私が死ぬよりあなたが死ぬほうが怖いよ。
「人間ってなんで進化しないんだろう。メンヘラもサイコパスも圧倒的に退化すべき存在なのに。」
梅酒のソーダ割が届いた。下に濁る梅酒をかきまぜる。ふんわりと液体が歪む。
「人類の社会の成立なんて、長すぎる生命の誕生から考えたら短過ぎるから、そこまで進化できてないんだよ。」
私には飲めない焼酎を飲んだあなたが言う。顔は赤くないけど酔ってるのが分かる。時折顔を顰めるけど、不機嫌なのではない。酔ってる時のサイン。ご機嫌であることの方が多い。
そうか。私のなかでの長い長い生涯は、生物の進化の過程においては一瞬の出来事なんだ。
「こういうの考えると、死ぬのが怖くなって、死にたくないなって思う」
「どうして?俺はすぐに死ぬべきだなって思うよ」
「死ぬのが怖いから。私という個がわたしの全てなのに、それが終わるのが怖い」
「なるほど」
本当に怖くなってきた。死を感じて、考えるのはいつもこわい。
怖い。わたしが終わるのはいつも怖い。
あなたの終わりも、わたしの終わりと同じくらい怖いよ。
ちょっと鼻の奥がしっとりとした。悟られなかったか。
「そっか」というあなたはきっと真意に気づいてるけど無視した。
梅酒は、ソーダと氷に溶けて混ざる。コップの中が歪む。
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