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人の優しさを感じている

 短時間であれば松葉杖を外しても良いようになったけれど長距離を歩くときは今も松葉杖が頼り。
 松葉杖を両手にもつと世界が変わって見える。
 ちょっとしたスモールワールド。

 近所のスーパーマーケットまでは松葉杖で歩くと片道約30分。
 散歩をする人、買い物へ向かう人、自転車の学生たち、様々にすれ違う。
 スーパーマーケットに着けば、それこそいろんな人々がいる。

 人々は僕の松葉杖に気づくとすぐに道を譲ってくれたり、ドアを開けてくれたりする。
 それも皆、笑顔で接してくれるから、遠慮をすることなく、ありがたく好意を受け取ることができる。

 人って温かいと思う。
 スーパーマーケットで買い物をしていても、横をゆく際、誰もが笑顔で気遣ってくれるくれる。

 人ってなんて良いものなのだと思う。
 こちら側から見ないとわからない風景。
 世の中のニュースは世知辛いからね。

 中にはなんで杖をついているんだ?という心の声が聞こえてきそうな人もいるにはいるけれど、やがては気にならなくなる。
 圧倒的に気遣いの優しさに包まれているから、世界が素晴らしく見えてしまっている。

 長距離を歩けば右足はパンパンに腫れてしまう。
 ブーツはもちろん、コンバースも入らないくらいに。

 それでも僕は歩けることの喜びを感じている。

 何歳なんだよ自分はなんて思うけれど、時代は今、こうでなければいけないという縛りが目に見えないような鎖で張り巡らされて誰もが苦しんでいるのではないか?

 この年齢だから?生まれがどうとか?男だから?女だから?

 もっと大切なもの、きっと本当はあるよね。

 それさえ忘れずにいられるなら人生はオーライなのではないか?
 何が欲しいのだろう。僕たちは。

 ちょっとした優しさにふれあう。

 人生はそんなことの積み重ねだ。

 それこそが人生の素晴らしさの凝縮したエッセンス。

 愛しさを忘れずに生きていきたい。

 Makoto ATOZI

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