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#22 HER NAME IN BLOOD 2nd EP “THE BEAST EP” 8周年 制作背景と振り返り

こんばんは!

今回は、HER NAME IN BLOODの音楽性のターニング・ポイントになった

"THE BEAST EP"という作品が、リリースから8周年を迎えます。

制作背景を振り返り、1曲ずつ解説していこうと思います。

前回は、HER NAME IN BLOODのデビュー・アルバムである"DECADENCE"についての記事を書きました。今回の"THE BEAST EP"つながる話題も出てくるので、是非一読お願いします。

THE BEAST EP

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6曲入り、2013年3月23日にTRIPLE VISION ENTERTAINMENTよりリリース。

ギターにTJを迎えてから初の作品であり、現在の音楽性へのターニングポイントとなった重要な作品です。

各配信サービスには掲載済みですが、メジャーデビューの際に再録を行った兼ね合いで生まれた著作権の問題で、次にリリースされた2nd Album "HER NAME IN BLOOD"とカップリングでの配信になっています。

3曲目の"GASOLINES"は2015年に再録リリースされた際に配信サービスからは除外

THE BEAST EPバージョンはこちらで聴けます。


メンバー編成

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まず、前回の写真が3年前というのもあり、メンバーの見た目が明らかに変化している!

IKEPYが髪を伸ばして本格的にトレーニングで身体を作ってきたのもあって、いかにも「この人がフロントマンです」と一目でわかるバンドになりました。

そして問題児、TJがギターとして正式加入。

写真左から

TJ : GUITAR

MAKOTO : BASS

IKEPY : VOCAL

UMEBO (現WORLD END MAN) : DRUM

DAIKI : GUITAR

制作背景① : 3年、単独リリースなし

DECADENCEを2010年3月にリリースし、そこからこの作品をリリースするのに3年を要した。

なぜその月日が必要だったのだろうか?

そう、「何も考えていなかった」のである。

同時期に出てきたバンドの活躍と成功を見て焦りはあった。

しかし、この頃の自分たちに「ビジネスとしての音楽活動」という部分よりも「自分たちの活動が多くの人たちに知られ、喜ばれている」という純粋な喜びや好奇心が勝っていたように思う。

ツアーに誘われれば損得勘定無しに出演し、シンプルに自分たちの曲を演奏してステージに立つのが好きだった。

制作背景② : レーベル移籍

そしてツアーに次ぐツアーを続け、2012年にはDECADENCEのリリースでお世話になったKEEP & WALK RECORDSへ別れを告げることに。

親身にバンドのことを考え行動してくれていた松尾さんへ、今でも感謝しています。

同年、音源制作業務とマネージメント業務を主とする、TRIPLE VISION ENTERTAINMENTと契約。

同年、初の海外ツアーを経験。(CROSSFAITHの東南アジアツアーに帯同)

制作背景③ : DAIKI作曲の変化

こういった2年以上同じ楽曲を演奏した自分たちは、「HNIBの音楽はもっと多くの人に届くべきである!」という考えを持ち始めていた。

そしてDECADENCEの楽曲は、自分たちが思っている以上に初見の人にとっては「複雑・難解」であることにようやく気付く。

それを踏まえ、HNIBの音楽の「」を捉え、よりシンプルに削ぎ落とした楽曲を作ろうという考えに至った。

レーベル移籍と同時に、HNIBは初のカバー楽曲をレコーディング。

当時、世を席巻していた"LADY GAGA"のPOKER FACEのカバー。

このレコーディングの経験は大きく、各パートの聞かせどころや楽曲の構成の仕方などを見つめ直すいい機会だったように思う。

それを経て、当時DAIKIがドキドキしながら「思い切ってシンプルな曲を書いてきたから聴いてみて!」と聞かせてくれたデモ。

"メタルとか、スケートパンクと、好きな要素をうまく混ぜたみた"と。

仮タイトルはそのまま、"メタルスケボー"

のちの"WE REFUSE"となる曲であった。

このデモや楽曲への考え方の変化がとっかかりとなり、バンドは収録曲の制作を始める。

(一曲ごとの詳細な解説は、のちの項目で記しています)

制作背景④ : 原宿ATTIC STUDIO

いよいよリリース時期を見定め、レコーディングスタジオに入ることになった。

録音エンジニアは、前回と同様に山中大平氏(CLEAVE)にお願いした。

この作品から彼は自身のスタジオであるATTIC STUDIOを原宿にオープンし、そこへ拠点を移してこの作品も録音しました。

彼の録音スタイルは独特。

バンドに寄り添って楽曲の理解を深め、自身のバンド経験を通したアドバイスやプロデュースをくれる愛のある制作。

切磋琢磨し、ときに爆笑しながらこの時期を過ごした。

(いざ終わってみたら楽しい思い出の方は色濃く残っているが、実際は爆笑だけでなく、上手くいかない時はメンバー、特にDAIKIが泊まり込みで制作を行っていました・・・)

制作背景⑤ : その制作を捕らえたSTUDIO VIDEO

そしてその制作の様子は、自主制作スタジオビデオが公開されています。

筆者が編集、一部撮影もしました。

DRUM & BASS編

GUITAR編

VOCAL編


制作背景⑥ : ミックスエンジニア "WILL PUTNEY"

WILL PUTNEYはアメリカのレコーディング・エンジニアであり、ギタリストです。

過去にはTHY ART IS MURDERや、NORTHLANEなど多数の作品にプロデュースや録音、ミックスといったかたちで携わっています。

当時彼はMACHINE STUDIOというスタジオに所属し、スタジオ単位ではLAMB OF GODの作品を生み出したロケーションです。

HNIBもこのスタジオが手掛けた作品に多数影響を受けていて、このEPのミックスを依頼することになりました。

当時のアメリカのモダン・メタルの作品は各パートの分離がよくなり音圧も上がり、特に筆者の観点ではベースのミックスが非常に変化したと思います。

挿入されたエフェクトもバンドの希望に則りつつ、彼のアイディアも随所に効果的な仕事をしてくれています。

制作背景⑦ : アルバムジャケット

楽曲も出揃って作品の全体像も見え始めたころ、作品のアートワークをどうしよう、という話題になりました。

満場一致でメンバーが思っていたのは、「IKEPYのフロントマンとしてのカラーが非常に色濃くなった」ということです。

もはや「彼をジャケットにしてしまおう!」ということに。

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撮影やディレクションは、前回to同じMAXILLAに依頼。

当日は、作品タイトルの「THE BEAST EP」を印刷したシャツを用意し、IKEPYの顔や髪に大量のオイルを塗って撮影。

獰猛なニュアンスを演出してくれました。

作品はバンドの公式ストアでも購入できますので是非に。

現メンバーのサイン入りです。

①UNSHAKEN FIRE

ギターすんごい(小並感)

作品のアタマを飾る曲であり、制作の一番最後、なんならレコーディング前日ギリギリまでDAIKIが仕上げてくれた曲です。

これはいまだにライブでもリクエストが多くて、シンプルながらも見どころ聞きどころのあるいい楽曲だとメンバーながら思います。

"燃え上がれば、燃やされることはない。

きみが炎を灯せば、炎に取り囲まれることはない"

という勇気が出るライン、HNIBの歌詞の中でもすごく好きです。

現メンバーで再録も行っています。(若干メロディーが違います)

②THE PIERCING EYES

初のショート・チューン。

制作の後半に作品のテイストが見えてきた頃、DAIKIがもってきてくれたと記憶しています。

仮タイトルは、「タンタカタン」とかだったような気が・・・

戦車がバーっと走ってきて、最後、周りにあるものを全てなぎ倒すようなサウンド。

歌詞は端的にいうと、冷酷な世界を生き抜くというテーマ。

これはしばらくライブでやってないな〜。

③GASOLINES

HNIBの代表曲として、ずーっとライブで演奏している曲です。

WE REFUSEのデモを持ってきてくれた時以上に、「思い切って書いた」とDAIKIが持ってきたデモ。

彼のルーツであるアメリカン・ハードロックのカラッとしたバイブがあります。個人的にはビートがMotörheadっぽいなって最初は思いました。

中盤のベースとドラムの絡みはライブ演奏時の見せ場になっていて、いろんな演出を盛り込んでいます。

(いつぞやのライブ映像 @ 恵比寿LIQUID ROOM)

前作の"REVOLVER"と同様、メジャーデビュー後の再録バージョンがあります。

④CUTS INTO PIECES

ギターTJことたじくんの作曲デビュー作。

にこやかで柔和な印象な彼ですが、実はメンバー随一HEAVYにこだわる男

デスメタル要素とタテ乗りを意識した楽曲ですね。

かなり随所にDAIKIエッセンスもあります。

"誰も俺を止められない"というパワーワードから曲が始まります。

仮タイトルはもちろん、"たじメタル

⑤DANCING WITH THE GHOST

これはこの作品唯一の、筆者曲です。

シンプルかつヘヴィ」というコンセプトで挑んだ楽曲制作の中で、

怪しいコード感と耳に残る楽曲になったと思います。

大枠は筆者が作ったものをモチーフに、構成をDAIKIに手伝ってもらいました。

歌詞はIKEPYによるもので、「幽霊と踊る」=見えないものと対峙する

見えないもの、は自己かもしれないし、敵かも知れないし

ファイト・クラブ的な雰囲気を感じます。

⑥WE REFUSE

ラストを飾るのは、制作秘話の部分で触れたように、一番最初にできた楽曲です。そしてMV制作に選んだのもこの曲。

展開が決まるまで時間がかかり、実はいくつか他のバージョンがありました。

ビデオのストーリーを観てもらえば伝わると思いますが、憎い戦うべき存在に、真っ向から「だが断る!」と主張する気持ちを言葉にした曲ですね。

ライブで演奏する際には、最後テンポが落ちHEAVYになる見せ場がだんだんエスカレートしていき、めちゃくちゃ遅くなりました

その様子を再録したのがこちらの2019年バージョンです。

あとがき

いかがだったでしょうか?

8年という月日が経っているものの、制作の渦中にいた自分には昨日のことのように思い出せます。

しかし、楽曲はバンドのものだけでなく聴いてくれた人の心のなかで育つものでもあります。

既にたくさん聴いてくれている人には新しい発見が、このnoteを通じて知ってくれた人には新たなお気に入りが見つかってくれると、筆者は嬉しく思います。

Makoto / Her Name In Blood.




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