実施基準 三8 継続企業の前提に関する重要な不確実性
◆不確実性
将来の帰結が企業の直接的な影響が及ばない将来の行為や事象に依存し、財務諸表に影響を及ぼす可能性がある状況をいう。
監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象や状況を識別するために、分析的手続の実施、後発事象の検討、借入金等に係る契約事項への準拠性の検討などを行う。
■監査基準の改訂2002
★監査上の判断の枠組み
経営者が適切な評価を行わず、合理的な経営計画等が経営者から提示されない場合には、/監査範囲の制約に相当することとなり、除外事項を付した限定付適正意見を表明するか又は意見を表明しない。
■監査基準の改訂2009
★経緯
投資者により有用な情報を提供する等との観点から検討を行い、/一定の事象や状況が存在すれば直ちに継続企業の前提に関する注記を要するとともに追記情報の対象と理解される現行の規定を改め、/これらの事象や状況に対する経営者の対応策等を勘案してもなお、継続企業の前提に関する重要な不確実性がある場合に、適切な注記がなされているかどうかを監査人が判断することとした。
★継続企業の前提に関する監査の実施手続
財務諸表等規則等の検討と合わせ、監査基準に対しても、国際監査基準における監査の実施手続と同様の手続を明確化することとした。
経営者が行った継続企業の前提に関する評価の手順を監査人においても確認するものとした。
★継続企業の前提に関する意見表明
実施基準において、継続企業の前提に関し、監査人は、「継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否か」を確認することとなるよう改訂されることから、/監査報告においても監査人は「継続企業の前提に関する重要な不確実性」が認められるときの財務諸表の記載に関して意見を表明することとした。
経営者が評価及び一定の対応策も示さない場合には、監査人は十分かつ適切な監査証拠を入手できないことがあるため、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じ意見の表明の適否を判断することとした。
◆継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況の例
①財務諸表指標関係
売上高の著しい現象
重要な損失
営業活動キャッシュ・フローの重要なマイナス
②財務活動関係
資金調達の困難性
債務免除要請
売却予定資産の処分困難性
配当優先株に対する配当の遅延又は中止
③営業活動関係
主要な取引先の喪失
事業活動に不可欠な権利・人材・資産の喪失
法令に基づく重要な制約
④その他
巨額の損害賠償金
ブランドイメージの著しい悪化
売上高の著しい減少や債務超過は単独でも重要な疑義を構成する可能性が高いが、監査人は各企業の実情に応じて総合的に疑義を判断する必要がある。
デット・エクイティ・スワップにより債務超過を解消して財務内容を改善し、債務者である会社への現物出資で増資が可能となる場合もある。