東京大学が授業料値上げ:大学の価値について考える
公認会計士の三浦真です。
東京大学が20年ぶりに授業料を引き上げるというニュースを見ました。
東京大学経済学部を卒業した者として、この論点について考えました。日本の高等教育の未来を考えるうえで、重要なトピックだと考えます。
この決定は、国の補助金に依存せず自立した経営を目指し、グローバル競争力を強化する戦略の一環と理解しています。
同時に、どの企業にとっても、販売価格を決める、更新する際に、必ず商品の与える価値、見え方を考えますが、
この動きは、同様に大学の価値や存在意義について再考する契機でもあると考えます。
大学の価値と存在意義
大学の価値は、「いかに社会を幸せにできるか」「いかに学生を幸せにできるか」「いかに卒業生を幸せにできるか」によって決まる、と私は考えます。
これが大学の存在意義であり、多くの人を幸せにできる大学ほど、その価値は高まり、社会に必要とされ続けるのではないでしょうか。
東京大学の価値や存在意義を問う際には、「どれだけの人々の人生を豊かにしてきたか」を考えると腹落ちします。
社会課題を解決する学術研究や、社会に貢献する有為な人材の輩出によって、各人の心の中で、測定される、と考えます。
東京大学の卒業生が社会で認められ高い給与や生涯所得を得ているのは、大学での教育が彼らの価値を高めているからだと考えます。
だからこそ、高い授業料にも合理性があるのだと思います。
東大の現状と授業料引き上げの背景
現在、東京大学は欧米やアジアの主要大学に競争力で後れを取っています。
東大が全く努力してない、という訳ではなく、他の国には教育に国家戦略があり資金計画があり、PDCAが機能していたから、と推測します。
調べてみると、最新の世界大学ランキングでは28位にとどまり、教授給与の低さなども問題です。私が所属していた時は17位くらいでした。日本経済と同様に、右肩下りです。
真面目な日本人が虚心坦懐に考え、計画し、実行できれば、間違いなく、改善できると私は考えていますので、今後、ランキングは上がって行くでしょう。
早速、藤井輝夫学長は財務体質の強化を進め、授業料の引き上げや財源の多様化に踏み切りました。
授業料引き上げによる収益増は13億円程度と限定的ですが、これは長期的に見ると貴重な財源となります。
また、世帯収入600万円以下の学生への授業料免除拡大など、経済的な支援策が併せて導入されるため、
私のような幼少時に「経済的に厳しい環境でも東大で学べる」という伝統は維持できると期待しています。
社会課題解決と多様性の推進
東大の存在意義を高めるには、社会課題を解決する学術研究と、社会に貢献する有為な人材の輩出が不可欠です。
日本の課題は多岐に渡ります。経営顧問として、課題の解決の反対側に売上がある(お客様の課題を解決する会社に売上が発生する)と、顧問先様に助言しておりますが、大学も同様です。少子高齢化、財政赤字、介護問題、食料自給率、外国籍の方を受け入れる際の社会的軋轢、などなど、周りを見渡せば、社会的課題ばかりです。
これらの課題について、日本の歴史研究から解決策を見出す、他国の取り組みを整理して解決の一助とする、実験を繰り返し新技術を見つけるなど、課題解決の糸口は、大学に、たくさんあると考えます。
また、生成AIの活用や国際化、多様性の推進といった新たな取り組みなどにも期待しています。
2027年に予定されている「カレッジ・オブ・デザイン」の設立は良い取り組みであり、全授業を英語で行い、グローバルな学生を受け入れることで、国際的な学びの場を広げるそうで、とても期待してしまいます。
公認会計士として見る大学経営
大学の財務マネジメントは、単に収支を合わせるだけではなく、その収益がいかに社会に還元されるかを説明する責任があります。
東京大学には、授業料引き上げや寄付金の活用を通じて、社会にどれほどの幸せを生み出すかを具体的に示す義務があります。
東大が設置した最高財務責任者(CFO)の役割は重要です。
独自基金の運用益を増やし、自主的に資金を調達・運用できるモデルを構築することが、これからの大学経営には必要です。裁量のある財源を確保し、社会課題の解決や高度な人材育成に資金を投入することで、東大の存在意義がさらに高まるでしょう。
東京大学の未来と高等教育の方向性
東京大学が進める自立した経営と価値創造は、日本の他の大学や教育界全体にも波及する可能性があります。日本を支える高度な人材を育成するためには、多様な学生を受け入れ、国際的な学びを提供することが重要です。
東大の新たな挑戦は、「大学とは何か」「大学がいかに人々を幸せにするか」という問いに答えようとするものではないかと考えます。
その成功が、日本の高等教育全体の未来を照らす指針となることを期待しています。
私自身が卒業生として、寄付金を出したり、自身が経営者教育に尽力して社会に貢献したり、その動きをサポートしていきたいと考えます。