妊娠中、本当にノンアルコールワインは飲んで良いのか!?
「妊娠中にアルコール摂取は避けた方が良い。」
これは、皆さんご存じですよね。
お酒好きには本当に辛い期間だと思います。
最近はノンアルコール飲料の種類も豊富で、味もかなり改良されていて、
「妊娠中はノンアル飲んで、我慢してます!!」
という妊婦さんも多いのではないでしょうか?
ここで、問題です。
「妊娠中にノンアルコールワインは飲んで良いのでしょうか?」
あなたは自信を持って答えられますか?
「赤ワインって飲むと頭痛になるんだよね~」
「ビールだと大丈夫なんだけどね~」
なんて、よく聞きますよね。
それって、アルコールじゃなく、他の何かが悪さをしている可能性がありませんか?
ということで、
「ノンアルコールワインも胎児に影響を与える可能性があるんじゃないの?」
というテーマについて考えていきたいと思います。
容疑者:亜硫酸塩
ワインには通常、添加物として亜硫酸塩が添加されています。
一時期、「こいつがワイン頭痛の原因じゃないのか!?」と疑われて、世間で騒がれたことがありましたね。
今回の容疑者はこの亜硫酸塩です。
こいつが、胎児に何かしらの悪さを働く可能性が考えられます。
「亜硫酸」
見るからに悪そうな顔してますね。
とぼけたような目としゃくれた顎・・・
もう犯人ってことで、良いのではないかと思いますが、一応調べてみました。
「用語の説明」
亜硫酸にナトリウムなりカリウムなりが結合したものを亜硫酸塩とよびます。
食品添加物にはどちらも使用されますが、ワインには通常亜硫酸ナトリウムが使用されます。
なぜ亜硫酸をワインに添加するのか?
亜硫酸のこれらの働きがあるからこそ、「ワインの色合い」、「味わい」、「コク」、「香り」が保たれているということのようです。
この亜硫酸塩は、ブドウが発酵してワインになる過程の副産物としても自然に生成されます。
つまり、亜硫酸塩「無添加」ワインは存在しても、亜硫酸塩「含有量ゼロ」のワインは存在しません。
ちなみに亜硫酸塩は漂白剤としての機能があるので、ワイン以外の食材にも広く使用されていて、ドライフルーツ、かんぴょう、甘納豆、煮豆、豆腐、ゼラチン、コンビニ弁当、カレーやラーメン等のレトルト食品、海老やカニ等々、多くの食品に使用されています。
ワインには亜硫酸塩がどの程度含まれているのか?
添加量として、下記の適正使用が国税庁で推奨されています。
「いやいや、こんな規定があっても守られていない可能性があるよね~」
って思いますよね。
なので、調査報告を探してみました。
本研究では、食品添加物の調査解析が行われています。
結果をみると、やはり赤ワイン・白ワインに含まれていることが分かります。
「てか、規定の数値超えてんじゃん!!!!」
って思いますよね。
こういう適正使用の推奨は基本的に守られていないことが多い気がします。
(※個人の感想です)
亜硫酸塩、胎児への影響は?
胎児への影響を考えるのに、ヘルシンキとパリで開催された評価会議の内容を参考にしました。
妊娠8-20日間、亜硫酸ナトリウムを添加した混餌を妊娠ラットに投与したという動物実験の報告が行われています。
「催奇形性のNOAELは5%とされた」
という結果です。
意味わからないですよね。
頑張って解説します!
まず、NOAELというのは「無毒性量」という薬学用語で、ここでは体重当たりの一日摂取量ということで計算され、毒性のない量が推計されています。
まだ、ちょっと何言っているのか分からないですよね。
具体的に計算すると、
5%の亜硫酸ナトリウム(七水和物)は1,650 mg/kg bw /dayと換算されます。
例えば、
体重60kgの人の場合、一日99gまで摂取しても催奇形性はない
ということです。
※「ラットのデータをヒトにそのまま引用するなんて、なんたる暴挙だ」というご意見もあると思いますが・・・
臨床研究で妊婦に投与して胎児への影響を検証するなんて、非人道的な研究は現実的でないのでお許し下さい。
先ほどのデータでは、ワインに含まれる亜硫酸塩は多くても250 μg/g未満でしたよね。
ノンアルコールワインに含まれる亜硫酸塩を250 μg/gと仮定して計算してみます。
体重60kgの人の場合、
1日396kgまでノンアルコールワインを摂取しても催奇形性はないだろう
ということになります。
逆にいえば、ワイン1本は通常750mlなので、
一日に528本以上のノンアルコールワインを飲むと影響しうる可能性がある。
ということです。
もはや違う病気を疑ってしまうレベルですね。
結論
今のところ、報告を見る限り、
妊娠中にノンアルコールワインを飲んでも催奇形性には影響はないだろう。
おまけ:亜硫酸塩は頭痛の原因なのか!?
亜硫酸塩は催奇形性には影響無さそうだけど、結局頭痛の原因なの?
もはや全然、妊娠関係ない気がしますが・・・
育休中の子育ての合間に、ワインを嗜好することもあるかもしれない、ということで考えていきたいと思います。
「亜硫酸塩=頭痛」はマーケティング!?
こちらの論文では、
消費者のかなりの割合がワインに含まれる亜硫酸塩が頭痛を引き起こすと信じている
と報告されています。
頭痛を経験している消費者は、ワイン業界よる「亜硝酸 無添加/減量」のマーケティングの影響を受けやすい
ということも書かれています。
ちなみに、加熱処理(かなり風味を損ねるらしい)をすれば、亜硫酸塩無添加ワインは作れるようです。
いわゆるオーガニックワインですね。
「もしかして、オーガニックというブランディングのために作られた
『亜硫酸=頭痛』というマーケティングに騙されているのでは・・・」
という懸念が出てきましたね。
学術的に考える「ワインと頭痛」
2014年にちょうど良いレビュー論文が報告されていました。
ワインと頭痛の関係については、実は紀元前から報告があります。
ワイン摂取が頭痛の引き金となる可能性についてはほぼ間違いなさそうです。
また、アルコールが頭痛を誘発することは様々な研究から明らかになっています。
飲酒後4~6時間で三叉神経過敏症を誘発することに併せて、エタノールの分解物であるアセトアルデヒドによる影響も報告されています。
もちろん、ワインに含まれるアルコールが頭痛の一因であることは間違いありません。
しかし、それ以外の要因は実はよく分かっていません。
容疑者①:亜硫酸塩
驚くことに、
亜硫酸塩と頭痛の関連性を示した確かな報告はありません。
つまり、オーガニックブランドを作ったマーケター達の手によって罪を着せられてしまったようです。
むしろ被害者と言っても過言ではありません。
亜硝酸塩はワイン以外の食品にも多く含まれていますが、ワインで頭痛を起こした人でもそういった食品では頭痛発作を起こさなかったという報告があり、かなり容疑は晴れているようです。
よく見れば、優しい穏やかな顔をしていますね。
皆さん、亜硫酸塩をいじめないでくださいね。
容疑者②:フラボノイドフェノール化合物
こいつが医学会では最も高い容疑をかけられているようです。
フェノールは酵素フェノスルホトランスフェラーゼ(PST)によって分解されます。
ワインに含まれるフラボノイドフェノール化合物はこのPSTの働きを強力に阻害します。
PSTが阻害されると、体内に遊離フェノールが蓄積し、これが頭痛発作を惹起するのではないかと考えられています。
(※かなり単純化して書いたので、学術的に”?”な部分はご指摘ください)
容疑者③:5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)
5-HTは別名、セロトニンと呼ばれています。
脳内神経伝達物質として、ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きは聞いたことがあるのではないでしょうか?
5-HTは実は血液中や消化管などに広く分布しており、脳内とは全く異なる働きをしています。
赤ワインは血小板からの5-HTの強力な放出剤として機能することが分かりました。
興味深いことに、白ワインやビールではこの5-HT放出は起こりません。
赤ワインを飲んだ時にだけ、血中の5-HTレベルが亢進します。
それが頭痛誘発の一因だと考えられています。
あとがき
ご近所の妊婦さんにノンアルコールのスパークリングワインをプレゼントした後で、
「あれ、これって飲んで良いんだっけ??」
と焦り、色々と調べました。
妊娠中の食事って本当に気を使いますが、正しい知識を持って対応することが大切だと思います。
怪しいネット情報では、オーガニックワインを売りたいマーケターのように、平気で嘘情報を垂れ流しているので、ちゃんと自分の頭で判断しましょう。
(結局、学術論文であっても、怪しいのも多いし・・・)
育休を取得することで、生活が豊かになり、幸せな家庭が増えると嬉しいです!
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