#25 HER NAME IN BLOOD 4th EP “EVOLUTION FROM APES” リリース5周年 レコーディング秘話 & セルフ楽曲レビュー
EVOLUTION FROM APES
全5曲入り、2016年4月27日にWARNER MUSIC JAPANより発売。
恒例の、リリース時のバンドのタイムラインをまとめてみましょう。
・インディーズから通算4作目のEP
・メジャーデビュー後2作目のEP
のちにリリースされる3rdアルバム"BAKEMONO"への足がかり的作品です。
制作秘話① : 成長の痛み
当時のバンドの状況を筆者の目線でいえば、いざ音楽だけで飯を食うということを真剣に意識し、まっすぐに活動へ向き合った時期です。
楽しいからやる、ことからさらに一歩踏み込んでそれに価値を見出し、それを経てどういう影響を受け取り手に与えるのか?
どういった志でステージへ上がり、それをもって進む次のステップはどこにあるのか?
これはインディーメジャー関係なく芸術活動を行う上で、目標や向上心を持って進む上で無視できないことだと思います。
しかし直視することは、ときに心身ともに疲弊し、まさに「身を削ってものをつくる」行為の真髄だとも言えます。
抽象的な言い方になってしまいましたが、この時期も制作においてライブ活動を行いながら並行して制作することをやっていて、なかなかにハードな時期でした。
しかし気がつけば大きなステージにも慣れ、支えてくれる人たちも増えた。
この時期、個人的に最も思い出深いのはTRIVIUMとのJAPANツアー。
とくにボーカルのキイチとは初対面ながら、料理の話などでめちゃくちゃ打ち解けることができました。
のちの、フィリピンのメディア"PULP MAGAINE"にて対談をしました。
お題は「得意なレシピ」
制作秘話② : 猿脳からの脱却!?
意訳するとそういうタイトルになると思います。
なんでこのタイトルになったのかは定かではないけど、あるとすればレコーディング中のふとした会話から「もうバカはやめよう〜!」みたいな言葉がきっかけになり、この名前を作品につけました。
いってしまえばバンドが色々なことから成長し、プロのミュージシャンとしての自覚をもったきっかけのタイムラインでの作品、といった解釈がわかりやすいのかも。
ちなみにジャケットの最終形態の人間は、IKEPYがモデルです。
中ジャケにはメンバーのイラストも。こちらでサイン入りCDがご購入いただけます。
ファンの方がケーキとイラストを差し入れしてくれたことも。嬉しかったな〜。
制作秘話③ : 世界の松金さん
レコーディングは狛江のMEGA HYPER STUDIOにて行われました。
前作BEAST MODEよりこの環境で統一になりました。
今までリズム隊を分けて録音していたところを、一緒のルームで息を合わせて録る。
このバンドの売りである「人間力」を音として表す手法として取り入れ、結果グルーブが強化されました。
当然レコーディングする楽曲を完全に体に入れてこなければこれはできず、特にリズム隊としてはかなり成長できたと思います。
制作秘話④ : ALEX PRIETO
ALEXはアメリカのサウンド・エンジニアー。
ONE OK ROCKやTONIGHT ALIVE、THE DEVIL WEARS PRADAやMOTIONLESS IN WHITEなど幅広い音楽を手掛けています。
空気感とラウド感を強調し、かつ耳心地いいモダンなミックスが特徴です。
④を除く、全曲のミックスを依頼しました。
制作秘話⑤ : KANE CHURKO
KANEも同じくアメリカのエンジニアー。
PAPA ROACHやIN THIS MOMENTなど、ALEXよりオーバーグラウンドな作品を手掛けています。
今回は4曲目のDOWNのミックスを依頼しました。
①LAST DAY
冒頭を飾るのはこの曲。
テレビ朝日 『ワールドプロレスリング』にてエンディングテーマに起用していただきました。
「ギターリフと歌」、という、バンドの真骨頂を表現した曲。
しかし、この曲の誕生は意外にも意外。
レコーディングに突入し、メインの新曲をどれにしようかという話になった際に、チームの「DAIKI、シンプルなやつ書いてみて!」というリクエストを受け、彼がリズム録りの最中に作ったデモが元になっています。
結果的にバンドの代表曲の一つに。
「最後の日まで、俺は諦めない。もしそれができるなら、"最後の日"なんて要らないじゃないか」
という男気あふれる歌詞が気に入っています。
②REVOLVER
こちらはインディー1作目"DECADENCE"の中より再録。
若干歌詞が変わっているのと、中盤でMATSUNO (BEFORE MY LIFE FAILS)のフィーチャリング部分を筆者が歌い直しています。
後半のギターも、ツインリードギターに生まれ変わり、メタル度アップ。
レコーディング中、あのフィーチャリングボーカル部分をメンバーの誰が歌うのか決まらないまま当日になり、前日練習して行った結果自分が歌うことになった思い出。
③DOWN
これは筆者作曲。
当時、ハーネーム以外でも作曲をしていて、メンバーに聞かせてみたところ「これはウチでやろうよ!」という意見からレパートリー入り。
持ち曲では珍しい3拍子の曲。
なんとなく冬を連想する切ないメロディー。そしてこちらはサビを筆者が歌っています。
実を言うとめちゃくちゃ自分の声にコンプレックスを持っていて、人前で歌うのが苦手だった自分にとって、まさかサビを歌う時が来るとは想像もしていませんでした、しかも自分が作った曲で。
④GASOLINES
こちらは2nd EP " THE BEAST EP"より再録。
前回のレコーディングより、バンド全体のグルーブが強化されたことが感じ取れます。
ライブでも定番曲となり、こちらは2015年にリリースした"BEAST MODE"のツアーファイナルからの映像。
⑤HALO
こちらも2014年リリースの"HER NAME IN BLOOD"より再録。
ドライブ感や荒々しさが増し、ライブの雰囲気により近い音になりました。
再録の面白いところは、「いやー前の方が好き!」という意見もあること。
つまり、「たくさん聴き込んでくれているんだな〜」と、愛を感じてしまいます。
あとがき
全5曲、再録も多い作品なので目新しさと言う点には欠けるかもしれない
けど、通して聴くとこの時代にしか出せないバンドのエナジーが思い起こされ、懐かしくも自分のバンドに元気をもらってしまうような、そんな不思議な感覚があります。
以外の作品と聴き比べたり、ミックス違い、再録違いを交互に聴いたり。
いろいろな方法で楽しんでみてください。
過去の作品のセルフレビューや解説もあるのでお時間ある方は是非。
過去作品レビュー
1st Album "DECADENCE"
2nd Album "HER NAME IN BLOOD"
4th Album "POWER"
2nd EP "THE BEAST EP"