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#23 HER NAME IN BLOOD 4th ALBUM “POWER”リリース3周年 制作裏話、セルフ楽曲レビュー
こんにちは!
今日は、2018年4月4日にリリースされた、"POWER"というアルバムの発売3周年ということで色々振り返っていこうと思います。
過去の作品について、制作秘話や裏話などを綴ったものが他にもあるので是非一読ください。
DECADENCE (1st Album)
THE BEAST EP (2nd EP)
POWER
11曲入り、2018年4月4日にWARNER MUSIC JAPANよりリリース。
前回と前々回にnoteに載せた作品よりだいぶリリース時期が離れているので、何が起きたかまとめてみると
・通算4枚目のフルアルバム
・メジャーデビュー後2枚目のアルバム
・ドラム"MAKI"加入初のフルアルバム
この3つのタイムラインで作られた作品です。
制作背景①ドラム"MAKI"加入
結成時からドラムを務めていたUMEBOが2016年末に脱退。
バンドは2017年4月まで活動休止を経て、再開と同時に"MAKI"の加入を発表しました。
同年5月に"FROM THE ASHES"というEPを発表し、バンドの作曲体勢も整いこのアルバム"POWER"の制作へと向かいます。
この"FROM THE ASHES"についてはのちにnoteでも触れようと思います。
制作背景②衝撃のアー写
各方面より、色々なリアクションをいただいたアー写(アーティスト写真)
一番多かった反応は、「マジで、やってる音楽が想像できない!」でした!笑
このアーティスト写真のテーマは大きく分けて3つあり
・誰もやっていないことをやる
・各メンバーのルーツを見た目に反映させる
・筋肉
という無茶苦茶なてんこ盛りの情報量なのです。
写真左から
MAKOTO (BASS)
TJ (GUITAR)
IKEPY (VOCAL)
DAIKI (GUITAR)
MAKI (GUITAR)
後日談として打ち明けると、IKEPYの後ろから出ている湯気というか闘気は、合成ではなくドライアイスの冷気を使っています。
そして各自とっているポーズは、実在する筋トレのメニューをなぞっています。
綺麗な形の冷気が出るタイミングに合わせるために、各自が設定した筋トレのポーズをキープしなくてはならないという、ある意味トレーニングのような撮影だったことを記憶しています・・・笑
各自のルーツを反映させるというところでは、各々の音楽的なものや、好きなカルチャーを見た目にも直接的に表してみようというアイディアでした。
どのメンバーがどんなものを好きか、ぜひ想像してみてください!
制作背景③メジャー2枚目のフルアルバム
インディー以降と大きく変わったところでは、まず制作のスケジュールがより明確になりました。
音源をリリースをするだけでなく、それを展開してどういった活動をしていくか考え、作品を創ること。
そしてそれを経て次にどういった動きをバンドとしてするか、など、以前より絵を大きく描くような考え方をする必要がありました。
具体的にいうと、作品をリリースしたらツアーをどういった時期や内容で行い、ファイナルを迎えた以後どういった規模まで広げ、バンドとしてどういった存在で在るのか、などなど。
なのでリリースの時期を明確に定めると、逆算してさらにスケジュールは週刻み、タイミング的には日にちで刻むこともあり、並行してライブ活動も行っていたので非常にタイトでした。
日付が変わる前にベッドに入れた日のほうが少なかったんじゃないかな・・・
結成以来、最も難産だった作品ともいえるでしょう。
制作背景④バンド結成史上、最も難産だった作品
リリース計画として、2017年に"FROM THE ASHES"をリリースしてツアーを行い、翌年である2018年にアルバムをリリースする予定は既に決まっていました。
なので前もって準備ができていればよかったのですが、作品の全体像や、そもそもに
「HER NAME IN BLOODとして今やりたい音楽とは?」
というところで5人集まれば5人が悩み、正直いってこの作品はかなり難産でした。
制作期間、半年強
移動中やリハ後、楽しみにしている地方ラーメン廻りも見送り、観光もせずデモを聞き意見をし合い、それを踏まえてまた新しいデモを作り・・・
突破口となったのは、"POWER"のデモが仕上がったことだと思います。
のちの各曲レビューにも記していきますが、今まで以上にシンプルに削ぎ落とした楽曲ができたことで、やるべきことが明確になったタイミングでした。
そして、核となるその楽曲を踏まえて、このバンドの特徴である、容姿や楽曲の力強さ、そして同期音源に頼らず人力で楽曲を再現する人間力というところから、"POWER"という楽曲タイトル、そしてアルバムタイトルを冠しました。
制作背景⑤世界の松金さん (MEGA HYPER STUDIO)
メジャーデビュー以降、一貫してレコーディングをお願いしている
松金 昭治 氏
彼は東京都狛江市にあるMEGA HYPER STUDIOの所属で、
かつてレーベルメイトだったARTEMAや、NAMBA69、KEN YOKOYAMA、Hi-STANDARDのレコーディング・エンジニアとしても活躍されています。
バンドの鳴らす人間的なグルーブを大切にし、空気感のあるテイクを逃さない手法で、HER NAME IN BLOODのプレイを成長させてくれた人物です。
このアルバムでは、数曲のミックスもお願いしています。
制作背景⑥ZACK CERVINI
POWERを含めたこのアルバムの数曲は、アメリカのプロデューサー"ZACK CERVINI"のミックスとアレンジを経ています。
最近だとARCHITECTSやBRING ME THE HORIZON、ALL TIME LOWやMACHINE GUN KELLYなどのプロデュースで有名ですね。
このPOWERを制作したちょっと前の時期では、BLINK 182のアルバムも手掛けていたので、筆者としては一緒に仕事をできて興奮しました。
制作背景⑦TOM LORD-ALGE
U2やAVRIL LAVIGNE、MARILYN MANSON等、説明不要の、世界のプロデューサーである"TOM LORD-ALGE"ですが、メジャーデビュー最初のアルバムの"BAKEMONO"の数曲をミックスというかたちで携わってもらいました。
そして、今作"POWER"の数曲でもミックスをお願いしています。
高級感のある、けど生々しさや迫力のあるビッグな音作りで協力していただきました。
制作背景⑧アルバムジャケット
アルバムジャケットは、FATRAT1976というアーティストにお願いしました。
バイカー・カルチャーを中心に、コミカルでキャッチーな作風が特徴です。
ジャケットを見ての通り、ボーカルIKEPYがモチーフのホネホネマンが筋トレして"POWER"をつけている様子を描いてもらいました。
CDのほうは、背面カバーや中ジャケットなどもかなり描き込んでもらっているので、是非現物を手に取ってみてください!
ちなみにCDの帯のキャッチコピーは「聴くプロテイン」というパワーワードが記されています・・・笑
①POWER
「POWER"というアルバムなんだから、"POWER"で始まらなきゃ」
というベタベタな理由でファースト・トラックに選びました。
そしてもちろんMVにも。
アルバムジャケットとリンクする内容になっています。
ギターDAIKI作曲。
自然すぎてあまり気付いてくれる人が少なかったんですが、
実はこの曲、IKEPYがほとんどスクリームではなくクリーンで歌っているんです。
楽曲もリフと歌とギターソロ、という非常にシンプルな素材で構成されています。
一聴してこのバンドの雰囲気がわかる、ライブでも欠かせない楽曲となりました。
ギターソロ以降で、IKEPYと筆者がボーカルの掛け合いするところが楽しくてお気に入りです。
②DARK
これは非常に難産だった曲でした。
大まかなデモはギターのTJがもってきてくれて、DAIKIと筆者であれこれアレンジしました。
リズムパターンや、サビのメロディなど大まかに分けて、12バージョンくらい作った気がする・・・
シンプルだからこそ悩み、結果、どストレートなメタルになりました!
③KATANA
ギターDAIKI作曲
BAKEMONOに続き日本語タイトルを冠した楽曲
これは制作中期に作ったかな。
ダンサブルで楽しい雰囲気、構成もかなりシンプルです。
土台はアメリカン・アリーナロック的なところもありつつ、リフが切れ味がいいのが"KATANA"っぽい?とかいうところもありタイトルが先に決まり、
歌詞も刀にちなんだものになっています。
これもライブ代表曲。
中盤のギターソロはDAIKIとTJの掛け合いになっています。
④SAVIOR
筆者作曲。
リリック・ビデオになっています。
FATRAT1976さん描くホネホネキャラたちが筋トレする、コミカルでパワフルな内容。
楽曲背景としては、筆者のルーツのひとつでありバンド名の由来になった
アメリカの"STRUNG OUT"の音楽性が大きく影響しています。
歌詞も筆者が書きました。
日々生きる中で、聖者や救いの存在と信じるものは結局誰かが祭り立てた偶像でしかなくて、結局自身の中にこそ信じられるものはないのではないか?
そして自分で橋を焼いてこそ、本当の自身の中に信心が生まれるのではないか?
別にディープに捉える必要はないんだけど、そういう「自分を信じる力」も一つの"POWER"なのかなと思い書きました。
⑤MASK
ギターDAIKI作曲のショートチューン
実はレコーディング前日にようやく仕上がりました。
DAIKIが死にそうな顔でもってきてくれたのが今でも忘れられないです・・・笑
"MASK, MASK, PUT ON YOUR MASK
MASK, MASK, HIDE IN YOUR MASK"
というシンガロングがアツいですよね。
MAKIのドラムもかなりの手数で攻めています。
歌詞は筆者がかきました。
内容は、人の不幸や争いをエサに生きている卑怯者たちへ向けています。
筆者はそういう人たちが「大嫌い」です。
⑥KINGSLAVE
これは筆者作曲です。
実は"FROM THE ASHES"をレコーディングした時期にはすでにデモがあったんだけど、作風的に合わず見送って、このタイミングでの登場となりました。
編曲や細かいアレンジはDAIKIに手伝ってもらいました。
作曲背景としては、ドライブ感のあるアメリカン・ハードロックを現代のアレンジや音で鳴らしたらどうなるか?という実験から始まりました。
なので、アメリカン・ハードロック・コアなんだと思います!笑
⑦IDENTICAL
土台のデモは筆者が作り、ギターDAIKIが編曲です。
確か、作ってきたデモをみんなに聞かせた時「これ、2曲に分けたほうがいいんじゃない?」という意見が発端になり生まれました。
制作後半になり、メタル・バラード的な曲が欲しいという話になり、そこからこういうアレンジなったと記憶しています。
中盤ちょっと入るDAIKIのブルージーなギターが実はお気に入り。
⑧CALLING
ギターDAIKI作曲
"FROM THE ASHES"にも収録されており、ミックスが違います。
音楽的な話になっちゃうんですが、珍しくサビで拍子が変わるんですよ。
そしてこれまた珍しく、筆者がメインメロディを歌っています。
構成的にもドラマティックで、歌詞も切ない楽曲です。
ライブの準定番。
⑨FALLEN
ギターTJ作曲、DAIKI編曲
これもDARKと同じく難産で、シンプルならではの難しさに悩まされました。
TJの作ってくるリフはDAIKIのものと一味違い、アメリカンロックからの影響が大きい、メロディックでザクザク感があるのが特徴です。
タッピング好きな筆者は中盤パートが気に入ってます。
⑩FORSAKEN
ギターDAIKI作曲
これが実はユニークなエピソードがあって、
なんとレコーディング中にアレンジが変わりました。
しかも、マイナーキーからメジャーキーへ。
DAIKIがもってきてくれたデモをアレンジし、ベースとドラムを録り終えて
ギターを重ねていくうちに、エンジニア松金さんと「なんかさ、別のメロディが頭の中でずっと鳴ってるんだよね、しかもメジャーキーで」
という会話が発端になり、急遽メインメロディを変えることに。
その名残は後半にある静けさのあるパートで、あそこだけマイナーキーへ戻り、メジャーキーへ転調するという面白い楽曲になりました。
シンプルながらもプログエッシブな展開で、これもライブ準定番の曲。
⑪SIMPLE THINGS
ギターTJ作曲、アレンジは筆者がやりました。
細かいギターアレンジはDAIKIがやってくれたかな。
これはかなり実験的な曲で、
制作後半で楽曲も出揃ってきたころに、「メジャーキーの曲にチャレンジしてみよう!」というアイディアが発端になりできたものです。
TJが作ってくれたコードとメロディを頼りに、
SKID ROWでいうI REMEMBER YOU、MR.BIGでいったらBE WITH YOU
アメリカン・ハードロックバンドが現代のアレンジでそういうメジャーキーの曲を作ったらどうなるか、をテーマにアレンジしました。
個人的にはメジャーキーの音楽の方が聞いてきた割合が多いので、楽しい時間でした。
あとがき
3年前のことながら、メンバー一丸となってこのアルバムを作ったことを昨日のことのように覚えています。
いい思い出も、苦しかったことも含めて。
簡単に新しい音楽を手に入れたり、興味がなければすぐ他のものに気持ちが移ってしまうことが当たり前な世の中ですが、
バンドという形態で音楽をやるとその人数だけ"人生の数"があり、そのタイミングが合わさって一つの作品が産まれたのは奇跡としかいいようがないのではないでしょうか?
消費する権利を各々が持ち、何を消費するかはそれぞれの自由ですが、
そこには背景があり想いがあり、それを知って楽しんでもらえたら
楽しみ方も思い入れも、そしてシンプルに豊かな気持ちになれるかな
と思って、この作品にまたスポットライトを当てる記事を書きました。
ぜひぜひ、たくさん聴いてあげてくださいね!
Makoto / Her Name In Blood.