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知恵は何をもたらすのか。原神 スメール編

知恵は解決するためじゃない、希望を見付けるためだ。

第2幕までを終えて、
大賢者たちの企てで、
アーカーシャによって夢の世界に閉じ込められた二人。
何度も同じ世界を繰り返す、
ナヒーダの声が田村ゆかり…

最初は「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンドレスエイトが始まったのかと思ったが、
いや、これはどう考えても某アニメを意識した配役。
毎日が同じようで同じでない世界。
あっちはあくまで違う世界であって、
何が起きても同じように時が流れていたが、
こちらは夢を見させてそれを吸い取るというシンプルな悪行。

ラストのドニアザードがニィロウの舞を観に来たところ、
これは目覚めなければならない夢だけど、
夢だからこそ、ニィロウが見て欲しいと願ったからこそ実現した、
ドニアザードにも向けた舞。

絶滅した花が何故か舞台に置いてあるというのが、
輪廻から抜け出す鍵だったが、
最初からそうだったのだろうか。
だとしたら結構伏線を貼っててシンプルに推理ものとして面白い。

第3、4幕と終えて、
スメール冒頭で聞いた昔ばなしとの関連を思い出す。
教令院は神がいなくなったことに嘆き、
全知全能という道しるべを自ら作り出すために、
神そのものを創り出そうという蛮行をしようとして、
神の身体、夢、そして神の知識(災厄の知識)を得ようとしているが、
それに対して反抗勢力である旅人たちは、
神がいない(クラクサナリデビはいるがまともに活動が出来ない)中で、
キングデシェレト派の傭兵が実はキングデシェレトは草神に助けられたという事実を知り、
草神派とキングデシェレト派が手を取り合って、
教令院を倒そうとするのは、
昔話で見た1人目の賢者が神がいない過程で災厄を耐える知識を身に着けていたことと、
神がいない中で走り回ってきた旅人が、
迫りくるスメールの問題、災厄を解決することになることと似ている。

5幕では「オーシャンズ11」さながらの、
教令院の大賢者を欺くために、
仲間たちがそれぞれの行動を開始して、
ナヒーダ救出作戦を決行する流れがとにかく熱い。

そもそも4幕までの展開で知り合ってきた仲間が集結し、
ラストの展開で集まって協力するという、
今回の物語全体の収束に向かっているのが感じられて、
クライマックスに向けて気持ちを高めてくれる展開が上手い。

さらにそこからナヒーダを救出し、
最後は神の力も借りて創られた神・残兵と戦うシーンでは、
ナヒーダが夢境の力を利用して残兵を先頭に輪廻に閉じ込め、
その間に蓄積した情報をアーカーシャでスメール民に共有し、
攻略法を導き出そうとするという、
まさに訪れし災厄に対して、神の力ではなく、
民の力を結集して乗り越えていくという流れも非常にキレイ。
「ドラゴンボール」で言うところの『オラに力を分けてくれー!!』じゃないか。
そりゃ面白くないはずがない。

そしてここまで神の力なしで抗おうとした旅人を、
ナヒーダは昔話になぞらえて一人目の賢者と呼ぶ。
アーカーシャ、その技術の本来の使い方、
スメールに伝わる昔話、
この辺りもクライマックスでまとめあげられ、
人物・設定共にこれまでの要素が全て意味を成してくるという、
まるで良質な一本の映画から、良質シナリオのゲームのクライマックスを見たかのような体験。

そこからマハールッカデヴァータが世界樹と結びついているせいで、
災厄の知識を切り離せない、
だから自分ごと忘れてもらおうと自身を消すことを決めていたことを、
ナヒーダに話し、消えていくシーンも感動的で、
世の中のルールそのものを変える姿も某アニメみたいで、
かつ消えるのは神なので少し違うが、
セカイ系にも通じるような結末は泣けるし、シンプルに好みでもある。

とにかくスメール全体を通じて、
色んな作品を思わせるようなモリモリの美味しいところを合わせたような設定と、
前半から出てきた要素をしっかりと回収し、
最後に収束させる構成の見事さ。
これだけで1つの作品と言っても過言ではない素晴らしい物語だった。

知恵の木の実を食べたらそれはとても甘く、
いくらでも食べたいと思える味だった。
その木の実を求める人たちはいつしかそれを独占し、
木そのものには目もくれず、ただ木の実を待つばかり。
いつしかその木は枯れ果てて、実はならなくなってしまった。
その木がなくなった後も、その木そのものを蘇らそうとする。
しかし僕は気付いた。
この木の実の中に種があることを。
僕はその種を大事に育て、時には種を周りに渡し、
みんなでその種を見守ることにした。
全ての種が上手く成長するわけではなかった。
試行錯誤を繰り返し、長い年月がかかったが、
その種からやがて芽が出てきて、大きな実のなる木となった。

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