【番外編小説】18年経っても君が好き
18年経っても君が好き(本編)
18年経っても君が好き
俺は物江颯太。
1月13日――……その日は18回目の結婚記念日だ。
そういえば20年前の今日、奈々に交際を申し込んだな……。懐かしい。
つい先月の事だ。
15歳になった娘の奈緒と、12歳の息子陽太、9歳の娘奈美が俺の書斎へきた。今まで子どもたちが俺の書斎に来るときは、何か相談事がある時だった。
「どうした、なにか……あったのか」
3人は、黙ったままだ。
奈々――……母親と何かあったのか?
それとも、学校でなにか?
俺が、何かしたのかもしれない。
「お父さん、ちょっといいかな……」
俺は、覚悟を決めた。
「あのね……」
「ん?」
もじもじと、奈緒は下を向いている。
陽太と奈美が、奈緒の顔を見上げ、言葉を催促していた。
「どうした、奈緒?」
「あのね……お父さんとお母さんって、結婚して18年経つんでしょう?テレビで言ってたの。18年目はガーネットっていう石が、1月の誕生石なんだって!でね……結婚記念日も1月でしょう?それで」
「おかーさんに、贈ってみたらって」
「お話してたの」
子ども達の目は、キラキラしていた。
誕生石か。
そういえば俺も、奈々も、毎年誕生花を贈り合っているな。
「お母さん、最近ちょっと寂しそうで」
奈美の言葉にハッとした。
そういえば5年前に俺が教頭になってから、帰宅時間が遅くなった。その上、休日出勤も増えたような気がする。今だって、持ち帰りの仕事をしていて、夫婦の時間は減ってしまったかもしれない。
「1月13日は、お母さんとご飯食べておいでよ。私も子どもじゃないし、3人でお留守番できるよ!あ、でも……お母さんの誕生日は一緒にお祝いしたいから、ケーキはお家でみんなで食べたいな」
「僕、お留守番できるよ」
「わたしも、できる!」
ああ。
子どもの成長って……早いものだな。
「ありがとう。1月13日、そうさせてもらおう」
「お父さん、頑張って!」
子ども達に背中を押された。
それが……先月の話。
仕事の帰りに宝石店に行き、ガーネットのネックレスをオーダーした。
当日のレストランも予約を入れた。
奈々は「どうしたんですか?」と困惑していたが、奈緒たちが「行ってきなよ~」と助け船を出してくれたおかげで、どうにか約束できた。
そして迎えた1月13日。
「誕生日おめでとう、奈々」
「ありがとうございます」
まずは毎年贈っているが、ツルバキアの花を奈々に渡した。
「うふふ……これで、20回目ですね……こうしてお花を頂くのは」
「もう、そんなに経つんだな……」
「颯太さんと、こうして一緒に居られて幸せです」
「俺もだ」
奈々は、出会った頃と変わらない。
いつだって俺を慕って、ついてきてくれた。
ああ、もう。
可愛い。
俺も、うすうすは気づいていた。
奈々に、寂しい思いをさせていることに。
それでも俺の前ではいつも笑っていて、大丈夫だと、見て見ぬふりをしていたんだ。彼女は俺に心配をかけないようにと、そうしてくれていたんだろう……。奈緒たちに改めて言われ、ようやく向き合うこととなった。
「なぁ、奈々」
「どうしたんです?そんな真剣な顔をして」
「いや……その、この数年……奈々には寂しい思いをさせてしまったな」
「そんな。お仕事が上手くいっているのは、私も嬉しいです」
奈々はニコリと笑った。
「いや、無理をしなくてもいい。子ども達に、言われたんだ。奈々が寂しそうだって。今日も、3人が二人で食事して来いって言ってくれたんだ」
「まぁ……あの子たちったら」
「それで……その」
もう、言い飽きるくらいに囁いてきた愛の言葉。
こう、改めて伝えるのは恥ずかしいな。
「奈々に、もう一つ渡したいものがある」
「渡したいもの?」
「これを」
「わぁ……可愛い。ネックレスを、私にですか?」
「ガーネットは、君の誕生石なんだと。それと、結婚18年目の石だと教えてもらってね」
「嬉しい……」
やっぱり、奈々には笑顔が似合う。
無理やりの笑顔じゃなくて、心からの笑顔。
久しぶりに見た気がした。
(罪深いな、俺は)
「奈々……これからの人生も、俺と一緒に歩んでほしい」
「うふふふ。もちろんです」
「愛してる、奈々」
「わ、私だって……颯太さんを愛してます」
1月13日 奈々の誕生日。
子どもが生まれてからは、こうして二人でゆっくり食事をすることがなかった。久々に二人でゆっくり、愛する人の誕生日を祝えてよかったと思う。
―――帰宅後
「お母さん、誕生日おめでとう!」
「ありがとう、奈緒、陽太、奈美」
「お父さんとゆっくりできた?」
「ええ、とっても。3人のおかげね……ありがとう」
「うふふふ。私たちからのプレゼントは、お父さんです」
「受け取りました」
子どもたちは、本当に奈々が大好きだ。
「今日はなにを食べんだ」
「奈緒姉ちゃんの特性オムライス!」
「奈美も手伝ってくれたの」
「えー、僕も卵かきまぜたよ!」
「そうね~」
「美味しかったよ!」
子ども達の成長はあっという間だ。
奈々と、子ども達の会話を聞きながら、コーヒーを口に含んだ。
今日のコーヒーは、物凄く甘かった。
終
あとがき
ゆめとはる の推しカップル。
1話・2話の物江颯太と倉田奈々の結婚後。
しかも18回目の記念日!!!
1月の誕生石はガーネットで、結婚18回目の石。
宝石言葉は【友愛】【真実】
真実の愛を伝えたい……
そういうお話でした。
元々誕生石には興味があって、ゆめとはるも
宝石店かお花屋さんにするか
迷ってました。
毎月、ゆめとはるを中心に、小説を公開できたらな~と思っています。
ちょくちょくこの夫婦、家族出て来ると思いますので。
颯太と奈々もよろしくお願いします!!!