アメリカ大学スポーツのスタッフ事情
初めて書く記事ということで、自己紹介も兼ねつつアメリカの大学スポーツ事情について少し紹介してみたいと思います。
私は昨シーズンまでSt. John’s University(NCAA Division I所属)のバスケットボールチームでGraduate Assistant(通称GA)というポジションで働いていました。簡単にいうと学生スタッフでして、普段は大学院の授業を受けつつ、チームのスタッフとして仕事もするという立場です。仕事内容としては非常に多岐に渡りましたが、メインとしては対戦相手のビデオを編集したり、練習や試合で記録をとってまとめたりという分析周りのことに従事していました。
日本の学生スタッフとの最大の違いは何と言っても給料が発生するということでしょう。より正確に表現すると奨学金ですね。自分の場合はチームの仕事によって、非常に高額な大学院の授業料を免除になり、また小額ながら幾らかのお金もいただくこともできました。チームによっては家賃や食費を補助してくれるところもあるので、そういうところではほぼ負担なしで学位を取りつつ仕事をすることができるわけです。GA以外にもマネージャーという立場の学生スタッフがおり、私のチームには実に10人ものマネージャーが働いていました。(自分も初めはこのポジションからスタートしていました。)多いところだと15人くらいいるところもあります。
さて、チームには学生スタッフに加えて大人のコーチングスタッフや運営スタッフがいます。日本の体育会部活動でも、コーチ・監督・部長といった役職で呼ばれる学生ではない社会人のスタッフの方がいるかと思います。多くの場合、他で仕事を持っているか、大学で働くなどしていて、合間にチームの活動に当たっているという方が多いでしょう。私が所属したチームにもコーチと呼ばれるスタッフが4名と、さらにサポートスタッフが2名、合計6名いました。日本の大学スポーツの常識からは考えられないことかもしれませんが、これら全て「チーム専用のフルタイムスタッフ」なのです。つまり、彼らの仕事は「バスケットボール」であり、大学のコーチといえどプロスポーツチームのコーチ・スタッフと変わらないわけです。
余談ですが、州立大学のコーチは扱いとしては公務員となるそうなのですが、ほとんどの州において大学のフットボールか男子バスケットボールのヘッドコーチが公務員として最も高い給料を得ています。
大学の規模によってはフルタイムスタッフの数は増減しますし、中にはパートタイムやボランティアで働いている人もいますが、Division Iのバスケットボールチームに限って言え概ね3-5名程度はチーム専用のフルタイムのスタッフがいるとみて間違いないでしょう。プロでなくとも、プロのようにスポーツを仕事にできる環境にあるのはアメリカ大学スポーツの非常に魅力的な点であるといえます。(ただし、プロと同様に結果を残せなければすぐにクビになりますし、プロと異なりバスケットボール以外の面の仕事も多分に存在します。)
最後になりますが、自分が所属していたチームは「女子」バスケットボールチームだったということを付け加えておきます。すなわち、女子スポーツにおいてもこれだけのフルタイムスタッフを揃えてチーム運営にあたっているということなのです。(ちなみに、これはアメリカ特有の事情が絡んでいるのですが、この点についてはまた別の機会に紹介したいと思います。)バスケットボールは女子スポーツの中でもとりわけ規模が大きい方ですが、他のスポーツでもDivision Iレベルであれば最低一人はフルタイムコーチがいる印象です。
個人的には、日本の女子スポーツはどの競技においても世界でかなり高いレベルにあるように感じているので、NCAA Division Iのレベルでも十分に通じる選手が多いと思っています。もし日本の高校生で大学進学を考え、且つ充実した環境で競技に取り組みたいという方は、アメリカの大学進学を一つの選択肢にしてみてはいかがでしょうか?
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