監査基準第一 監査の目的
財務諸表の性格的な特徴
→内部統制、見積りや判断の介入
監査の特性
→試査、時間的制約
◆誤謬
財務諸表の意図的でない虚偽表示をいい、金額又は開示の脱漏を含む。
外部の第三者による監査によって、財務諸表の信頼性を確保し、投資者を保護する。これにより、国民経済の発展に寄与する。
財務諸表等をもとに、投資者による合理的な投資意思決定がなされる
→資本市場における適切な価格形成
→適切な資源配分の実現
→国民経済の健全な発展
■論点整理
二 2(1)
監査基準等では監査それ自体の目的については必ずしも明確にされていないことから、種々の立場から種々に理解され、それがいわゆる「期待ギャップ」を醸成してきた面もあるとの指摘がある。
二 2(2)
虚偽記載の原因としては、
・会計基準の誤った選択
・意図的な虚偽の財務報告
・不正の隠蔽やその結果としての虚偽記載
などがある。
財務諸表の適正性の意義には、重要な虚偽記載がないことに関する合理的な保証が含まれることを明確にする必要がある。
★監査の役割
監査人は、財務諸表の作成にあたっての経営者の判断に対する評価を踏まえて、自らの意見を表明することが求められるが、/あくまでも経営者に財務諸表の作成に関する責任があることを監査基準等で明確にする必要がある。
■金融商品取引法監査
財務諸表に虚偽の表示があると、一般投資者が不測の損害を蒙るおそれがあり、ひいては有価証券の発行・流通の公正と円滑化を図ることができない。
金融商品取引法は、会社と特別の利害関係をもたない公認会計士又は監査法人の財務諸表監査によって、財務諸表の信頼性を担保している。
◆監査の機能
監査人は、財務諸表の信頼性に関し、独立の立場から職業的専門家としての意見を表明する。
監査は、企業が発表する財務諸表の適正性に関する意見を表明し、以てその利用者の適切な判断に資することを目的としている。
監査の目的は、被監査会社が発行した有価証券の現在価値の妥当性を保証することにはない。
◆監査基準に監査の目的を明示した理由
監査の目的を明確にすることにより、監査の機能、役割、範囲等についても明確な位置付けができる。(期待ギャップの解消)
監査基準に監査の目的が規定された理由の一つに、利害関係者を啓発することによって期待ギャップの縮小を図り、財務諸表監査の信頼性を回復させることが挙げられる。
◇期待ギャップ
公認会計士に期待されている役割が実際の役割と異なっている場合の、両者の差異を指す。
財務諸表の利用者が監査人に期待することは、経営者の不正に起因する財務諸表の虚偽の表示の発見である。
過大評価の場合
過小評価の場合
◇監査の失敗
実際の監査業務が公認会計士が担うべき役割に満たない場合→責任が問われる。
監査人は連結キャッシュ・フロー計算書等が企業集団等のキャッシュ・フローの状況を適正に表示しているかどうかについても意見を表明しなければならない。
◆目的制定の背景
バブル崩壊後に生じた一連の企業破綻に際し、経営者等による数々の不正事件が露呈したことから、特に適正意見と虚偽の表示との関係についての問題が提起されていた。
◆合理的な保証(Reasonable)
財務諸表監査において、絶対的ではないが高い水準の保証をいう。
◇「合理的な保証を得た」とは
・財務諸表には経営者による見積りや判断に基づく情報が多く含まれていること
・内部統制には状況によっては機能しないという限界があること
・監査が原則として試査によって実施されること
・職業的専門家としての判断を多くの局面で要求されること
等の条件がある中、財務諸表監査において、絶対的ではないが相当に高い程度の心証を得ることをいう。
監査人は、財務諸表に対して絶対的な程度の信頼性の保証を付与することができない。これは、財務諸表の特性や監査の固有の限界に起因する。
■監査基準の改訂2002
監査の目的
従来、監査基準は監査それ自体の目的を明確にしてこなかったために、監査の役割について種々の理解を与え、これがいわゆる「期待のギャップ」を醸成させてきたことは否めない。
また、監査の目的を明確にすることにより、監査基準の枠組みも自ずと決まることになる。
このような趣旨から、改訂基準において監査の目的を明らかにすることとした。
監査の目的は、経営者の作成した財務諸表に対して監査人が意見を表明することにあり、/財務諸表の作成に対する経営者の責任と、当該財務諸表の適正表示に関する意見表明に対する監査人の責任との区別(二重責任の原則)を明示した。
監査人が表明する意見は、財務諸表が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が「自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果」を表明したものであることを明確にした。
監査の対象となる財務諸表の種類、あるいは監査の根拠となる制度や契約事項が異なれば、それに応じて、意見の表明の形式は異なるものとなる。
適正意見と虚偽の表示との関係について、監査人が財務諸表は適正に表示されているとの意見を表明することには、財務諸表には全体として重要な虚偽の表示がないことの合理的な保証を得たとの監査人の判断を含んでいることを明確にした。
「合理的な保証を得た」とは、監査が対象とする財務諸表の性格的な特徴(例えば、財務諸表の作成には経営者による見積りの要素が多く含まれること)や監査の特性(例えば、試査で行われること)などの条件がある中で、職業的専門家としての監査人が一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って監査を実施して、絶対的ではないが相当程度の心証を得たことを意味する。
なお、監査報告書における適正意見の表明は、財務諸表及び監査報告書の利用者からは、結果的に、財務諸表には全体として重要な虚偽の表示がないことについて、合理的な範囲での保証を与えているものと理解されることになる。
◇注意
財務諸表の重要な虚偽の表示を発見できなかったとしても、独立性を保持するとともに、適切な水準の正当な注意を払い、職業的懐疑心を保持して監査を実施したのであれば、責任を問われない可能性がある。
監査人は、経営者の不正に起因する財務諸表の重要な虚偽の表示を発見するために、職業的専門家としての正当な注意を払い、懐疑心を保持して監査を行わなければならない。
注1
財務諸表監査の目的は、会計上のすべての不正及び誤謬を摘発することではない。
注2
財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではない。
◆監査人の意見の表明の形式
監査の対象となる財務諸表の種類、あるいは監査の根拠となる制度や契約事項が異なれば、それに応じて意見の表明の形式は異なる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?