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ギアセッティングの考え方

車のセッティングって悩みますよね。
今回は加速性能や最高速度に関係のあるギアセッティングについて解説してみようと思います。
写真の上のものがギアボックスです。
写真の下のものがファイナルギアです。

(㈱オーエス技研様 OS-88)


(㈱東名パワード様 T-TRAX ADVANCE タイプHA/HXA PROKIT)

この2つはアソルトレーシングで調整が可能で、コース選択後のセッティング画面から調整が行えます。いきなり数字だけの状況から手を加えるのも「まず、どうなるかわからん」となると思います。なのでまずはいじくったらどうなるか?結論から解説していこうと思います。

「最高速なら数字は小さく、加速なら数字は大きく」
極論これでオッケーです。
なんならファイナルギアをいじるだけで大丈夫。

(ここを調整して速度を合わせるだけでも大丈夫)


300㌔でレブリミッターの車に乗っていて、そのコースで最大250㌔出るなら最短で250㌔出るように加速寄りに調整すればタイムアップするよねって感じです。

(コースで一番速度が乗るところでギアが余っている状態)

逆にニュルブルクリンクのように、300㌔出てレブリミッターに到達しているのにまだまだ直線があるような状況なら、最大限の速度が出せるように最高速寄りに調整すればタイムアップします。まずはコースに対して最高速が頭打ちにならないようにファイナルを調整してみましょう。

(ギア比が低速寄りのためエンジンが吹けきって加速できない状態)

そもそもこの数字とはなんぞやは軽く話しておきます。
「そいつが1回転するためには何回転必要か」ってこと。
例えば「5」だったら5回回せば1回回ります。
スピードは1/5に下がるけど、押し出す力は5倍になる。
ざっくりいうとこんな感じ。

ファイナルギアとは

(この歯車)


最後のギアです(そのまんま)
内燃機関での回転出力(ようはパワー)は
「エンジン」

「トランスミッション(今回で言うギアボックス)」

「ファイナルギア」

「タイヤ」
の順番で地面に力を伝えていきます。

(よくあるFRのレイアウト)

ギアボックスの回転を受け取って更に回転を変化させるのがファイナルギアです。なのでファイナルを変更することは全体の比率を伸縮させることができます。例えばファイナルが4.00の車であれば数字を小さく(〜3.99)することで全体的に最高速重視に、数字を大きく(4.01〜)することで全体的に加速重視になります。コースに対して車が出せる最高速度を合わせるときに使用すると変速のリズムは変化が少ないので先にざっくりとコースに対して車を作る場合にとっても便利。

(おさらい)

次はギアボックス側の調整です

(これ)


エンジンからの回転をファイナルギアへ伝達する部品です。
トルクと速度を段階的に制御することが役割で、レース用クロスミッションなどに変更を行う場合は街乗りで燃費の良さを重視した比率から、エンジンのパワーをしっかり使いこなすようなパワーバンドを意識した比率に変更される。
全体の比率をノーマルより6速側にすべてを寄せた形になるので「クロス(せまい)」ミッションって呼ばれています。

お手製クロスミッションの作成

(OSクロスギアキット)

写真のようにクロスミッションはノーマルと比べて数字の変化幅が小さくなっています。
発進以外で使うことのない低速は捨てて、細かくギアを繋いでいくことでトータルの加速力を相対的に優位にするって考えです。
ファイナルのことを考えずに計算したため、もともとがとてもワイドになりましたが、ノーマルとの比較です。

(赤:ノーマル 青:OSクロスギア)

縦が回転数、横が速度になっています。
ピンクの横線はレブリミットとしています。
4速が同じなのは直結ギアといって歯車的なのがない1:1のまま出力するため変化できないのです。

というわけで、ノーマルの1速と5速の間にクロスギアはすべて収まっていますね。この感覚が狭くなることをクロスと読んで、広げることをワイドってのりで覚えておくとたまに耳にするときにすんなり理解しやすい( ´ー`)
アソルトレーシングのセッティングでいうと、4速を軸に1〜3速の数値を減らす方向(4速の数値に近づけていく方向)で5速は数値を増やして4速の数値に近づけて行くことで再現できます。
間隔が狭まるので、ギアを変えたあとの回転の落ち込みも少なくなります。もしターボなどで一定の回転数以上にならないとパワーが出ないときは、次のギアの数値を増やしてよいです。
この状態で1速の速度を揃えるとファイナルが3.2→3.8になり、最高速は約400㌔から約306㌔になるのでサーキットとかの加速力が相当良くなりそう。
街乗りもできてサーキットからデカいタービン回すときでもパワーバンドに500回転近く余裕がある

次は一箇所だけ(特定のギアだけ)調整を加える場合のすこし実践的な解釈で調整を行ってみます。
走行中にコーナーまであと少しでレブリミッターに当たるコースがあるとします。
シフトアップしても加速する時間がなく、レブリミッターに当たったままコーナーへ侵入する状況。一つ上のギアを選択して立ち上がる場合にパワーバンドから外れて加速できない。
そんなときにレブってしまうギアの数値を小さくしてレブリミットまでお最高速を伸ばす。
レブリミットスレスレでコーナーに侵入できるように調整すれば、加速できない時間が減ってタイムアップになるというわけですね。
メリットは他のコーナーでの影響が少ないこと
デメリットはギア比が最高速よりになるので加速は鈍くなること
こんな感じで、コースに合わせて適切な微調整を加えていきベストな状態を探すのがギアセッティングの奥深いところです。

おおよそギアセッティングを行う理由はおわかりいただけたでしょか。
効率的にエンジンのパワーを使い切ることで、狙ったコースでしっかりと速度の出せる車を作る1つのツールになります。
では、次からが本来お伝えしたかった魔境ベースセッテイングに基づいたアソルトレーシングに対しての最速の考えをお伝えできればと思います。

魔境ベースセッティングについて

この車両は初心者からスタートした場合でもレコード帯のドライバーとバトルすること、厳密には相手を拝んでゴールまで行けるセッティングです。
ギアの前に軽く足回りを解説
フロントキャンバー:回頭性とブレーキ安定のために最小にとどめた調整
リヤキャンバー:縦横のグリップバランスを取る中で縦に頼りすぎない調整
車高・オフセット:車高を落とす、もしくはリヤのオフセットを外側へ調整することで挙動が変わる分岐点に調整
ABS ON:侵入姿勢を作ることより適切な場所を掴み立ち上がりを意識してほしいためON
こんな感じで本当に土台になるように設定しているので、その先の答えは操作環境やドライビングスタイルによって何を強化して何を弱体化させるかを自分とすり合わせていってほしいと考えています。

では、ここからがギア比の話となります。
「空転をすべて実益へ」これがベースセッティングでのギア比の根幹となります。
要するにアクセルを踏んで空転するなら、しなくなるまでギアを最高速よりにします。これはMTで操作されている人ならわかりやすい話で、コーナーを1速上げて立ち上がったほうがスピンしにくいって経験があると思います。この状況をコース、出力特性、ダウンフォース、グリップ力、コーナーでバランスを取りながら最小で最大の優位性と安定性を向上させるという試みです。


(赤:FDRプリセット状態 青:FDR魔境ベースセッティング)

元の状態から比べると2速が3速よりも速度が出るとってもワイドなギア比です。
パワーバンドの範囲の中で最大まで空転を抑える
これを踏まえてギアに与えた役割をわけました。

(ギアの守備範囲)


1速:
もとのギア比より1.5速くらいの感覚まで速度を出す。変速回数を減らすことと、2速からのパワーバンドを意識しています。ハーフアクセルでスタートさせて80㌔くらいで空転が収まりだしたらゆっくり全開にしていきます(スロットルスライダー推奨)
2速:
スタートからコース中間まで使う前半の立役者。コースの特性がシンプルな90度コーナー2つに対して割り当てています。なので、比較的に遠心力を引きずらない状態で立ち上がれます。もとのギア比と比べると3速よりも速度が出るため、MTであれば1速高いギアで立ち上がる状態以上にアクセルワークがラフに踏めます。
ここがミソですね、もとのギアの2速のパートは踏んだらホイルスピンしまくるわけですよ。そこを重たいギアでホイルスピンギリギリまでのパワーに調整して3速でグリップするパートまでを兼任させています。
3速:
シケイン手前の4速への繋ぎ。
ここだけ極端に守備範囲が狭いのは上記2速で話したホイルスピン制御や、のそのまま2→4速の3速仕様にした場合、ホイルスピンする気配もなく5,500rpm付近まで回転が落ち込んでしまいます。体感的に加速が鈍く感じたので、33㌔分のはずみをつけました。また、S字で3速位となるので動作としてのパターンは固定しやすいと思います。
4速:0.93は実はマイルドにするために1.00からデチューン。1.00のときってだいたい300㌔くらいで組んだんです。FDRが290調整位で最高速なので、もちろんパワーのある数値の小さいギアのほうが加速に優れますよね。でもあえてワイドにデチューンしたのは高速コーナーで全開にしやすくするためです。少しアクセルの調整を必要とする1.00を0.93にすることでトルクを落とし、全開のままハンドルで調整しやすくするためです。最高速用のギアでありながらコースのためにトルクを調整しているのが、セッティングとしてはかなり突き詰めた解釈になっています。

3速からはもうストレートならホイルスピンも起きないので馬力に対して最大効率の加速を狙って4速へ素早くパス(Sでも4速に入るときある)。4速は0.93がシケインから荷重をかけたときにスピンアウトしてしまうのを防ぐために、加速を潔く犠牲にして踏み切れる安定感に振っています。1.00はトンネルトップスピードに合わせているのでアクセルワークで早く走れます。ですけどね、どーんと踏んでいける安定感って侮れないんですよ。
こうやってとにかく扱いやすさ、すなわちアクセルワークの容易さとわかりやすさを重視したんですね。
具体的にはパワーバンドから外れない範囲でホイルスピンが起きる時は、限界までギアを最高速よりに振ってあげます。逆に200㌔超えてくるとタイヤはグリップしだし、空気抵抗なども加味されてきますので、しっかりとパワーを使えるようにギアの感覚を狭めたり重いギアの手前に1段ギアを追加して加速力を引き出していきます。最高速に到達する時間はホイルスピンがない限り、時間あたりの速度の変化が速くなるようにパワーのあるギアを挟みたいということです。
なのでできる限り最小となる変速数で魔境車のベースセッティングは作成させていただきました。

最後に
いかがでしたでしょうか。
市販されている普通のスポーツカーであればファイナル交換で一旦区切りをつけて良いようなチューニングであるギア比ですが、ゲームのようにコストが無限でトライできる場合は現実を超えた超特別なギアセッティングも楽しめるのが魅力です。
今回のギアセッティングで一番お伝えしたかったのは「トルクの調整」です。
すべてのギアを効率よく必要な分だけ活用するためのにどうするか
「PLAN(速さ・演舞の向上)」

「Do(仮説作成)」

「Check(性能評価)」

「Action(再調整)」
のようなPDCAサイクルで仮説を願望でなくしっかりと評価することが重要です。
ドリフトであっても各コーナーに適切に踏み切れるギアとスタートのはずみ用のギアなど、馬力と慣性をコーナーにあわせることで安定感の向上に繋がります。
その後で改めてすべてのギアを活用した技量による一台を作られて良いでしょう。
また、ディーラーの車に現実にある各メーカーのクロスミッションのギア比を入力して低い馬力から違いを楽しんでみるのも楽しいです。
私のZ33はOS技研6速というロット生産になる夢が膨らむギアを、定番の純正流用3.9ファイナルで軽い給排気のみなんて仕様で楽しんだりしています。
自分好みの一台を作成するお手伝いになれば幸いです。


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