実施基準 三 5 会計上の見積りの合理性
データの信頼性
→分析的実証手続を実施する際に検討する。
経営者の利用する専門家が客観性を欠く場合、信頼できないことがある。
■会計監査の在り方に関する懇談会
工事進行基準が適用される事案について、経営者が使用した重要な仮定の合理性や見積りの不確実性に関して当然行うべき検証を行わなかった。
■監査基準の改訂2002
<前文三1監査の目的 (5)>
合理的な保証を得たとは、監査が対象とする財務諸表の性格的な特徴(例えば、財務諸表の作成には経営者による見積りの要素が多く含まれること)や監査の特性(例えば、試査で行われること)などの条件がある中で、職業的専門家としての監査人が一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って監査を実施して、絶対的ではないが相当程度の心証を得たことを意味する。
<前文三8(4) 会計上の見積りの合理性>
新たな会計基準の導入等により、会計上の認識・測定において、従来にも増して経営者の見積りに基づく要素が重要となってきている。改訂基準では、 会計上の見積りの合理性について、監査人自身も、十分かつ適切な監査証拠 を入手して判断すべきことを指示し、そのために、経営者が行った見積りの 方法の評価ばかりでなく、その見積りと監査人自身の見積りや決算日後に判 明した実績とを比較したりすることが必要となる場合もあることを明記し ている。
■監査基準の改訂2019
近年、財務諸表において会計上の見積りを含む項目が増え、これらに対する監査の重要性が高まっている中、具体的な監査上の対応や監査上の重要な判断に関する説明・情報提供の充実が要請されている。
■監査基準の改訂2020
一 経緯
会計上の見積りに関して、経営者の使用した仮定の合理性の検討が不十分であるなど、重要な虚偽表示のリスクに対応する監査手続が不十分との指摘もなされている。
会計上の見積りについては、適切に評価されたリスクに対応した深度ある監査手続が必要と考えられる。
監査基準をめぐる国際的な動向をみても、世界的な金融危機を契機として会計上の見積りに係る基準が改訂されるとともに、実務における適用状況を踏まえリスク評価に関する基準の改訂がなされたところである。こうした動向を踏まえ、我が国においても、国際的な監査基準との整合性を確保しつつ、監査の質の向上を図ることが必要であると判断した。
二 主な改訂点とその考え方
2 リスク・アプローチの強化について
(1)リスク・アプローチに基づく監査
会計上の見積りについては、…重要な虚偽表示のリスクの評価に当たり、固有リスクと統制リスクを分けて評価することを前提に、/リスクに対応する監査手続として、原則として、経営者が採用した手法並びにそれに用いられた仮定及びデータを評価する手続が必要である点を明確にした。また、経営者が行った見積りと監査人の行った見積りや実績とを比較する手続も引き続き重要である。
★会計上の見積りが注目されている背景
近年、会計基準の改訂等により会計上の見積りが複雑化する傾向にあり、財務諸表項目レベルにおける重要な虚偽表示のリスクの評価がより一層重要となってきている。
◆会計上の見積り
適用される財務報告の枠組みに従って、金額の測定に見積りの不確実性を伴うものをいう。
◇見積りの不確実性
◇会計上の見積りの確定額
◇会計上の見積りにおける仮定
◇会計上の見積りにおけるデータ
◇会計上の見積りが必要なものの例
<伝統的な項目>
<新しい会計基準や実務指針により、従来よりも精緻な見積りが要求されるようになった領域>
◆会計上の見積りと発見リスク
会計上の見積りは経営者の主観的判断を伴うことが多く、固有リスクが高い。
会計上の見積りに関する内部統制を確立することが難しいため、統制リスクも高い。
したがって、重要な虚偽表示のリスクは高い。
監査人は監査リスクを合理的に低い水準に抑えるため、発見リスクを低くする監査計画を策定する必要がある。
会計上の見積りが必要な事象は、恣意性や主観的判断の介入する余地が大きく、それが概算である以上、虚偽の表示が生じやすい性質を有する。
監査上も重要な虚偽表示リスクの高い項目として認識される。
★会計上の見積りに関する適切な内部統制が構築されている場合には、統制リスクの程度を相対的に低く抑えることができる。会計上の見積りに関する内部統制上、経営者はどのような手続を実施すべきか。
・上位の役職者が、会計上の見積りの方法とその結果が経営計画と矛盾していないかを検討する。
・上位の役職者が、会計上の見積りに影響を与える要因の把握及び仮定の設定に対して査閲と承認を行う。
・過年度の会計上の見積りと実績とを比較する。
・会計上の見積りに必要となる正確な情報を信頼しうる状況下において収集する。
◆経営者の見積額
財務諸表で会計上の見積りとして認識又は開示するために経営者が選択した金額をいう。
新たな会計基準の導入等により、会計上の認識・測定において、経営者の見積りに基づく要素が重要となってきている。
◆監査人の見積額又は見積りの許容範囲
経営者の見積額を評価するために、監査人が監査証拠から算定した金額又は金額の幅をいう。
★経営者の見積りと監査人の見積り
過年度に行われた会計上の見積りと実績との比較は、監査人による独自の見積りの仮定の設定に役立つ。
監査人は独自の見積りを行い、会社の見積りの妥当性を検証する。
★監査人の独自の見積りが実施できない場合
監査範囲の制約として扱う。
★電子公告の方法による貸借対照表及び損益計算書の全部の公告
会計上の見積りの変更に関する注記を明らかにすることは要求されていない。(企業法2022Ⅱ)
■分析的手続
財務データ相互間又は財務データと非財務データとの間に存在すると推定される関係を分析・検討することによって、財務情報を評価することをいう。
分析的手続には、他の関連情報と矛盾する、又は監査人(業務実施者)の推定値と大きく乖離する変動や関係の必要な調査も含まれる。
■見積手法
コメント:
減損損失、退職給付費用、繰延税金資産、法人税等調整額の計上金額(の妥当性)に関連してきます。四半期決算の発表時期に話題になったりしますね。
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