会計監査から分かる、所得格差の拡大
公認会計士の三浦真です。
今回は、外資系子会社の会計監査について、私自身の経験、考えを交えながら、書きたいと思います。
先日、先輩会計士が担当する、12月決算法人の会計監査をお手伝いしました。
欧州資本の親会社を持つ、事業会社の任意監査に携わりました。
親会社監査役からのインストラクションを英文で受領して、監査報告書も英語で作成します。
海外監査人とのコミュニケーションは、かつて、私が監査法人トーマツで、海外Deloitteと協働していた経験が活きている、と感じます。
こうした外資系子会社監査の舞台裏や、そこから見えてくる日本の将来への懸念点について、いくつかの視点に分けて、書いてみます。
1. 外資系子会社監査の特徴
今回の外資系子会社監査では、親会社の監査役からインストラクションを受領し、それに従って監査報告書を提出するというプロセスを経ます。
お手伝いしている会社も、欧州に本拠を置くグループの日本法人であり、毎年、親会社から英文のインストラクションが送られ、それに沿った形で、任意監査を実施しています。
この会社には何回か関わらせて頂いておりますが、海外とのコミュニケーションはやりがいがある一方、言語や、会計基準の違いを踏まえた対応が求められるため、学びの多い現場だと感じています。
2. 英文インストラクションの重要性
英文インストラクションを正確に読み解くことは、外資系子会社の監査で重要です。
日本基準とは異なる視点が盛り込まれることもあり、グループ全体での整合性を保つため、確認を怠らないことが求められます。
今回も、先輩会計士と協力しながら、企業の財務情報やリスク評価を丁寧に検証しています。
仮に、インストラクション内容を誤解したまま作業を進めると整合性を損なうだけでなく、グループ全体の監査計画にも影響を及ぼしかねません。
「読み間違いをしない」という基本的なことを徹底するのが大前提です。
業務執行にあたり、こういったことは当たり前のことだと思いますが、非常に大事なことです。
3. 格差の現実、知ってますか
私が外資系子会社の監査に携わるとき、気になるのが、役員報酬の高さです。
日本経済新聞などでも取り上げられるように、外国人の役員の報酬水準は、高額になる傾向があります。
もちろん、専門性や実績、グローバル規模での責任範囲を考慮すれば、理解できる面もありますが、日本で採用される日本人の従業員との報酬格差が大きく開いている現状を目の当たりにすると、やはり、考えさせられます。
外国資本による企業誘致そのものは、日本経済へのプラス面が大きいのは、間違いありません。
しかし、報酬格差が拡大していくことによって、日本人の将来の給与水準はどうなるのかという不安が募ります。
10年後、20年後には、外資系企業は、より増えるでしょう。さらに格差が開き、相対的に、日本人の生活水準が下がってしまうのではないか、という懸念が消えません。
顕在化の兆しもありますが、将来、会社も不動産も、外資所有が増え、一部の日本人は植民地の労働者のようになることが、心配です。
4.格差拡大への懸念
また、私が心配しているのは国内における、人材育成やモチベーションへの影響です。
グローバル企業であれば、優秀な人材に高水準の報酬が支払われるのは自然な流れですが、その裏で日本国内の一般社員は取り残されないか。
その結果として、若い世代の人々がどうせ日本にいても報酬は上がらないと考え、海外に流出してしまう可能性もあります。
このような状況が続けば、日本企業全体の競争力低下につながりかねないという危機感を持っています。
監査をとおして多様な企業の実情を把握できる立場だからこそ、こうした問題を客観的に考え、警鐘を鳴らすことも、私の役割ではないかと思っています。
5. まとめ
外国人役員と、日本人社員との報酬格差が年々拡大していることについては、新聞等で、報道されている通りです。
監査現場でも、肌で感じます。
今後さらに日本が国際的な競争にさらされる中で、優秀な人材をどのように育成し、適切な報酬を提示していくのかは、日本企業の課題となるでしょう。
10年後、20年後の日本の経済や雇用の姿がどう変わっていくのか、未来を見据え、業務に取り組んでいきます。