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経営に必要な微分と積分

公認会計士の三浦真です。

私は経営顧問として経営者様をお支えする仕事をしています。

日々の意思決定をご支援する中で「微分」と「積分」の考え方が、重要であることを感じます。

これらは数学の概念ですが、経営における課題解決や、戦略立案に通じる視点として活用できます。

本日は、「微分」と「積分」という数学的アプローチを経営の文脈に当てはめ、それぞれの役割と重要性を解説します。

特に、微分的思考で瞬間の変化を捉え、積分的思考で全体像を推測することが、いかに経営判断に重要か検討します。

賢い経営者になるためには、「微分」と「積分」の力が必要ですが、良い仲間に恵まれ、意識さえすれば、そこまで難しいことではなりません。

微分:社会の変化に注目する力

微分は、一瞬の変化や傾向を理解するための手法です。経営においては、大きな情報や変化を細分化し、自社に影響を与える「最重要な1点」を見つけ出す力として捉えることができます。

社会の大きな変化を微分する

例えば、次のようなニュースがあります:

  • 来年アメリカでトランプ氏が大統領に就任するという報道。

  • 少子高齢化が進み、労働人口が減少している現実。

  • インバウンド観光客が増加している現象。

これらは大きな出来事ですが、すべてが自社に直接影響を与えるわけではありません。

経営者として重要なのは、このような情報を微分的に分析し、自社にとって意味のある「1点」を見極めることです。

例えば、少子高齢化は人材不足を生む可能性があります。この中で「どの職種の人材が不足しているのか」「競争環境がどう変わるのか」を考えるのが微分的アプローチです。

日本経済新聞をよく読んで、周りに、ディスカッションできる仲間を持ちましょう。
 
微分的思考がもたらす価値

微分的な視点を持つことで、膨大な情報の中から優先順位をつけやすくなります。

経営資源が限られている中では、この「瞬間的な変化を見抜く力」が競争優位を築く鍵になります。

積分:些細なことから全体像を描き出す力

積分は、小さな変化から全体像を描く力です。経営においては、日常の小さな出来事から大きな傾向を見出し、全社的な方向性を設定する力といえます。

会社内部の小さな変化を積分する

例えば、ある部署で社員のモチベーションが低下しているとします。

一見、局所的な問題に思えますが、これを放置すると、企業全体のパフォーマンスに悪影響を与えるかもしれません。

こういったことは、経営会議や取締役会での決議事項というより、討議事項で、話し合いたい内容です。

積分的思考では、この小さな変化を見逃さず、それが組織全体にどのような影響を与えるかを考えます。

例えば、「離職率が上がる」「新規プロジェクトが遅延する」などの影響を予測し、対応策を講じることが積分的アプローチです。

積分的思考がもたらす価値

積分的視点を持つことで、部分的な現象を全体の流れとして捉えることができます。これにより、短期的な対処だけでなく、長期的な戦略を立案する力が強化されます。

微分と積分の実践

微分的思考:外部環境の変化を捉える

ある飲食業の経営者が「インバウンド観光客の増加」というニュースを耳にしました。微分的思考を働かせ、このトレンドが自社にどのように影響するかを考えます。

例えば、観光客が訪れる地域の店舗において、「英語メニューが必要ではないか」「多言語対応スタッフを雇うべきか」などの具体的な改善点を導き出すことが、微分的なアプローチです。

積分的思考:内部環境の変化を捉える

同じ経営者が、店舗ごとの売上データを分析し、「一部の店舗で、売上が下がっている」という小さな兆候に気づきました。

積分的思考では、このデータをもとに全体の売上傾向を分析し、全社的な戦略を再考します。

例えば、「観光客の流入が減少しているのでは?」「競合他社のFC出店が影響しているのでは?」など、大きな視点で問題の本質を捉えるのが積分的アプローチです。

微分と積分をバランスよく

微分と積分のどちらか一方だけでは、適切な経営判断を下すのは難しいと考えます。

  • 微分的思考では、外部環境の大きな変化から、当社への影響、を考えます。

  • 積分的思考では、会社内部の一事象から、会社全体への影響、全社戦略への影響、を考えます。

この2つをバランスよく使い分けることで、経営の質が向上します。

経営者の成長に必要な「微分」と「積分」

経営は、不確実性と向き合う仕事です。

その中で、「微分」と「積分」の両方の思考を取り入れることで、より適切と考えられる、柔軟な意思決定が可能になります。

  • 社会の大きな変化から、自社に関係する重要なポイントを微分的に見極める力。

  • 日々の小さな変化を全社的な動きとして積分的に捉える力。

これらを磨くことで、一流の経営者に近づくことができる、と私は考えています。

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