
ホリゾント (TBC37)
照明に初めて接したのはいつだろう?中学生の文化祭だろうか?高校で同級生の手伝いで演劇部の大道具と照明を担当した時にはすでに、基本的な事は知っていた。
地明かりのボーダー
立ち位置のサス
舞台を彩るホリゾント
感情を際立てるフット
狙いを定めるスポット
光の三原色はRGB
だけどタングステンだからアンバーを引き算して作る
高校の演劇の大会で予算も技術も時間もなくて、広すぎる舞台に慌てて背景の壁にペラペラのベニアを足したら、ホリゾントが筋状に浮き出て「これはどんな演出意図で?」なんて聞かれたっけ。
大学ではバイトで文化センターの照明をやったりイベント会社の応援スタッフに加わったり、一端の照明さんを気取っていたけど、本当は何も知らない素人でした。
その後は映像の世界で生きてきたので舞台照明とは離れてしまったけれど、3DCGを扱うようになってあの頃の経験が生きたことがありました。照明は当てれば当てるほどのっぺらになる理由や、見えない場所からの差しや、ターゲットを絞って移動する便利なバーチャルライト。
はじめてリアルな表現が可能になった3DCGアプリの名前が「Shade」だったのはまさに単眼で表示する映像世界の表現の基本を示していたなぁ・・・なんて思い出したりしています。
テレビは得てして「べた」で明かりを付けます。
それは、かつてのスタジオカメラの性能がチョット暗いと映らなかったからです。だから沢山の光源をバトンにぶら下げて隙間なく光を当てたのです。

一方で映画の世界では、自然な光や反射を好みます。
例えばハリウッドの巨大なスタジオでは巨大なライトを一本だけ吊って太陽の代わりにして屋外を表現したりしていました。(今はどうか知らんけど)意識的に影を作ったり逆光を利用して表現したり、それはフィルムがテレビよりも先に生まれて先に進化したから出来たことでした。
時代はいま、デジタル撮像素子の進化によってフィルムを必要としない時代に突入しました。撮影も上映も、もうフィルムは使わなくなってしまいました。8ミリフィルムカメラで映像の世界に入った私の時代は完全に終わろうとしているみたいです。
ま、エモいって言われる事はたまにあってもね。
あ、そうそう、表題の「ホリゾント」ですが、壁を照らしている明かりです。スタジオ全体の色合いを決めるもので、いまやみんなLED。古いカメラはタングステンベースにできているので白が青く映るとか、明るすぎると逆に被写体側が暗くなるとか、照明屋さんにとっては「当たり前」の話なんですがね・・・。