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秋にさくら まる子だった。

さくらももこ先生のエッセイを紹介するシリーズ。
手持ちが全て書けたらマガジンにしよう。

そのうちタイトルも冬に変わるはず。
ええじゃないか。さくらはいつ見ても良い。

では行こう。



「まる子だった」

あのころ まる子だった ももこの話。
三部作の第二弾。分かりやすいタイトル。
その通り、まる子だった時代のエッセイが収録されている。


「『うわの空』の詳細」

まる子は授業中、授業なんか聞いていなかった。
では何をしていたのかといえば、うわの空。

いや、常に考えを駆け巡らせていたのだ。好きな漫画の続き、おもちゃやペットの事、外から聞こえて来るチリ紙交換の声、消しカスをねりねりして遊んだり、ノートに落書きをしたり。充実した時間を過ごしていたのだ(まる子談)

ついにお母さんから「うわの空だ」と突っ込まれる。
何を以てうわの空だというのか。ただ授業中に頭をフル回転させ、世界を想像、創造していただけではないか。全くボンヤリなどしていない。その発言には不満を覚える。そんな私にうすら馬鹿の総称を投げつけるとは何事か。しまいにはうわの空過ぎて先生にも言われてしまったと泣きつかれた。

うわの空で母親を泣かすなんてそうそう聞かない話だ。それはもう、凄まじいものだったのだろう。一般人には想像も付かぬ世界を既に、小学生の時点で勉学を生贄に作り上げていたのだ。作家になるならそれくらいしてなきゃなぁって事だろう。

そんな、泣きつくほどにうわの空を心配した母を泣きっ面に蜂の出来事が襲う。次回、悪夢の授業参観。バトルスタンバイ!(続きはご自分で)


「文通をする」

まる子の時代には、雑誌に「文通しませんか」の欄があった。
最初は意味が分からなかったまる子。それが遠くの県の人と手紙をやり取りする行為である事を知った時は「なんという夢とロマンのある大人っぽい遊びだろう」と、早速文通の準備を始めた。

雑誌を開いて文通のお誘いページへ。
でも、誰でも良いって訳じゃない。なるべく遠い県の人が良い。遠ければ遠いほどロマンを感じるから。性別は女の子で。男子なんて、怪獣ロボットその他諸々の馬鹿馬鹿しい内容が下手な字で書かれているだけだ。男子なんて、クラスの馬鹿な連中だけで充分。文通は女の子とが良い。

候補に挙げた3人に手紙を送ってみる事にした。
みんな静岡から遠い県の子だ。さて内容はどうする。はじめましてから始まって、自己紹介。そして家族やペットの事。近くのスーパーのせいで実家の八百屋の売れ行きが良くない事を正直に書くべきか。

一応家族に確認してみよう。すると全員「よけいなことは書かなくてよし」と言った。前もって確認して良かった。恥をわざわざ他人に報告するなんてどうかしているのだ。相談していなかったらヒロシの痔の話まで書いてしまうところだった。

ようやく出来た3人分の手紙をポストに投函した。あとは返事を待つのみだ。まる子の文通は果たしてどのような結果に終わるのか・・漫画やアニメでも描かれていたから触れていた人は想像が付くだろう。ここでは話すまい。自分で読んで欲しいから。


「犬を拾う」

ある朝学校に行くと、教室の隅で数人の生徒が集まって何かを見ている。覗きに行けば小さい小さい黒い仔犬だった。

誰の犬?と聞くと「学校のそばに捨てられていたんだって」という。教室に置いておく訳にはいかない。とりあえず体育館の裏に連れて行こう。誰かが段ボールを調達してきたからそこに仔犬を入れた。仔犬は不安そうにこちらを見上げている。まる子も仔犬を見つめ返した。

この子が可哀想で仕方ない。お母さん犬のそばにいて、おっぱいを飲んで安心していたはずなのに、突然ひとりぼっちで捨てられたなんて、どんなに悲しくて不安だろう。

授業中も犬の事が頭から離れない。他の子どもたちも犬が気になっていたらしく、休み時間になるとみんなが体育館裏に走って行った。給食の時間には牛乳とパンをあげに行く。仔犬は牛乳とパンを嬉しそうに食べた。

食欲があれば大丈夫だ。可愛い小さい目が子供たちを見つめる。まる子は仔犬を抱きしめた。仔犬の顔から赤ちゃんの匂いがしている。うちに連れて帰りたい。この子と一緒に暮らせたらどんなに楽しいだろう。


「休みたがり屋」

休みたがり屋のまる子。幼稚園の頃からずっと毎日、休むための方法を考えながら生きていた。腹や頭が痛いという常套句はザラに使っていた。体温計をこたつに入れて温め38度にし、偽の体温を母親に見せてまんまと休みを手に入れた事だってある。

時には「この弁当箱はいつも使っていたのと違うじゃん。こんな弁当箱では学校に行けないよっ」と些細な事にイチャモンを付け、ヘソを曲げたふりをして親を困らせた挙句に休みを手に入れた。なにがまる子をそうさせるのだ。

学校より家の方が好きだったから。学校に行ったって算数や体育に代表される面白くない企画の目白押し。オナラも出来やしない。家に居れば好きな時に飲み食い出来る。テレビも観られる漫画も読める。寝放題なのも良い。家の大勝利ではないか。家一択。

ある日、母親に「子供が学校へ行く事は法律で決められてるんだから、やたらズル休みしようとしたりすると警察に捕まるよっ」と言われた。驚く。

「法律で決まってるのかァー・・・」ズル休みで捕まった子供の話など聞いた事が無かったが、自分が知らないだけで本当にいるのかもしれない。警察に捕まったら檻に入れられて泣き暮らす日々が待っている。だったら学校に行った方がましだ。面倒だけど檻よりは楽しいだろう。

それからは仮病の回数を減らした。それでも仮病で休む事は止めなかった。上手い事調整すりゃ警察にも目を付けられまい。年に一、二回ならば・・。

仮病で休んだ日は実に楽しい。極楽極楽。眠る前には神様に「もしできたら明日もこのまま良い一日にして下さい」などと願っていた。現実は「もう治ってるでしょっ」と母親に冷たく言い放たれてしぶしぶ学校に行くのだ。

ズル休みで警察行き・・のくだりは、後の「さくらえび」でもさくら先生の息子の話で使われる。血は争えないんだな・・。ズル休み常習犯は、檻に入った子供たちを指導する鬼のように恐い先生のお世話にならないように、学校へ行こう。

学校が本当に本当に地獄だったら逃げ場や新しい居場所を作って欲しい。探せばあるから。優しい人のいる場所。ネットにも現実にも。気力が無かったらせめてお外へ。その場で座り込んで誰かに声をかけてもらうのを待って。誰かに訴える力だけは失わないで。それが救いに繋がるはずだから。下手な鉄砲数撃ちゃ当たるの精神を。水で石を穿つ心を。息苦しいって事は、貴方には貴方だけの生きるべき理由があるから。貴方は生きる事で誰かの光になれるんだ。

・・失礼しました。話を戻します。


「はまじとの噂」

えっ、あのはまじと?噂になってしまう話。

恋には不器用なまる子。大人って何でああやって恋人同士になれるのか。不思議だった。だって、恋人同士になるためにはどちらかが「好きです」と言わないといけないのだ。凄く恥ずかしくないか。どの面下げて言うのか。

他に色々方法を考えても自分には出来そうにない事ばかりだ。まず「好き」なんて言えない。言わなきゃ死刑などと言われても無理だ。子供の今はそうだろうけど、きっと大人になれば上手くやれるんだろうな。別にそうでもなかった。

大人になったって言えないもんは言えない。自分が言えないから相手から言ってくれりゃ万事うまくゆく。でも相手も言えないタイプだったら・・?不毛な持久戦になるのみだ。大人だって恋人同士になるために苦労しているのだ。

大人になっても恋に不器用なまる子。それが一度、はまじと噂になった事があるのだ。何で?別にどうとも思っていなかったのに突然はまじとアツアツなどと噂が広がっていたのだ。クラスの男子が「将来結婚しろよ」とはやし立てる。何で噂になってるんだ。はやし立て男子の一人に問い詰めてみた。

・・今や、さくら先生もはまじも故人と聞いた。寂しいものだ・・。


「教会へ通う」

別にクリスチャンじゃないけど、小学校の一年から四年生まで日曜日の朝に教会に通っていたまる子。近所の人が神父で、その人の誘いで姉と共に通う事になったのだ。

両親は教会へ通う事に何も思っていなかった。勉強になる事もあるだろ、くらい。教会に行けばお菓子や絵の付いたカードがもらえるというから一応行ってみる事にした。

行ってはみたものの、知らない子ばかり。讃美歌もさっぱり分からない。聖書の話もよく分からない。いつお菓子もらえるんだ。やっと帰り際にせんべいを二~三枚もらっただけだった。面白くない。通い始めたんだから行けという母親の命令で何となく通い続けた。キャンプに行ってみたり、クリスマス会でマリア様を演じたり(台詞無し)。


「モモエちゃんのコンサート」

憧れの山口百恵のコンサートに行く話。後にこの女神、モモエちゃんと文通をする事になるなんてまる子だったさくら先生は知る由もない。「そういうふうにできている」にその詳細が描かれている。色々とびっくりした。必見。


勿論、今回紹介しなかった話も面白いものだらけ。
秋の夜長、読書の秋。あのころまる子だったももこの話に触れてみるのはいかがだろうか。きっと愉快な気持ちに、切ない気持ちに忙しくなるだろう。
まる子だけじゃない、あのころ子供だった自分たちに贈られるエッセイ。


ありがとうございました。
次回は「ももこの話」をお送りします。
その次は・・どうしよう・・まだいっぱいあるから・・。


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