カクテルバー202
1980年だったか81年だったか?
学生寮の隣の部屋の人が寒さを凌ぐために電熱器で暖を取りながらレポートを書いていたそうです。
うつらうつらして、背中に掛けていた毛布に火が移り火事になりました。
私の部屋は4人部屋で一番ドア側に寝ていたのですが、ドンドンドン!バケツあったら貸して下さい!
意味わかんない。でもなにか緊急の事態っぽい。バケツ、バケツ・・・
探しているうちにバン!バキッ!バチバチ!音がし始めて真っ黒な煙が上がりました。
ヤバい火事だ!(いや、ヤバいはもう少し後の時代か?)
みんなに声をかけて逃げました。4階のフロアは真っ黒な煙が腰の高さまで一杯で腰を屈めて脱出しました。すぐ近くの消防署から消防車も出動して放水!
見守りながら「あれ?岩本さんがいない!岩本さんが!」
「さこう、ここ」岩本さんは小さな方で私のすぐ後ろにいて肩を叩いて教えてくれました。
火事は幸い4階建ての最上階だけ焼いて収束しました。
焼け出された私達には赤十字から毛布や緊急グッズが配られ、その毛布は天然ウールで暖かくその後長い間愛用しました。
ちなみに過失による出火の場合、延焼で損害が出ても賠償責任は無いそうで、岩本さんが趣味と実益で収集していたラック4本分の専門書は相当な額だったにも関わらず泣き寝入りだったそうです。
当時の男子寮は汚くて臭くて経済的な理由以外で住むのは過激派くらいのもので、空き部屋が幾つかあったので私はそちらに移り4人部屋の半分を独占出来ました。
火事にあって全財産(と言っても価値があるのはカメラとスーツくらい)焼けたというので、親戚中から寄付が集まり焼け太りした私は、興味があった酒を色々集めて部屋でカクテルバーをオープンしました。
1杯100円。
良心的な価格で自治会やサークル関係から女性のお客さんも来るので、それを目当てに野郎達も集まり大繁盛。
しかし良い事ばかりは続きません。
絡み癖の女性客と私の友人が、あろう事か私のベッドで・・・
私が絡まれるのが嫌でタバコを買いに出た、ほんの数分の間の事で「さこうが気を利かしたんだと思った」そうですが、後に二人は夫婦になったから良しとします。
そんなこんなで、隠微な感じが敬遠されて女性客は絶え、必然的に男も来ず、悪友達はツケを踏み倒し、私は店を閉めました。
人気の頃はオリジナルカクテル100種類も作って、材料も無ければ個人輸入して繁盛してたのに・・・祇園精舎の鐘の声です。