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「ガーデンシティ」シンガポール
久しぶりに、シンガポールについて書こうと思います。
私は今、マレーシアのクアラルンプールに住んでいますが、一番最初に駐在したのはシンガポールで、通算すると13年ほど住んでいました。
ますます発展し、しかも都市の美しさがアップしている秘密について書いてみようと思います。
ビジョン―「都市に緑を」
シンガポールが「ガーデンシティ」として世界中で有名になるまでには、50年近い時間がかかっています。そこには確固たるビジョンがありました。
都市国家としての発展が急がれていた1960年代、当時のリー・クアンユー首相が目指したのは「ガーデンシティ」でした。
「灰色のコンクリートに覆われた都市を、自然と調和した美しい都市にする」彼は言葉の通り、都市開発を進める一方で、建物の間には必ず街路樹や公園を配置しました。
そのため、高層ビルが立ち並ぶビジネス街の真ん中にも、青々と広がる木々が見事です。人工的でありながら、どこか自然に包まれているような、「箱庭」のような不思議な心地よさが、シンガポールにはあるのです。
緑が息づく「日常」
シンガポールの美しさは、「日常」の中にあります。
歩道に沿って植えられたブーゲンビリアの花々、整えられた芝生のある広々とした公園、壁を見事に緑で覆うビル、そしてショッピングモールの屋上にある見事なスカイガーデン。
日々の暮らしの中で、自然はまるで「当然」のように存在していて、近代的な大都会の喧騒を和らげてくれます。
私が初めてチャンギ空港に降り立ち、タクシーで街中に向かった時の、高揚感と不安感は今でもはっきりと覚えていますが、その光景は、煌々と照らされたハイウエイのライトと、分離帯や沿道に咲き誇っていた熱帯の花々の美しさとともに思い出すのです。
「持続可能」
シンガポールの自然の美しさは、「機能性」も兼ね備えています。
例えば、緑化された壁面で覆われた「グリーンビルディング」や、建物の内部を涼しく保つための「スーパーツリー」は、都市機能と環境保護とを見事に融合させたデザインです。
シンガポールが掲げている「持続可能な都市づくり」は、土地が限られたシンガポールが導き出した必然でしょう。
限られた土地に緑を増やし、自然エネルギーを最大限に活用する。
そして、植物を育てながら、同時に人々の生活を快適にする、そんな「理想の都市像」が、シンガポールには既に存在しているのです。
「ジュエル」の美しさ!
チャンギ国際空港に隣接する「ジュエル」に入ると、建物の中に巨大な滝が出現し驚かされます。
シンガポールが理想としている世界観が見事に表されていて、「さすが!」と思わされます。
近代的な街や建物に、豊かな緑が絶妙に溶け込み、未来都市の理想形が、シンガポールのそこここに、日常風景として広がっているのです。
たしかに人工感があり、つまらなく感じることはありますが、「こんな自然もあってもいいのではないか」と、シンガポールを訪れるたびに感じさせられます。