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ポールマッカートニー写真展を見て

六本木ヒルズ森タワー美術館で開かれていた「ポールマッカートニー写真展」を拝見してきた。もう東京展示は終わってしまっていて、今は大阪にて同じ展示が行われている。僕は写真を眺めて余韻に浸りながらビートルズ初期曲を聴きながら文章を書いている。

この写真たちとは

この展示で僕らに示されたのは、ビートルズが突如としてイギリスから世界を熱狂させ社会現象となる1963年12月からアメリカに渡ってを民衆を席巻した1964年2月までの約3か月間のプライベート写真たちである。

驚くのはそのほとんどがポール自身が手にしたNikonF2で撮られているという事実。フィルムの臨場感と雰囲気それだけで当時の熱狂が僕の心に無条件で踏み込んでくる。ムーブメントの渦中に対して無邪気な青年たち。そこには圧倒的な才能と魅力という存在。世の中すべては彼らを一挙手を見ていた。そして音楽と共に憧れの存在となった。写真からは熱狂の反対側から見る景色。狂気に似た声援、そして強烈な眼差し。彼らがまだ世界を席巻する存在ということを知らない。

作品はモノクロを含めたフィルム写真で構成されている。写真自体は記録写真に近い。不思議なのはこれほどの資料的価値写真が今になって発表されたことだ。僕が想像するにポール氏がこの時期の出来事を再考するには、あまりに嵐のように去った戸惑いの日々だったからではないだろうか。そして歴史としてとて刻まれた世界観とはかけ離れた、その裏側にある実感のない虚像に似た体感をポール自身も戸惑い記憶を消してしまったのではないだろうか。ただ、そこに現像されず残った写真だけが事実を証明することになったのだと。

写真構成は全体的にシンプルである。神格化した彼らとはまったく違う姿が僕の眼に新鮮に映る。ここにある写真は芸術的でもポップアートでもない。そこにある等身大の青年たちの記録写真が飾られているだけだ。ビートルズ自身が望んだというより世界が生み出したモンスターバンドを、時間を浸すフィルターを必要としていたのではないだろうか、と想像してみる。そんな想像を膨らませるのも写真展の楽しみである。

我々が生み出したモンスターバンド

彼らに熱狂する人々、そして狂気へ


ファインダーから見えた等身大の彼ら

僕らは本当の彼らの姿を見ていたのだろうか

写真から伝わる無邪気な4人の姿。彼らの圧倒的音楽やスタイルに魅了される民衆。時の大統領より影響力の集中と象徴的存在。それらは僕の想像のかなり遠くにあるようだ。
人は常に虚ろである。流行りも廃りも早いけれど音楽は死は訪れずそのままに残る。音楽的偉大さは、残された者たちがこの先も答えの無い物語を語り続ければいい。
はたして今を生きる僕と彼らの違いはあるのだろうか?テクノロジーが進化していても、数時間後には違う国への旅が許されていても。僕らの心に残った音楽たちは進化を求めていない。まるで古城に宿る魂に似ているのかもしれない。情報が多可になって物が溢れていても、迷い幸福という存在が益々遠くなる現代において誰もが一度は聞いたことがある曲たちは僕をどこか懐かしい場所に導いてくれる。まるで全てに対して「yes」と提示してくれているようだ。

写真の中の彼らはずっと遠いほうを見ている

この写真たちを眺めて

音楽が大好きな4人がファインダーから見える。
世界が熱狂する現実に戸惑いを隠せない仲間たちに対して、冷静にそして残酷にその運命を受け入れる覚悟を持ったジョン。彼は黙ってベットに横たわりギターを弾く。それは新しいステージに向けた新曲だろうか。いや、彼はただ自分の好きなメロディーを奏でているだけだ。
彼の才能を認め嫉妬すら感じながらシャッターを切るポールがそこに居る。才能を認め合った二人がそこに居る奇跡。もう叶うことの無い出会いだった。
多くの栄光を謳歌した若者から見えていた世界。そして写真に虚しさや問いはない。答えを求めがちな現代には程遠い記録写真。その時代を共に生きた人には輝いて見えた世界観。だけれど僕はこの写真展でみた意図は「ポールはジョンが大好き」というメッセージだった。

展覧会概要

東京「ポール・マッカートニー写真展 1963-64~Eyes of the Storm~」
会期:2024年7月19日(金)~9月24日(火)開催終了
会場:東京シティビュー
住所:東京都港区六本木6-10-1(六本木ヒルズ森タワー52階)
開館時間:10:00~19:00 金土は~20:00

大阪「ポール・マッカートニー写真展 1963-64~Eyes of the Storm~」
会期:2024年10月12日(土)~2025年1月5日(日)
会場:グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
住所:大阪府大阪市北区大深町3−1 地下1階
開館時間:10:00~18:00(最終入場は17:30まで)

【問い合わせ先】
ポール・マッカートニー写真展大阪実行委員会
TEL:050-5541-8600(全日9:00~20:00)

もう一度、ビートルズに会いに行こう


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