雅な風情を楽しんでいたんだって思うとより香りのファクターが広がっていきます。

ちなみのこの越天楽の一節は「黒田節」の一節。
そういえば、黒田節って最後の1音が不思議な音で終わるなぁって以前から思ったのですが、短調でも長調いい。そうか、陰陽のどちらの響きも醸せる不思議な音律だったからなんだと思った次第です。

梅はいつから日本にあったのか
紫式部のお話の中に「梅」にまつわる「梅枝」の物語があるのだったら、平安時代には一般に愛でるものだったよう。
中国語でムエイ。それが転じて日本語ではムメという発音から「ウメ」になったのでは?と考えられている梅。かのシーボルトさんが名付けた学名のPrunus mumeはこれが語源になっているそうで、英名などを調べるとJapanese apricotとあり。また中国のかの炎帝という幻の神様が残したと言われる「神農本草経」にも中品の薬用として登場し、古代からどうやら病を凌いで滋養強壮に使われていたらしい。
記述によれば「梅」は平安時代に烏梅という名前の薬として輸入されていて、魏志倭人伝にも梅の花の記載があったそうだから、日本にいつ頃からその存在があったかは不明。

いつかなんて、本当は必要なきことなのかもしれない。
時の区切りをどこから始まったっていうのを追求しても、自然界では時代っていうのは必要なきこと。だから、中国から始まっても良いし日本にもあったのかもしれないでいいのかなと思ったりする。
結局、昔から日本にあった!ということでこのことについては結論してしまおう(笑)

梅は平安時代のお菓子=フルーツ
『和名抄』という本に、梅は木の実・果物に分類され、奈良時代の人々は、桃・ビワ・ナシとともに梅も生菓子として食べていたらしい。生の梅を食す?「毒」は大丈夫だったの!?どうやって食べたの?についてはネットの大海を漕いでも島に辿り着けませんでした。
でもちょっと考えてみたのだけど杏も似てるなぁって思ったり。奈良の都でのフルーツ事情はいつか深掘りスコップしたいと思っております。

そして梅干しは日本独特のものらしい
面白いのは、梅干しの原型は梅の塩漬け。村上天皇の時代(946〜967年)には昆布と梅干しのお茶で疫病から回復したと記載があり、平安時代には薬効のある食べ物として認識されていたようです。
あ、昔テレビの漫画で、おばあちゃんの顔といえばこめかみに四角い何か?あれって梅干しを貼ってたらしい。意外と効果があるとか(笑)
でもこの出所はどうやら中国の烏梅。頭痛の薬としての輸入だったらしいです。

梅の花の匂い
成分的に分析してある梅の花の匂いは
ベンズアルデヒド、安息香酸、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、イソオイゲノール、 オイゲノール。

ベンズアルデヒド(ネロリ、ベンゾイン、バニラ)では、お菓子の甘い香り、そこに安息香酸エステル(ベンゾイン、バニラ)。追加の甘さが加わっていき、ベンジルアルコール(ジャスミン・イランイラン・ベンゾイン・クローブ )では白花の匂い、そしてオイゲノールはクローブ(丁子)やカーネーションにも含まれているスパイシーで甘い香り。最後に酢酸ベンジル(イランイラン、ジャスミン)こちらを7割ほど入れていくとどうやら梅っぽくなるらしい。
昨年はこれば白梅のイメージで天然香水作りを行ってみたのですが、今年はビターなカカオabs.を使ってビターでパウダーに仕上げました。

梅枝の最後の回向する浄化と紙香と煙となって消えゆく感じ。
いい形に整ったのではないかしら

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