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上場か未上場か考える

公認会計士の三浦真です。

お仕事で、上場を目指す会社のショートレビュー、上場準備会社のご支援、上場会社の監査をしています。公認会計士のお客様は会社。上場か未上場かの問いは、身近なものです。

上場するか、未上場のままでいるか、この問いは、経営者にとって、戦略的な判断が必要なものです。

会社にとって長期的に影響があり、かつ、金額的に重要な判断ですので、これは経営者が考えるべき、経営判断事項となります。

至る所で発信していますが、従業員がいる場合、会社にとって従業員の幸せが非常に大切です(従業員が、顧客を幸せにするから)。

上場か未上場か、この問いは、従業員の幸せにも、大きな影響を与える問題と考えます。役員間で、よく検討しましょう。

上場すれば、資金調達ができたり、会社の成長スピードは加速するかもしれませんが、その分、従業員が受けるプレッシャーが高まり、働き方などにも変化が生じます。一方、未上場のままであれば、経営の自由度が高まる、従業員のプレッシャーは一定程度に収まるという側面もあります。

日本経済新聞によると、2024年には、東京証券取引所(東証)で94社が上場廃止となり、総体として、上場企業数は初めて減少する見通し、とのことです。

上場のデメリットも多く感じていたので、納得感があります。2013年以降で最多の上場廃止数であり、企業が「上場の意味」を再評価している兆しともいえます。

フェーズによって、上場が企業の目標のように語られることもありますが、上場が、従業員の幸せにつながるかどうかは、全く別の問題です。

上場が従業員の幸せを高める側面もあり、上場準備を進める上で、メリット、デメリットを考え経営判断することが求められます。

上場する企業が減少する背景

2024年に上場廃止を決断した企業は94社にのぼり、前年よりも33社(54%)増加したようです。
上場していると中長期的な施策が実行しづらい」と判断し、非公開化を選んだ企業があります。

この背景には、東証が2025年に市場再編の経過措置を終了し、時価総額の基準が厳しくなることも影響しているようです。

東証プライムやスタンダード市場に残り続けるためには、一定の時価総額を維持する必要があり、株価を気にし続ける経営が求められるのです。株価を高めることが、中長期な施策の実行の足枷になるとは、悲しい話です。

株価を意識する経営は、従業員にどのような影響を与えるでしょうか?

上場か未上場か、従業員の幸せをどう考えるか

1. 従業員の働き方に与える影響

上場企業の従業員は株価を意識した働き方が求められることが増えます。

例えば、営業では「短期的な利益を上げるための行動」が求められるようになりますし、企画でも「今すぐ収益化できる施策を優先する」必要が出てきます。

一方、未上場の企業では、中長期的な事業戦略に基づいた計画的な取り組みが行いやすく、従業員が『未来をつくる仕事』を実感しやすい傾向があるんだと、推測します。

企業が将来の成長に投資する余裕があれば、教育投資や新規事業開発にも従業員を巻き込みやすいのかもしれません。

2. 経営の自由度が高まると、従業員の裁量も増える

上場企業は、未上場企業に比べて、株主の意向を重視する必要があります。

株主は短期的な利益を求めることが多い(株価が上がれば売却益が得られる等)ため、中長期的な投資が、後回しになるケースが少なくありません。

これにより、企業は経費削減やリストラを優先せざるを得なくなり、従業員の仕事の自由度が減少することもあり得ます。

一方、未上場の企業では、経営者の判断で中長期的な戦略を進めやすいため、従業員の利益を考えた施策も打ちやすいです。

上場企業の株主はいつでも辞められますが、従業員は生活もあるため辞められない方が多い。

上場企業で従業員を大切にしているところも当然ありますが、株主を重視する上場企業は短期利益、従業員を重視する未上場企業は中長期利益を追求できる、とも言えると考えます。

資金調達の多様化が選択肢を広げる

かつては、多額の資金調達には上場が必須と言われていましたが、今は状況が異なると感じます。そういった事情も、上場か未上場かの判断に影響します。

ベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティファンド(PEファンド)が、出資先を拡大しており、クラウドファンディングも資金調達手段の一つとして定着しています。これにより、企業は上場しなくても必要な資金を調達できる環境が整っています。

私が公認会計士試験を受験していた頃、「上場はゴール」という雰囲気がありましたが、今は時代が変わりました。未上場のままで大きな資金を得る選択肢も現実的なものとなっています。

上場廃止の事例に学ぶ「従業員の幸せ」

上場していると、株主からのプレッシャーにさらされ、短期的な利益追求が求められるため、中長期的な改革や投資が遅れるという問題があるようです。

未上場化すれば、短期的な利益のためのリストラが不要になるため、従業員の安心感が増すという側面もあります。

まとめ

「上場か未上場か」という選択は、従業員の幸せに関連する問題です。

経営者のみなさん、上場する場合、未上場の時と比べて、より従業員を幸せにできるか、という問いを立ててください。

幸せにできると確信できるのであれば、上場のまま行きましょう、若しくは、上場しましょう。

あなたの会社は、どちらが従業員の幸せに近いでしょうか?

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