1インチ編集室(TBC18)
1995年当時B社には自社機のVTRは編集車の物だけで、あとは全てテレビ朝日の機材を保守管理しながら使う今で言えば人材派遣を行っていました。テレビ朝日の映像制作の下請け会社は複数あって、B社が一番新参だったので風当たりは強く営業担当のNさんなどは溜まったストレスの吐け口として無人の公園に向けて窓から生卵を投げたりしていました。
ライバル会社はフルサイズの編集室を複数持っていていつも予約が一杯でだから番組制作班は何ヶ月も前からスケジュールを押さえて・・・
NさんやB社幹部は考えました「風穴開けたる!」
それまで、写真の受付に使ったり休憩に使っていたアーク森ビル11階にフルサイズ編集室を作る事にしました。とは言っても業者さんに発注するような金は無い。
後に私の師匠となるベテラン編集マンのSさんが機材ラックの設計から配線まで全部手作りでインチ編集室を作り上げました。
編集卓はBVE920
これまで使っていたBVE800はボタンと言えばVTRコントロールと編集モードだけでしたが、こいつは違う。1/30秒単位の高精度な編集が可能で、ダイヤルを回すよりキーボードで数値を打ち込む方が多い。それまでの切った貼ったの世界から緻密ワールドへ進んだのでした。
しかもDVEがある。
デジタルビデオエフェクター、なんと甘美な響きでしょう・・・編集マンだけか?
それまではシーン替わりといえばカットかディゾルブか横ワイプがせいぜいだったのですが、コイツが来たらなんでも出来ます。ページみたいに柔らかくめくったり、ボールにして投げたり、四角い箱にして閉じ込めたり、今にして思えば陳腐ですが当時は夢中で新しいエフェクトを開発していました。
そんな欲求がやがて私をフルデジタルへと駆り立てます。
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