実施基準 二 4 財務諸表項目レベルの重要な虚偽表示リスクへの対応
監査人は、財務諸表項目に関連した重要な虚偽表示のリスクの評価に当たっては、固有リスク及び統制リスクを分けて評価しなければならない。固有リスクについては、重要な虚偽の表示がもたらされる要因を勘案し、虚偽の表示が生じる可能性と当該虚偽の表示が生じた場合の影響を組み合わせて評価しなければならない。/また、監査人は、「財務諸表項目に関連して暫定的に評価した重要な虚偽表示のリスクに対応する、内部統制の運用状況の評価手続及び発見リスクの水準に応じた実証手続」に係る監査計画を策定し、実施すべき監査手続、実施の時期及び範囲を決定しなければならない。
監査人は、虚偽の表示が生じる可能性と当該虚偽の表示が生じた場合の金額的及び質的影響の双方を考慮して、固有リスクが最も高い領域に存在すると評価した場合には、そのリスクを特別な検討を必要とするリスクとして取り扱わなけばならない。/特に、監査人は、会計上の見積りや収益認識等の判断に関して財務諸表に重要な虚偽の表示をもたらす可能性のある事項、不正の疑いのある取引、特異な取引等、特別な検討を必要とするリスクがあると判断した場合には、そのリスクに対応する監査手続に係る監査計画を策定しなければならない。
監査人は、実施した監査手続及び入手した監査証拠に基づき、/暫定的に評価した重要な虚偽表示のリスクの程度を変更する必要がないと判断した場合には、/当初の監査計画において策定した内部統制の運用状況の評価手続及び実証手続を実施しなければならない。/また、重要な虚偽表示のリスクの程度が暫定的な評価よりも高いと判断した場合には、/発見リスクの水準を低くするために監査計画を修正し、十分かつ適切な監査証拠を入手できるように監査手続を実施しなければならない。
監査人は、ある特定の監査要点について、内部統制が存在しないか、あるいは有効に運用されていない可能性が高いと判断した場合には、内部統制に依拠することなく、実証手続により十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。
監査人は、特別な検討を必要とするリスクがあると判断した場合には、/それが財務諸表における重要な虚偽の表示をもたらしていないかを確かめるための実証手続を実施し、/また、必要に応じて、内部統制の整備状況を調査し、その運用状況の評価手続を実施しなければならない。
■監査基準の改訂2005
財務諸表項目レベルでは、統制リスクの評価に関する実務的な手順を考慮して、まず、内部統制の整備状況の調査を行い、重要な虚偽表示のリスクを暫定的に評価し、次に、当該リスク評価に対応した監査手続として、内部統制の有効性を評価する手続と監査要点の直接的な立証を行う実証手続を実施することとしている。
◆固有リスク
取引種類、勘定残高及び注記事項に係るアサーションに重要な虚偽の表示が行われる可能性であり、被監査会社に固有に存在するリスクである。
金利や為替相場などの経済的状況も検討する。
◆統制リスク
企業の内部統制によって重要な虚偽の表示が防止又は発見・是正されない可能性のことであるが、内部統制が良好に整備・運用されている場合であっても、統制リスクはゼロにはならない。
◆発見リスク
■監査基準の改訂2020
■財務諸表項目レベルの重要な虚偽表示リスクの例
<財務諸表項目及び監査要点>
・研究開発費の網羅性
研究開発費として費用計上すべき支出金額が、固定資産の取得等、他の支出金額に含まれていないか?
・機械装置等の固定資産の評価の妥当性
固定資産の稼働状況等に留意し、減損処理の要否について検討する。
・製品等の棚卸資産の評価の妥当性
製品等の年齢調べを行い、販売価格の動向、販売可能性等に留意し、評価損の要否について検討する。
・売上高の実在性や期間帰属の妥当性
業績連動型報酬制度の影響によって、営業担当者による架空売上や売上の繰上処理が行われているか否かについて検討する。