実施基準 二 1 効果的かつ効率的な監査、監査リスクと監査上の重要性を勘案した監査計画の策定
◼️論点整理
監査の実効性を高めるためには、内部統制の確立や内部監査の充実等が必要とされ、かつ、これらが結果的に監査の効率化にも繋がることを、監査人においてもより強く認識する必要があるとの指摘もある。
■監査基準の改訂2002
リスク・アプローチの考え方は、虚偽の表示が行われる可能性の要因に着目し、その評価を通じて実施する監査手続やその実施の時期及び範囲を決定することにより、より効果的でかつ効率的な監査を実現しようとするものである。これは、企業が自ら十分な内部統制を構築し適切に運用することにより、虚偽の表示が行われる可能性を減少させるほど、監査も効率的に実施され得ることにもなる。
◆監査計画の策定
効果的かつ効率的な方法で監査を実施するために、監査業務に対する監査の基本的な方針を策定し、詳細な監査計画を作成することをいう。
→監査計画を策定する目的は、監査を効果的かつ効率的に実施することである。
監査人は、監査を効果的かつ効率的に実施するために、監査計画を策定しなければならない。
監査計画とは、監査リスクを合理的に低い水準に抑えるために、監査の基本的な方針を策定し、詳細な監査計画を作成することである。
監査リスクと監査上の重要性を勘案して監査計画を策定
→効果的かつ効率的な監査の実施
監査計画の策定は、前年度の監査の終了直後、又は前年度の監査の最終段階から始まり、当年度の監査の終了まで継続する連続的かつ反復的なプロセスである。
◇監査の基本的な方針(overall audit strategy)
監査業務の範囲、監査の実施時期及び監査の方向性を設定することをいい、詳細な監査計画を作成するための指針となるものである。
監査人は、監査の基本的な方針を策定する際、監査契約に係る予備的な活動の結果や、可能であれば企業に対する監査以外の業務から得られた経験を考慮する。
◇詳細な監査計画
監査リスクを合理的に低い水準に抑え、十分かつ適切な監査証拠を入手するために監査チームが実施すべき監査手続、その実施の時期及び範囲を決定することである。
★リスク・アプローチの考え方
企業固有の事情や内部統制の状況などの評価を通じて、虚偽の表示が行われる可能性の要因に着目し、/リスクの高い対象を重点的に監査することにより、効果的かつ効率的な監査を実現しようとする。
◆リスク・アプローチの定義
重要な虚偽の表示が生じる可能性が高い事項について重点的に監査の人員や時間を充てることにより、監査を効果的かつ効率的に実施できるという監査の実施方法をいう。
◇リスク・アプローチ採用の根拠
①重要な虚偽の表示を発見するという財務諸表監査の目的
②監査資源の制約
リスク・アプローチに基づく財務諸表の監査において、内部統制及び監査上の重要性は基本的な論点である。
リスク・アプローチの考え方を監査の効率化のために過度に適用すると、結果として十分な監査証拠を入手できないといった弊害がある。
■1989年5月改訂
相対的に危険性の高い財務諸表項目に係る監査手続を充実強化する改訂を行っている。
財務諸表監査が社会的に信頼されるためには、財務諸表に含まれる重要な虚偽の表示を看過することがないように、効果的な監査業務を実施することが求められる。
そのために、監査人には、職業的専門家としての高度な倫理観に支えられた監査業務の適切な遂行と、それを担保するための適切な監査体制の整備等を通じた監査に関する品質管理が求められる。
◆監査リスク
■監査上の重要性(Materiality)
一般的には、脱漏を含む虚偽表示は、個別に又は集計すると、当該財務諸表の利用者の経済的意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。
監査上の重要性と監査リスクとの間には相関関係がある。
監査上の重要性を過度に大きくすることは、結果として虚偽の表示が見逃される可能性が高くなり望ましくない。
■重要性の基準値
監査上の重要性の基準値は、/その後の監査対象企業を取り巻く経済環境の変動やこれに対する企業の対応の巧拙による業績変動等により、「当初暫定的に重要性の基準値を決定した際に用いた過年度の財務諸表数値や当年度の予算等の財務諸表数値」が当年度の財務諸表数値の実績との間に大きな乖離を生じたことから、/改訂されることがある。
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