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入院費減らしたくて病院食減らせないか考えた癌治療記【高額療養費制度限度額引き上げ反対の話】


単刀直入に。私は高額療養費制度の限度額引き上げに反対します。

高額療養費制度の自己負担限度額の引き上げについて、政府は2025年8月から段階的に実施する方針を決定しました。

私は、自分の目を、耳を疑った。
なぜなら、これが現役世代の保険料の負担を抑えるためとのことだったからだ。本当に負担減になるのか?26歳で癌を経験した私には、負担増にしか感じられなかったからだ。

あまりに現役世代の癌治療における解像度が低すぎるのではないかと懸念するので、改めて私の癌治療の金銭面のリアルを残しておこうと思う。
これは、私がかわいそうな話でも、ただの治療記録でもない。

私たちAYA世代(注1)のがん患者のリアルを知らずに、知ろうとせずに、もしくは知った上で「今後は命の選別をしてください」とでも言うかのような方針を示している国会に向けての文字での叫びである。

私ひとりの小さい声かもしれないが、大きな意思表示である。一つ一つの声が積み重なることで社会は動くと、私は誰よりも信じているから。一人でも多くの人に読んでほしい。拡散してほしい。
(注1)AYA(アヤと読みます)世代とは、Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人)のことをいい、15歳から39歳の患者さんがあてはまります。小児に好発するがんと成人に好発するがんがともに発症する可能性がある年代であり、肉腫など、AYA世代に多い特徴的ながんも存在します。

00|高額療養費制度の自己負担額の引き上げ計画

高額療養費制度の自己負担限度額の引き上げについては、政府が2025年8月から段階的に実施する方針を決定し、2024年12月に発表された。
この方針は、2025年度予算案に盛り込まれ、同年1月24日に開会された国会で審議が行われている。現時点では最終的な確定には至っておらず、国会での審議と承認を経て正式に決定される予定。
引き上げの理由として挙げられているものは大きく3つ(私が読み取ったもの)
高齢化の進展と医療費の増加:高齢化や医療の高度化、高額薬剤の普及により、高額療養費の総額が年々増加していること
保険料負担の増大:高額療養費の増加に伴い、現役世代を中心とした保険料負担が増加していること
経済環境の変化:過去10年間で物価や賃金が上昇しており、自己負担限度額の実質的な価値が低下していること

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001384399.pdf?utm_source=chatgpt.com

「うん、うん。たしかに」という気持ちではあります。
上記で大きく反論していますが、策を講じる必要があると言うことについては同様の認識です。
私の論点は、もっと熟考すべき要素があるのではないかと言うところです。特に、本計画は「現役世代の保険料負担を軽減すること」を掲げています。
これは非常に良い視点だと思います、確かに「保険料高いよね〜」という言葉は28歳女性の日常では頻繁に友人らとの会話の中で登場するので。
一方で、限度額を引き上げることが、この負担を軽減しようとする現役世代の負担を、実質的には引き上げるのでは?と思うわけです。
特にAYA世代のがん患者にとってどれだけ大きな影響を与えるか、国会議員の皆さまはどれだけ議論なさったのでしょうか?どれだけ当事者へのヒアリングしたのでしょうか?甚だ疑問です。特にAYA世代は大きな影響を受けてしまいます。それは金銭的にも、社会的にも、将来的にもです。私は26歳で癌になりましたが、もしも当時限度額が高かったらどうだったかと想像しただけでゾッとします。

01|癌患者が感じている癌治療のリアル

「今は癌も働きながら治療できる時代です!」
よくがん保険の売り文句で耳にするようなワードですね。
これ、全ての人に当てはまるとは限らないこと、知っておいてほしいんです。私は、完全入院治療でした(完全入院治療という表現が医学的にあっているかはわかりません・・)通院治療は不可、入院でしか治療ができない治療でした。
結果、私は約1年間仕事を休み、傷病手当をいただいて生活していました。
傷病手当はおおよそ給与の3分の2の額が支給されます。
約10万の支給額に対し、月々の治療費は10万を割ることはなく、大体13万ほどでした(入院中の病院食代も含まれます)。

どうですか?何もしなくても、毎月赤字なんです。
貯金も使いきったし、両親にも祖父母にも頼りました。
入院中の支出をいかに減らそうかと考える日々でした。
私はテレビカードも一回も買わなかったし、冷蔵庫も使いませんでした。(基本的にどちらも有料)
なんなら、病院食も回数減らせないかな、そしたら入院費少しでも減るのにな。とかそんなことばっかり考えていたんです。

冷蔵庫なんか本当に使いたかった。冷たい飲み物飲みたかったし、外で買ってきてもらったご飯も保管できたのに。(冷蔵庫ないからできない、私は無菌室にいたので、入院中院内のコンビニに行くことはできないので、看護助手さんが時間がある時にはお願いして行ってもらうことができますが毎日は無理だった、忙しいからね、みんな。)
自分でお金をプラスして何かするのは全部諦めた。病院食減らせたら節約できるのになんて、病気治しに来てるのに本当に本末転倒な考えですよね。それくらいお金に切羽詰まってた。(私はがん保険にも入っていなかったし、自分で保険かけていなかったのもあります。みんなは本当がん保険は入った方がいい!私はもう入れないや・・)。

その上、私は妊孕性温存療法(ニンヨウセイオンゾン)という、癌治療(主に抗がん剤)で妊娠機能が落ちてしまう前に少しでも健康な卵子や組織をとっておこうという治療しています。
これをやるかどうか判断を迫られた時、私の頭の中の8割はお金のことでした。それくらいしんどかったです、金銭的に。
この治療は私の場合、約80万かかりました。これは自費です。病気じゃないので自費らしいです、抗がん剤のせいなのに自費なの、医療従事者でない私には不思議ですが、この話は本題からずれるのでやめます。(ちなみに、半分は国と県の助成金が出ます。)
この金額、26歳のがん治療をしていて仕事をできない若者には大きすぎます。しかも、これは抗がん剤治療の合間でやるので、まだまだ治療は続く。これからも癌の治療費も必要。でも妊孕性温存も必要。
悩んだ挙句、将来のことを思ってと治療をすることにしましたが、今でも、この40万本当にやって意味あったのかなと思うこともあります。
それに、半年も入院すると、本当に驚くほど体力も落ちています。免疫だって本調子ではありません。私の場合は治療後ご約半年間は免疫は人の半分ほどでした(私の治療の場合、これはすごく早い方です)。たった15分でさえ、続けて歩くことができませんでした。これには本当に驚いたし、悲しくなりました。家から1.5kmのローソンにさえ、休憩なしではいけなかったの。バス停ごとに座って休んで、そうじゃないと無理だった。帰り道泣いた。いけるだろと安易に思った自分を恨んだりもした。それくらい治療の後体力は落ちているんです。びっくりでしょ?休めるならもっと休みたいと思っている患者さんはたくさんいるはず。それでも会社に迷惑をかけないように、そして、収入や治療費が不安で頑張って頑張って仕事に復帰しているのです。「最近のがん治療は働きながらできる!」なんて嘘です。「最近のがん治療は、無理をして頑張れば働きながらできる!」です。間違えないで。

02|まとめ

限度額が引き上げられた場合、この赤字額の幅がより大きくなります。
私は当時20代で、今も20代なので、この世代に限った話をしますが、20代後半って本当にたくさんのこれからの可能性を考えなければいけない時期なんです。私の同世代の闘病仲間にはたくさんの人がいます。5年間入退院を繰り返し治療をしている人。がん治療後に結婚し出産したが、また癌になってしまった人。体力や免疫がずっと戻らない中頑張って仕事を続けている人。本当にたくさんです。
・将来の妊娠出産のことも考えなければいけない。
・子どもも生まれたばかりで、まだまだ小さい、これからお金がかかるのに、自分の治療でこんなにお金使っていいのか。
なにかを決める時には必ずお金が伴うんです。(当たり前だけど。)
私たちはAYA世代はこれからの未来を生きていくためのことを、考え、判断していかなければならないんです。これからもずっと。
そんな時にお金の問題で治療を諦める。
諦めるまでいかなくても入院費を抑えたいので、少し効果の低いと言われる通院治療を選ぶ。そんなことが増えてしまわないか。私は本当に恐怖でたまりません。
私自身もまだ寛解2年も経っていない。まだまだ再発率が高い時期、いつ入院するかわからない。一度経験したからこそ、限度額が上がることの厳しさが目に見えてわかる。
何よりも、今治療中の仲間たち、彼ら彼女らが、未来に絶望する、なんてことがあってはいけない。
そして、未来ある若者が病気になった時、治療してまた元気に社会に復活できるそんな社会になってほしい。

03|署名のお願い

だからこうやって、拙い文章だけど記録を残すことにしました。
少しでも、共感してくださった方は、ぜひこちらから署名をお願いしたいです。もちろん危険なサイトでも変な署名でもないです。緊急署名の呼びかけ団体は、【全国がん患者団体連合会(全がん連)、日本難病・疾病団体協議会(JPA)、慢性骨髄性白血病患者・家族の会いずみの会】という癌患者団体です。私も始まってすぐに署名しました。そして今、着実にこの声が届き始めています。

私以外の他のがん患者の切実な声も見てほしい。これまじで見て、、。

みんなと一緒に、今一度この制度と向き合いたいんです。
どうか、お願いします。

マコト

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マコト|癌サバイバーでジェラート職人で市議会議員
先まわりしてここでもお礼述べておきます。ありがとう。Grazie mille!!