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iOS14にまつわるスッタモンダを、モバイル広告業界の外の人にもわかるように解説してみる

AppsFlyerに入社して4ヶ月が経ちました。

かなり変化の激しい業界だとは聞いていたのですが、いきなりのビッグウェーブが来ました。

それは「iOS14」です。

Appleは6月末のWWDCにて、iOS 14からAppTrackingTransparencyフレームワークというものを導入することを発表しました。

モバイル広告業界には大きな衝撃を与える内容で、私もWWDC以降は、iOS14関連の対応に多くの時間を割いている状況です。

業界外の人にとってはかなりマニアックなだと思いますが、これがどういったものなのかを解説してみたいと思います。端折っている部分もありますが、雰囲気だけでも感じ取ってもらえると嬉しいです。

IDFAとは?

iOS13までは、IPhoneのプライバシー>広告このような設定画面があったことはご存知でしょうか?

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この「Advertising Identifier」というのはiOSでは通称IDFA(Identifier For Advertising)と呼ばれており、その名の通り、広告目的のためのデバイスを特定するためのIDです。AndroidにもGAID (Google Advertising ID) と呼ばれる同等の仕組みがあります。

IDFAは主に「ターゲティング広告」のために使われます。

例えば、あなたがアプリの提供者で、アプリを過去に使っていたユーザーに対して、もう一回アプリを使ってもらえるように広告を出したい場合。

過去に使っていたユーザーのIDFAのリストがあれば、広告配信をしている業者に対して、「このIDFAのユーザーに対して広告を出してね」という形でお願いすることができます。これはリターゲティング呼ばれ、ターゲティング広告の一種です。

そういったターゲティングをして欲しくない、というユーザーのためにこの設定画面があります。その端末のIDFAを無効化したり、リセットできたりするわけですが、あまり広く認知されているわけではないのが実態です。

新しく導入されるAppTrackingTransparency(ATT) フレームワーク

iOS14以降ではこのIDFA周りの仕組みが変わります。

端末レベルでIDFAを有効化/無効化するのではなく、アプリの初回起動時に「そのアプリにIDFAを通知しても良いですか?」という内容のポップアップメッセージを出すことにより、アプリレベルでIDFAを有効化/無効化できることとなります。

ポップアップメッセージは下記のようなものになります。

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これがAppTrackingTransparency(ATT) フレームワークという仕組みで、ユーザープライバシーの配慮をさらに推し進めた仕組みになります。

ただ、IDFAのことをよく知らない人がほとんどなので、このようなメッセージを見たら許諾しないを押す人が多いのではないでしょうか。
仮にIDFAのことを知っていたとしても、自分にとって特にメリットがなければわざわざ許諾する人は少ないかもしれません。
アプリの提供者からすると、このポップアップでユーザーからの許諾が得られない場合には、IDFAが取得できないこととなります。

ATTが実運用されてみないとわかりませんが、このような理由からIDFAが取得できる割合は激減するのではないかと言われています。

モバイル広告業界に与える影響は?

これにより、ビジネス上で影響を受けるのは、ターゲティング広告を出したいアプリの提供者(=広告主)に加えて、Facebook, Google, Twitterなどの広告配信をしている会社です。

ターゲティング広告はその名の通り、広告に興味のありそうなユーザーを狙い撃ちするので、効率の良い広告手法の一つです。

IDFAの取得率減少は、そのままターゲティングできるユーザーの減少、ひいては広告収入の減少につながります。

そのため、8月26日にFacebookは自社のブログの中で「ビジネスにとって(コロナ禍で)既に困難な時期に、iOS 14が開発者や広告主の多くを傷つけるとわれわれは考える」という旨のメッセージを出しています。

Facebook、「iOS 14の新機能は多数の開発者と広告主を傷つける」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2008/27/news062.html

AppTrackingTransparency(ATT) フレームワーク義務化の延期。そしてiOS14リリースへ・・・

おそらく、そんな業界の声に配慮して、9月3日にAppleは、IDFA取得の際のATTポップアップの義務化を来年初旬まで延期することを発表しました。

アップル、iOS 14の「トラッキング要求を許可」を延期。大手ゲーム会社に配慮か
https://japanese.engadget.com/ios14-tracking-070008129.html

一旦、今年いっぱいはiOS13以前と同様に何もせずにIDFAの取得が可能、ただし、来年からはATTフレームワークを必須にするので準備しておいてね〜、ということになりました。

私としては、とりあえず準備期間ができてホッと安堵していますが、「この期間のうちにターゲティングをやってみよう」という野心的なアプリ提供者もいらっしゃいます。

こんなリリース前のスッタモンダを経て、まもなく本日9月17日(日本時間)の早朝にはiOS14の配信が始まるはずです!


・・・この続編として近日中に、iOS14でのAppsFlyerのようなモバイル計測プロバイダー(MMP)にはどのような影響があるか、について書いてみたいと思います。


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