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秋にいきもの図鑑。

ついに「さくら」が入り切らなくなった、
さくらももこ先生のエッセイを紹介するシリーズ。



「ももこのいきもの図鑑」

さくら先生が人生の中で少しでも関わってきた
動物たちについて書かれているエッセイ。

とても短く、一種類につき大体4ページで終わる。
それが沢山ここには収録されているのだ。
読みごたえは抜群である。

・・・虫類も割といるので
苦手な方は身構えよう。

絵は丸っこくて可愛い。恐くない。多分。
今回は虫以外を紹介して行こう。



「ヒヨコ」

縁日で買ってもらった
カラーヒヨコの短過ぎる思い出。

日本では廃れたが、外国ではまだ売られていると聞いた。
・・あまり気のいいものではないな・・。

でも、昭和の縁日の思い出を彩るものという人も
沢山いらっしゃるだろうからな・・複雑。


さて、まる子だったさくら先生は姉と共に
カラーヒヨコを買ってもらったのだ。

毒々しい緑色のヒヨコを手に取ったさくら先生と、
ショッキングピンクのヒヨコを選んだ姉。

着色されたヒヨコは非常に弱っており、
ミドリちゃんも虚ろな目をしながら
家に帰るまでに何度もよろめいていたという。
姉のショッピンちゃんも同じく。


翌朝にはミドリちゃんは死んでいた。
泣く泣くお墓を作った。

後を追うようにショッピンちゃんも。



夕方の5時頃、お婆さんが薪で風呂を沸かしていた。
(時代を感じる)

そこに、姉が死んだヒヨコを持って
ウロウロしていたもんだから・・


・・本当廃れて良かった。
思い出の中でじっとしていてくれとはこの事だ。



「ジュウシマツ」

前編・後編とある。
思い入れの強さを感じる。


とにかくよく増える事で有名なジュウシマツ。

さくら先生の家の近所には、
『ジュウシマツの館』と異名を取るほどに
べらぼうな数のジュウシマツを飼っている家があった。

そこのおばさんがつがいのジュウシマツをくれた事が、
さくら先生の「ジュウシマツの日々」の始まりだった。


器用な父ヒロシはリンゴの箱を利用して
鳥カゴを作ってくれた。

小動物の飼育箱を作るという特技を持っている事が
ここで判明する父ヒロシ。他のエッセイを読んでいると
手先の器用さを感じるエピソードはちょこちょこある。


居心地が良かったらしく、
ジュウシマツの夫婦はそそくさと産卵の準備を
し始めていた。

わくわくしていた。
こんな小さな鳥のヒナはどんなに可愛らしいだろう。

生まれたら、へらでエサを与えて
手乗りジュウシマツにするんだ。


学校で授業を受けている間もずっと
へらでエサを与えることばかり考えており
家に帰れば割りばしで自己流のへらを制作したりしていた。


へらも準備万端。
やがてジュウシマツは卵を産んだ。

巣の中に青白く輝く小さな卵の美しさ。
胸のときめき。

いきものの本を読み返しながら待っていた。
二週間。

卵は増えていくのに、
一個もヒナがかえらないんだが。

同時期に飼った魚屋さんちでは
もうヒナが騒がしくエサをねだっているというのに。


へらでエサの夢、叶うのか。
どうした卵。もっと熱くなれよ。



「スズメ」

子スズメが道でウロウロしていたので
家に持って帰って育てる事にしたさくら先生。

※スズメを飼育する事、保護する事は違法。
弱ったスズメを見かけたら環境局へ連絡しよう。
懲役とか罰金とかとんでもない事になる。
可哀想だが関わらないのが一番という事か・・。


部屋にいるハエや青菜をすりつぶして与えてみる。

ヒナ鳥というものは強情なもので、
人の手からは中々エサを食べようとしない。

物凄く嫌そうな顔をして、首をブンブン横に振る。
ジュウシマツのヒナより手強い。

無理やりエサを口に放り込んだ頃には
もう参ってしまっている。

箱の中に入れてフタをすれば
ピーピーと途方もない声を出す。

漫画を描こうにも鳴かれたら
気が散って仕方ない。
とんでもないものを拾ってしまった。


翌日、子スズメはだいぶ弱っていた。
ヨロヨロになり急にパタリと倒れたりしている。

手を尽くしても良くなる気配が無い。


・・ここで死なせてしまうよりも、
元いた場所に返せば、親鳥が見つけて
巣に連れ帰ってくれるかもしれない・・

そう思い、元いた場所へ赴くのであった。


・・関わらないのが一番。



「ボタンインコ」

朝4時頃、ゴミを出しに出た時に
空き地で美しい小鳥を見つけて
早速生け捕りにした。懲りない。

クチバシの曲がり具合から、
どうやらインコ類のようだ。


喜びながら小鳥屋に走った。

小鳥屋の人によれば、この美しい鳥は
ボタンインコの一種であるという。


ボタンインコのイメージといえば
オレンジ色をしている事。

でもこの鳥は緑色だ。
これでもボタンインコなのですか。

「それでもボタンインコです。
ボタンインコはものすごくたくさんの種類があって、
いろんな色をしているのです」

この鳥は小さいけれど、
これでもボタンインコですか。

「それでもボタンインコなのです。
その鳥はまだ子どもですね」と
ヒナ用のエサを渡してくれた。


何が何でもボタンインコなのだ。

ボタンのやつめ、
緑色に小さめの体という手できたか。

強引に納得してしまった。


『インコの飼い方』という本を買って
調べたところ、ボタンインコというのは
やたら鳴き声がうるさい鳥だと記されていた。

それにしてはこの鳥は鳴かない。
鳴かないどころかウンともスンとも言わない。

何か孤独を楽しむ人生哲学を持っているのかもしれぬ。


ボタンインコとされる、
ボタンインコっぽくない鳥。

果たして・・



「シマドリ」

何それ。聞いた事が無い。


まる子だった五年生の頃、
下校の道で『シマドリ』という鳥を売る男の人を見かけた。

箱の中にたくさん入れられたシマドリは、

3センチくらいの大きさで、ヒヨコのような形をしており
茶色の縞入りの羽色で、チイチイと鳴きながら
チョコチョコ歩くのだ。

猛烈に欲しくなった。

だが一旦思いとどまり、
家に帰って母に相談する事にした。

上手く行けば母がお金を出してくれるかもという
下心があったからだ。


「なんだね。そのシマドリってのは。
そんなもの、きいたことないねェ。
怪しいよ、買うのよしな」

あっさりと言われて
相談した事を後悔した。

母はシマドリを見てないから
あんな事を言うのだ。
見たらきっと心を奪われるはず・・

「明日絶対に貯金でシマドリを飼うぞ」
夜も眠れず、布団の中で力をみなぎらせていた。


翌日、学校でおなじみのたまちゃんが
シマドリを二羽買ったと報告してきた。

居ても立ってもいられなくなった。
目が利く人は見逃さないでちゃんと手に入れているのだ。

シマドリへの想いは学校に居る間ずっと
雑念として渦巻いていた。

帰りの会が終わると同時に学校を飛び出す。

しかし、昨日の場所に行っても
シマドリ屋はいなかった。


買えるだろうか、シマドリ・・
何者なんだ、シマドリ・・

カラーヒヨコの亜種じゃないだろうな。
やめてくれよ・・



こうして挙げてみると、
さくら先生は鳥と関わる事が多かったようであるし
私も今回、鳥の話しかしていない事に気付いた。

かなり昔の本なのでここに書かれていないが
モモイロインコを飼っていた時期もあったはず。

鳥とさくら先生は、
強く惹かれ合っていたのかもしれない・・。


この他にも盛りだくさん。

色んないきものたちとの笑える、しんみりする、
驚きのエピソードが集結したこの一冊。

虫が苦手でなければ
是非読んでみて欲しい。

一つ一つに可愛い挿絵が付いている。
ここだけでも見たい。



ありがとうございました。
久々に読み返しても楽しい一冊です。

実はネコの事は書かれていない。

さくら先生はミーコという三毛猫を飼っていたと
別のエッセイで書かれているけれど
それはそこで補完してくれという事か。


最後に、スタンプ・・
そろそろ新作がお披露目出来そうです。

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