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2021マイルCS観戦記~そして、母になる~

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本当に大物なのか?疑念をあざ笑うかのように圧勝した桜花賞
アーモンドアイを完膚なきまでに打ちのめした安田記念
ありえない位置から差し届いてお釣りがあったスプリンターズS
包囲網を敷かれ万事休したと思われたところから瞬間移動した昨年のマイルCS
あきれるほどに大楽勝だったヴィクトリアマイル
中2週で新世代の挑戦を受けて立ち跳ね返したラストランのマイルCS

グランアレグリアが勝ったG1を振り返っていくとどれも凄まじいレースばかりで改めてこの馬の持っていた能力の高さを思い知らされる。

狭いところからきわどく迫ったシュネルマイスターも、毎回しぶとく食い下がるインディチャンプも、力を出し切り見ごたえのあるレースとなったが今回も勝ち馬に絞った形でレースをというかグランアレグリアを振り返りたい。

個人的に競馬をしている人は、ギャンブル好きと馬好きに分けられる思っている。もっと言えば馬(やそれにまつわるドラマ)が好きか否かと言っていい。ここでは便宜上、馬が好きな人を競馬ファンと呼び観戦記を続けていきたい。

恐らく多くの競馬ファンはグランアレグリアが天涯孤独な少女であったことを知っているだろう。
わずか2頭の産駒しか残せなかった母タピッツフライは2018年にこの世を去り唯一の兄弟であった一つ下の弟ブルトガングは2019年に姉と共通の父であるディープインパクトとほぼ時を同じくして天に召されている。
こうして当時まだ3歳であったグランアレグリアはすべての親と兄弟を失った。

その頃すでに桜花賞を制して名を挙げていた同馬ではあるが
直近のレースであったNHKマイルカップでは直線斜行による降着処分を受けるなど大味な部分も垣間見えていた。
前年の朝日杯で牡馬に交じって人気を集めながら完敗という形で3着に敗れたレースの印象もあまりよくはなく
素質は高いが粗削り、という見方をする競馬ファンも多かっただろう。
私もその一人である、また前述の通り血を残すことに普通以上の価値がある状態でもあり、私はあまり現役生活に拘らなくてもよいのではとも思っていた。母タピッツフライはその父タピットの産駒にしては珍しい芝適性の高い馬であり、それもまた血統価値を高めていたという背景もあった。

しかし、未完成であった少女はその後2年半もの間大きな怪我(決してのど鳴りを軽く言うつもりはないが)もなく現役生活を続けた。
いろんな意味でお茶を濁すかのようになんとなく出走したようにすら見えた阪神カップを除けば走ったのはすべてG1であり、終わってみれば6つものG1タイトルを引っ提げて現役生活に幕を下ろすこととなった。

結局その生涯を通して掲示板を外すことは一度もなく、馬券外になったのも前述の通り大きな不利のあったマイルカップと初の2000に重い馬場と条件が極めて厳しかった大阪杯(4着)のみという素晴らしい競争生活だった。

3歳の時点ですでに引退でもいいのではと思っていた私の考えは
逞しく走りぬいた彼女自身と、それを献身的にしかし情熱的に支え続けた陣営によって非常で浅はかであったことが証明されてしまった。

でも、きっと陣営も綱渡りだったのだろうと感じる部分もある。
同馬の同期牝馬にはクロノジェネシスやラヴズオンリーユーがいる。
いずれもグランアレグリアに負けずとも劣らない名馬だが実績的にはグランアレグリアに一日の長があるか、少なくとも負けてはいないだろう。
それでもライバルたちが海外挑戦を続ける中グランアレグリアは国内にとどまり続けた。もちろん怪我が怖くて海外に行かなかったと決めつけるつもりは毛頭ないし個人的には海外に行くことが必ずしも素晴らしいとも思っていない。ただ、これだけ国内で実績を積んだ馬に藤沢厩舎×サンデーRなら遠征していたほうが自然な気もする。いずれにせよ陣営は競争能力を最大限発揮させることと、無事に牧場に送り返すこと、という両立が極めて難しい事柄を天秤にかけ続けた。そしてその均衡を保ち続けたままグランアレグリアはターフを去ることとなった。

アーモンドアイを倒した時に、大きく顔を腫らした池添騎手を大きな万歳と共に大興奮で迎えた師も今回は冷静にレースを見届けていた。
あるいは、喜びよりも安堵のほうが大きかったのだろうか。

早ければ1年半ほどで産駒が誕生し、3年半ほどで産駒がデビューする。その時はグランアレグリアに包まれますように。

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