LGBT表記の現在
知人より「LGBTQのQって何?」というご質問を賜った。以前私が執筆した『LGBTQの「Q」? 「Xジェンダー」とは何か』というエントリーで少し触れたが、今月はレインボープライド月間ということもあるので、今回はもう少し深堀りしてみようと思う。
セクシャリティーの表記、今どうなってる?
私が今知っているセクシャルマイノリティの表記は「LGBTQQIAAPPO2S」まで増えている(※米国での話です。国が変われば表記も変わります)。以前執筆したエントリーでも少し触れはしたが、詳しく説明はしなかった。なぜなら… 長すぎるでしょ!? しかも、日本語で聞いたこともないようなワードがバンバン出てくる。文献もほとんど存在せず、日々変化する「定義」をネットで調べるしか方法がない。しかも言語の壁があるため「日本ではこう呼ぶけど、英語ではこう呼ぶらしい」的な違いが多くて、説明がかなり煩雑になってしまう。
というわけで、私がネット上で見つけた情報を使って、できるだけわかりやすく噛み砕いてみようと思う。
セクシャルオリエンテーションとジェンダーアイデンティティの関係性
説明をはじめる前に、以前執筆したこちらを紹介したい。
『全生愛? 「パンセクシャル」とは何か。バイセクシャルとのちがいとは』
ここでも触れている、「セクシャルオリエンテーション」と「ジェンダーアイデンティティ」のちがいを理解することは案外と重要だ。
エントリーを引用しよう。
「SOGI」とは、「ソジ」「ソギ」と読む。
どの性別を好きになるか、または好きにならないかを示す「性的指向(Sexual Orientation)」と、自分のジェンダーをどう認識しているのかを示す「性自認(Gender Identity)」の頭文字をとった言葉だ。
「LGBTQ+」がセクシャルマイノリティの一部の人たちの総称であることとちがい、「SOGI」はすべての人を対象とした「性に関する見方」を指す。
世間はヘテロセクシャルが大多数だ。すると、自認している性別(ジェンダーアイデンティティ)が男性であれば恋愛対象(セクシャルオリエンテーション)は女性。逆も然り、と思いがち。そのふたつの関連性は、一旦忘れてほしい。ジェンダーアイデンティティとセクシャルオリエンテーションのふたつは、別に考える方が楽に理解できる… というよりも本来関連性がないと思っていた方がいい。
しかしこれはまた話がズレそうなので、違う機会に書き記したいと思う。
各セクシャリティの頭文字
「LGBTQQIAAPPO2S」、言わずもがなそれぞれのセクシャリティの頭文字を取っている。
L:レズビアン。女性として女性を恋愛対象とする。
G:ゲイ。男性として男性を恋愛対象とする。(実は日本語特有の使い方で、英語では、ゲイ=同性愛者なのでレズビアンも自分のことをゲイと呼称する)実は「gay」という言葉の語源は「とても愉快である」「楽しい」という意味を持っており、30年代ごろには一般的に使われる言葉だった。(ex: Let’s have a gay time!)
B:バイセクシャル。男性と女性を恋愛対象とする人を指す。「バイセクシャル+」とも呼ばれる(詳しくは『全生愛? 「パンセクシャル」とは何か。バイセクシャルとのちがいとは』を参照)バイセクシャル+には、下記に出てくるパンセクシャル、オムニセクシャル、そしてポリセクシャルも含まれる。「バイ」とは「ふたつの」という意味。bycecle(自転車)の「バイ」と同義。
T:トランスジェンダー。生物学的な体の性別と、社会的にどの性別として生きたいか(扱われたいか)に差異がある人を指す。(『知っているようで知らない。「トランスジェンダー」とは何か』『トランスジェンダーが抱える悩みや不安とは』『LGBTQの「Q」? 『Xジェンダーとは何か』こちらの3エントリーで詳しく説明しております。)
Q:クエスチョニング。自分のSOGI、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)が定まっておらず、疑問を持ち続ける人を指す。
ふたつ目のQ:クイア。元々は、「奇妙な」「○○をぶち壊す」という意味で否定的に使われていたが、時間と共に「奇妙で楽しい」という意味に変化していった。現在では「性行動で分類できない個性的な存在」という意味で使われている。
I:インターセックス。と、呼ばれていたのだが、正式名称は「Disorders of Development」略してDSDと呼ばれる。日本語では「性分化疾患」とも呼ばれており、身体的な機能や形、発達が典型的「男か女」とは一致しない人たちを指す。これに関して「セクシャルマイノリティ」に含めていいのかどうかは議論が割れているらしく、一筋縄で説明するには難しそうだ。
A:アライ。軍事関連でよく使われる「アライアンス(同盟)」から来た言葉で、本人がセクシャルマイノリティ当事者ではなくても、当事者を支援する人を指す。
ふたつ目のA:アセクシャル。平たくいうと、他人に恋愛感情や性的衝動を持たない人を指す。こちらも以前のエントリー『恋愛感情がない? 「アセクシャル」とは何か』をご参照いただければと思う。
P:パンセクシャル。日本語では「全性愛」と呼ばれる。相手のSOGIを認識せず、誰しもを恋愛対象とする人を指す。詳しくは、こちらも以前のエントリー『全生愛? 「パンセクシャル」とは何か。バイセクシャルとのちがいとは』をご参照いただきたい。(書くの怠けてるな?)
ふたつ目のP:ポリアモリー、またはポリガミー。複数の相手が同時に恋愛対象になる人、または複数人のパートナーと同時に関係を持つ人を指す。反対語はモノガミー。「ポリ」とは「複数の」という意味。「モノ」は「モノクローム」や「モノトーン」の「モノ」と同じ「単一の」という意味。セクシャリティを話す上でモノガミーの方が圧倒的多数なので、逆に、この言葉に触れる機会は少ないように思う。「私ヘテロです」とわざわざ表明してくる人が極端に少ないのと似ている。
O:オムニセクシャル。限りなくパンセクシャルに近く、日本語では同じく「全性愛」と呼ばれるが、オムニセクシャルの人はパンセクシャルの人とちがい、相手のSOGIを認識した上で恋愛をする人を指す。
2S:2スピリット。『知っているようで知らない。「トランスジェンダー」とは何か』のエントリーでも触れているので引用すると、
ネイティブ・アメリカンの伝説からインスパイアされた言葉。男性と女性の魂がひとつの体に収まっている人が存在するという伝説から、心の性別が男性であり、同時に女性でもある人を指す。
トランスジェンダーに含まれる。
これだけでも多いのだが、ポリセクシャル、デミセクシャル、ノンセクシャル、アロマンスなど、様々なカテゴリーが存在する。
ポリセクシャル:複数のジェンダーを恋愛対象とする人を指す。バイセクシャル+に含まれる。先述した「ポリアモリー」の「ポリ」と同じ用法だ。
デミセクシャル:相手を深く知ることではじめて、相手に性的欲求を感じる人を指す。
ノンセクシャル:他者に性的欲求を抱かない人。
アロマンス:性交渉の有無に関係なく、恋愛はしない人を指す。
※追記 メキシコでは、LGBTTT+という表記がメジャーらしい。3つのTはトランスジェンダー、トランスセクシャル、トランスヴェスタイトの頭文字だ。詳しくは『知っているようで知らない。「トランスジェンダー」とは何か』参照。
カテゴリー分けって必要?
私が個人的に昔から提唱していることがある。
カテゴリー分けやラベルをつけるのは、他人に説明する時に楽だから。ラベルさえ言えば一瞬で伝わるし、簡単。でも、自分がそのラベルに振り回される必要もなければ、付けたくなければラベルなどつけなくてよい。
今でもそう信じている側面は確実にある。が。気付いたことがある。状況や現象に名前がつくことで、憑物が落ちたようにスッキリすることがあるのだ。ああ、私ってコレだったんだ!!! と。確実に、それが救いになる人たちが存在する。だから誰かが現象や状態に名前をつけて「あなたはこれですよ」と提示すると、どこかの誰かが安心する。(悪い側面もありますが、ここでは割愛します。)
セクシャリティは流動的で、年齢や環境によって変化することはいくらでもある。だからこそ、ラベルに振り回される必要ないじゃん! と信じてきたのだが、振り返ってみると、セクシャルマイノリティ界隈の話は一切関係なくとも、自分の精神状態や環境に名前がついた時に「コレだったのか!!!」と、めちゃくちゃスッキリした記憶がある。それは、若い時分の私を救ってくれた。
最後に
専門用語とかわかんないし、別に知らなくてもいーじゃん。それも、いいと思う。必要ない人には、一切必要ないことだから。ただ、そうやって名前がつくだけで救われる人たちがいること、私自身が救われたことがあることを、忘れないようにしたいと思う。