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市立小樽文学館「ゲームの本」展 ゲームの本はゲームの歴史書である

久しぶりに小樽の市立小樽文学館へ行ってきた。
目的は企画展「ゲームの本」である。

会期中には展示の入れ替えが行われて三回内容が変わるが、運悪く期間がコロナ禍ということもあり、訪れることができたのは第三期の終了直前であった。
文学館で「ゲームの本」を扱うというのも大変珍しいケースである。せっかくの珍しい機会だから。春休み期間中に全国からたくさんの人に足を運んで欲しかったが、コロナ禍なので来場者が思ったよりも少なく感じたのは残念でならない(もっとも、密になっても困るが)。
内容は大変充実してとても面白かった。各社から発売されたゲーム雑誌の創刊号やバックナンバー、攻略本の展示など、よくぞここまで集めた!と感嘆してしまった。

ゲーム雑誌とはゲーム史の歴史そのものだ

1980年代前半には,『ログイン』(アスキー)、『テクノポリス』(徳間書店)、『コンプティーク』(角川書店)、『電撃といったパソコンゲーム誌が創刊され、コンピュータゲーム総合誌『Beep!』が登場した。その後は、ファミコンブームと共に、ファミコン雑誌と各種ゲームの攻略本が続々と誕生して隆盛を極めた。

アスキー系(『ファミコン通信』のちの『ファミ通』)、徳間書店系の『ファミリーコンピューターmagazine』、角川系(現KADOKAWA)の『マル勝ファミコン』、メディアワークスの『電撃プレイステーション』やJICC出版局(現宝島社)の『ファミリーコンピューター必勝本』など、実に様々だ。

時代が進み、PCエンジン、ゲームボーイ、スーパーファミコン、プレイステーションのように新しいハードが誕生すると、ハードの名前を冠にした新しいゲーム雑誌が創刊され、ますます細分化、多様化されていく。また出版社の統廃合、合併、お家騒動などによって、雑誌が休刊したり、名前が変わってリニューアルするなど、雑誌の系譜は目まいがするほど複雑きわまりない。

2000年代以降になると、インターネットの台頭と共にゲーム雑誌は徐々に規模を縮小し、現在はオンラインでの攻略サイトがメインになっている。今となっては、ゲームで躓いたら、スマホで検索して攻略方法を参照したり、Youtubeのゲーム動画を見てプレイの参考にするなど、攻略方法も大きく変容してしまった。それでも『週刊ファミ通』のように現在でも発売が続いている雑誌があるのはすごいことである。ゲーム雑誌とはゲーム史の記述そのものなのだ。

よみがえるゲーム雑誌と攻略本の懐かしい思い出

展示を見ると、「ああこれ持っている~♪」という「再会」もあれば、同じゲームでも複数の出版社から攻略本が出ているのもあり、こんなにも膨大なゲーム関連の本が制作されていたのだ、という発見と、当時の懐かしい思い出がよみがえってきた。

ファミコンやスーパーファミコンがハードの全盛期の頃は、ゲームの攻略方法を知る手段は、雑誌や書籍を頼りにするか、あるいはゲームの上手な友達のプレイを見たり、情報を交換するしかなかった。また、攻略本にしても、少し古いゲームとなると書店に置かれていることもまれだったので、わざわざ店員さんに声をかけて、出版社の目録などで調べてもらって注文し、入荷後に自宅に書店から連絡が来て再び来店、という手続きを踏まなければならなかった。そもそも、攻略本抜きにクリアできるような、やさしい難易度のゲームは実に少なかった。ドラゴンクエスト2のような、シリーズ屈指の難易度を誇るゲームは、自力だけでクリアするのはほぼ不可能に近い。ゲーム攻略本や雑誌が流行するのは必然の成り行きであったといえる。

今のようにAmazonで気軽に注文する事ができるのは便利きわまりない。だからこそ、子どもの頃にわざわざ親に頼んで一緒に紀伊國屋書店でゲーム攻略本を注文して買ってもらったことは、かけがえのない思い出として心に残っている。

中学時代には、隔週で刊行されていた『Theスーパーファミコン』を欠かさず買っていた時期があった。大作のゲームが発売されたり、特集が面白そうな時は、『ファミ通』もよく購入した。高校時代は、バス停近くの書店でゲーム雑誌を立ち読みするのが楽しみだった。プレイステーションゼイ席になると、『電撃プレイステーション』の方に購入がシフトした。
こうして購入してきた雑誌が場所を占拠したため、やむを得ず。面白い記事だけ切り抜いてファイリングし、今でもとってある。今読み返すと、すぎやまこういちや堀井雄二のロングインタビュー、クソゲーとよばれるゲームの攻略記事が収録されていたり、小野不由美が連載していたコラムに著者の顔出し写真が載るなど、今となっては貴重極まりない内容がこれでもかというくらい掲載されている。永久保存確定だ。

ゲーム雑誌と攻略本はゲームの歴史書である

ゲーム雑誌と攻略本は、所有者の人生の一部を成している。ゲーム雑誌と攻略本は、ゲーム史と併走する歴史の貴重な証言だ。ゲーム雑誌と攻略本を抜きにしてゲーム史を語ることはできない。ゲームに関して、制作者やクリエイター、ゲーマー、メーカー担当者の生の声がこれほど反映されたメディアは、他にないからだ。展示の協力に名を連ねている立命館大学ではゲームの研究が行われている。文学のように、ゲームもまた日本独自の文化として、アカデミックレベルでもっと研究がなされるべきであろう。

市立小樽文学館では、またゲーム関連の企画を期待したい。

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