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内閣官房「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」のNote

*筆者註 
政府の安保関連3文書の原案となった「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」全文が、ようやく公表された。この全文を読むと、政府の御用学者らの「御用ぶり」がよく分かる。例えば、1回の会議で、わずか1分半から2分の発言時間しか与えられていない中、こんな重大な政策について「討議」したとされている。驚くべきことだ。
政府に忖度する学者・ジャーナリストを集めて、「国民の声」を聞いたとするこの「有識者」らの茶番劇を暴かねばならない。特に、朝日新聞、日経新聞、読売新聞のメディアらの「会議」への参加は、許しがたい、メディアの完全な翼賛化だ。
これらの軍事費2倍化、そして琉球列島のミサイル要塞化を重点とする岸田政権の「台湾有事」=戦争政策(2027年を射程)を許してはならない(この提言においても、決定された安保関連3文書においても、5年後の2027年の「敵基地攻撃能力」の完成が謳われている)。



●国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議 構成員

(五十音順)
上山 隆大  総合科学技術・イノベーション会議 議員(常勤)
翁 百合  日本総合研究所 理事長
喜多 恒雄  日本経済新聞社 顧問
國部 毅  三井住友フィナンシャルグループ 取締役会長
黒江 哲郎  元防衛事務次官・三井住友海上火災保険株式会社 顧問
佐々江 賢一郎  公益財団法人 日本国際問題研究所 理事長、三菱自動車工業取締役、富士通取締役
中西 寛  国立大学法人 京都大学大学院法学研究科 教授
橋本 和仁  国立研究開発法人 科学技術振興機構 理事長
船橋 洋一  元朝日新聞論説委員長・国際文化会館 グローバル・カウンシルチェアマン
山口 寿一  読売新聞グループ本社 代表取締役社長

*国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議(内閣官房)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/boueiryoku_kaigi/index.html

●第1回議事録(2022年9月30日)


・秋葉国家安全保障局長の提案
防衛力の抜本的強化の7つの柱。
1、スタンド・オフ防衛能力、
2、総合ミサイル防空能力により、我が国への侵攻そのものを抑止します。
3、無人アセット防衛能力、
4、領域横断作戦能力、
5、指揮統制・情報関連機能により、万一抑止が破られた場合に、相手を阻止、排除します。
6、機動展開能力、
7、持続性・強靱性を持って、迅速かつ粘り強く活動

-時間が限られておりますので、恐縮でございますが、お一人当たり2分程度でよろしく

・喜多委員 日本経済新聞
多額の予算をつけている公共投資も、安全保障を目的にもっと活用すべきだと。台湾有事の際も、拠点となる南西諸島の空港や港湾などの既存インフラ
は安全保障の資産になり得ます。有事を見越した備えを、平時から政府全体で取り組むこと
は、この会議でぜひ示していっていただきたい。

・黒江委員 防衛省OBの黒江
日中間の状況というのは、既に平素ではなくてグレーゾーンということだと思います。これが台湾有事の際には、容易に武力侵攻事態につながっていくという認識を持つ必要がある。
我々が最も懸念しておる事態といいますのは、国民もそうだと思いますが、中国による台湾に対する武力統一ということだと思います。
しかるに、では、自衛隊をどこまで強くしなければならないかということをきちんと示す必要があるだろうと。私は、台湾有事において、国と国民をきちんと守れるという防衛力をつくる必要がある、これを国民に明らかにするということが大事だと思っております。
そのための道筋、あるいはそれに向かっての国民の負担といったものをどうすべきかということを、年末の三文書の見直しに向けて国民の皆様に説明をするということが大事なのだろうと思います。

・佐々江座長
率直に言って過去に例を見ない大幅な防衛費の増額が必要であるということは確実であると思われるわけですが、そういう防衛費の財源について、……国民に対して、この防衛力の強化が待ったなしのことなのだ、そして、2番目に、防衛費の大幅な増額をしながら、国民の将来のために財政状況の改善も必要なのだということ、こういうことを国民に対してやはり率直に話して理解を求める必要があると私は個人的に思っております。

・浜田防衛大臣
我々は直ちに行動を起こし、5年以内に防衛力の抜本的強化を実現しなければなりません。このような点を踏まえて、他の政策手段についても、防衛力の抜本的強化に大いに貢献するかの観点から議論を期待したい。

●第2回議事録(2022年10月20日)

浜田防衛大臣
総理が繰り返し述べられているとおり、5年以内の防衛力抜本強化は政
府の最優先課題であります。世論調査を見れば、戦後の防衛政策を転換する防衛力強化の必要性については、国民の皆様にも御理解をいただいているのではないかと思います。その国民の負託に応え、防衛省・自衛隊が国の防衛の最後の砦としてその責務を完遂できるよう、有識者の皆様からも御支援いただければと思います。

・山口委員
防衛力の抜本的強化につきましては、防衛大臣の御発言のとおり、スタンドオフミサイルを配備して反撃能力を保有すべきでありまして、無人機の導入、継戦能力の向上も進めて、戦える自衛隊へ変革していくことが急務と考えます。5年以内に抜本的に防衛力を強化するということですので、戦略性・実現性の観点から優先順位をつけて、着実に成果を上げていただきたいと考えます。
5年以内というタイムラインを考えますと、例えばスタンドオフミサイルは国産の改良は数年以上かかって、2027年までに間に合わない可能性もあります。国産の改良を進めるのは重要ですが、当面は外国製のミサイルの購入を進めることも検討対象になる。

・船橋委員
「国力に見合った防衛力」というように固定的に考えるべきではない。確かに国力を超えた防衛力は持続性がない、しかし、抑止力が大きく崩れるとかバランス・オブ・パワーが崩れるような状況変化が起こっている時には、国力以上の防衛力を前倒しで担保しなければならないときもある。国力はその潜在力を引き出すことで可変的になりうるということです。

・中西委員
実際に抑止が破れた場合に、日本にとって一番の脆弱性は、日本社会がミサイルが降ってくる状態について耐えられるかどうかということで、たとえ反撃能力があり、敵基地攻撃能力を持っても、中国、北朝鮮等のミサイル能力を考えれば、今のウクライナが受けているような攻撃を受けるということを
前提に我々は計画を立てる必要があるだろうと思います。そのためには、国民防護、ウクライナのようなシェルターをすぐにつくるというようなことはもちろん無理だと思いますが、それについてきちんとした計画を持っていること。
金融の問題を含めた官邸での経済財政諮問会議の場で、有事の際にどのようなリスクが発生するのか、それに日本はどう耐え得るのか。例えば中国を相手にすれば、中国にある日本の在外資産が接収をされる、あるいは取引ができなくなるというようなことは十分考えられるわけですから、そういう場合に日本経済をどのように維持するのか。
2番目はやはり電力・通信の問題でありまして、今、ロシアがウクライナに
対してやっていますけれども、電力インフラを潰すことが相手の継戦意志、継戦能力をたたく上では最も有効なので、原発に対するミサイル攻撃も含めて十分考えられることだと思いますので、そういう事態に自衛隊以外の部分も含めてどのように対処するかという計画を持っていないと抑止力にならないということ

・黒江委員
今回は具体的にロシアあるいは中国、北朝鮮といった脅威の能力の面に着目をした防衛力の整備をするという意味で、言わば脅威抑止型の防衛力をつくるのだということミサイルのその能力をどのようにして発動するのかと。これは他国の領域にあるアセットを攻撃するという非常に重大な決断になるわけですので、発動について、例えばまさに政治レベルにその発動の権限を付与する。例えば国会承認といったことも私は視野に入れたらいいと思う。

●第3回議事録(2022年11月9日)


・松野内閣官房長官

公共インフラですが、国家安全保障局、防衛省及び国土交通省を含む関係府省会議の議論を経て、自衛隊、海上保安庁のニーズに基づき、国土交通省が関係府省と連携して、空港・港湾等の公共インフラの整備や機能強化を行う仕組みを創設します。
具体的には、関係府省会議において、南西地域における空港・港湾・自衛隊・海上保安庁の配備・利用が想定される空港・港湾、国民の保護のために必要な空港・港湾等について、自衛隊・海上保安庁のニーズを踏まえ、特定重要拠点空港・港湾、これは仮称でございますが、その整備・運用方針を定め、利用等に係る規程の整備を行います。

・折木元統合幕僚長                          これからの安全保障環境を考えれば、継戦能力、抗たん性、運用の柔軟性等を考慮すべきであり、南九州や四国なども視野に入れた整備が必要だと思います。また、米軍の支援、協働という観点からも必要です。
一方で、使用できなければ意味がありません。今、多くの制約がある港湾や空港のインフラを含めて、地元や関係自治体の御理解の下、自衛隊が平時から柔軟に利用できるよう関係省庁の御尽力を切にお願いをしたい。
真に戦える自衛隊にするために、正面装備ばかりでなく、今、議論いただいている装備の維持・整備、弾薬庫の整備、備蓄等の推進が必須であります。第一線から後方で組織全体の戦力化が必要です。欠落があると、真に戦えません。反撃能力の保有は、もちろんです。

・船橋委員
特に、日本の場合に考えなくてはいけないのは、有事の際のシーレーンの防衛と商船隊の防護です。日本は島国でございますので、シーレーンと商船隊が地政学上逃れられない弱い環(リンク)であり続けています。ここについてゼロベースから問い直す必要があります。日本のシーレーンはどうなのかと、商船隊防護はどうなのかと。
台湾有事の際、インド洋に出るまでの台湾東方、フィリピン、インドネシア海域での安全な航行へのリスクが高まることが考えられます。また、台湾からの邦人の輸送も必要です。これらの海域において自衛隊と海上保安庁がそれぞれどういう使命と役割で商船隊防護に当たるのか、そのドクトリンはどうなのか。作戦はどうなっているのか。まことに心もとないと感じます。

2つ目が、基地の日米共同使用を促進するということでございます。アーミテージ・ナイレポート(2018年)が指摘したように「それぞれ別々に基地を持つぜいたくは許されない」時代へ入ったことを認識すべきだと思います。基地の共同使用は、ムダを省き、相互運用性を向上させ、日米共同で反撃能力を強化し、抑止力を高める意思決定の共有という戦略的協調にほかなりません。
・特に南西諸島と先島での共同使用態勢を整えるべきであると思います。反撃能力を備えたミサイルの保有が必要としても、その配備場所を確保しなければ意味がないですし、継戦能力を確保するには、弾薬の事前集積が不可欠です。
・最後は財源でございますけれども、幅広く国民に負担していただくのが筋であると考えます。その際、個人の所得税の引上げも視野に入れる必要がある。

*佐々江座長
研究開発と公共インフラの問題につきましては、よくぞここまできたと感じております。これまで、先端技術に関するデュアルユースの研究開発や、南西諸島の空港・港湾の利用などは、本当に手付かずだったと思います。これが、新しい制度ができるのは非常にいいことだ。

●第4回議事録(11月21日)


・「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議 報告書(案)」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/boueiryoku_kaigi/dai4/houkokusyo.pdf

*佐々江座長
時間が限られておりますので、誠に恐縮ですが、お一人当たり1分半程度でよろしくお願いいたします。

・船橋委員
1つだけ最後に、防衛力抜本的強化の場合には防衛費を増やす。これは避けられないと思いますけれども、ガバナンスイノベーションによって、それをより確かなものにするということはとても重要だということを今までも幾つか提案させていただきました。

・喜多委員
今回の防衛力強化は中国の脅威を念頭に置いたものだと私は理解しているのですが、中国の軍事力の増強は中国のかなり高い経済成長と歳入の増加によって実現していることを留意すべきだと思っています。5年後、10年後の期間を見据えて防衛力を抜本的に強化していくなら、必要な資金を賄う経済成長と強固な財政基盤をつくり上げていかねばならないと思っています。経済力を強化して、国を強くして、そして、国民の理解を得て防衛力の強化に取り組んでいく。

○佐々江座長
皆様から貴重な御意見をいただきありがとうございました。
これまでの各委員からの御発言を踏まえますと、この報告書(案)自体については、皆様、御了承ということかと存じます。
本日の資料につきましては、今後、体裁を整えた上で、後日、私から総理に手交いたしまして公表することとしたいと思っております。
その日程については、私に御一任いただけますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)


●「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議 報告書(案)」のポイント

*反撃能力・継戦能力
・インド太平洋におけるパワーバランスが大きく変化し、周辺国等が核ミサイル能力を質・量の面で急速に増強し、特に変則軌道や極超音速のミサイルを配備している中、我 が国の反撃能力の保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠である。なお、反撃能力の発動については、事柄 の重大性にかんがみ、政治レベルの関与の在り方についての議論が必要である。その際、国産のスタンド・オフミサイルの改良等や外国製のミサイルの購入により、今後5年を念頭にできる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべきである。

自衛隊に常設統合司令部と常設統合司令官を設置することも早急に検討する必要がある。

*防衛力の抜本的強化と総合的な防衛体制の強化
現在、我が国が置かれている安全保障環境は、非常に厳しく、「待ったなし」の状況にあり、中途半端な対応ではなく、防衛力の抜本的強化をやり切るために必要な水準の予算上の措置をこの5年間で講じなければならない。

*公共インフラ
公共インフラも安全保障を目的とした利活用を更に進めるべきである。特に南西諸島の港湾や空港などの公共インフラは安全保障上の重要な機能を担い得る。自衛隊・海上保安庁の配備・利用が想定される空港・港湾、国民保護
のために必要な空港・港湾等を含め、有事を見越して、平時から政府全体で備えることが重要である

・加えて、有事の際に国民の命を守る避難施設の整備も平時から進める必要がある。地方自治体と住民の協力を得ながらこれらの取組を進めていくためには、政府が一体となって努力する必要がある。

・武力攻撃事態等における自衛隊・海上保安庁の展開、その前提となる平時の訓練その他我が国の平和と安全のための任務の遂行のための利用や国民保護への対応の実施を円滑に行うため、国家安全保障局、防衛省及び国土交通省(海上保安庁を含む)を含む関係府省会議の議論を経て、自衛隊・海上保安庁のニーズに基づき、国土交通省が関係府省と連携して、空港・港湾等の公共インフラの整備や機能強化を行う仕組みを創設する。

具体的には、国家安全保障局、防衛省及び国土交通省を含む関係府省会議において、南西地域(特に先島諸島)における空港・港湾、自衛隊・海上保安庁の配備・利用が想定される空港・港湾、国民保護のために必要な空港・港湾等について、自衛隊・海上保安庁のニーズを踏まえ、「特定重要拠点空港・港湾」(仮称)の整備・運用方針を定めた上で、それを空港法・港湾法に基づく基本方針に反映させ、利用等に係る規程の整備を行う。

・財源の確保
防衛力の財源についてはその規模と内容にふさわしいものとする必要がある。防衛力の抜本的強化に当たっては、自らの国は自ら守るとの国民全体の当事者意識を多くの国民に共有して頂くことが大切である。その上で、将来にわたって継続して安定して取り組む必要がある以上、安定した財源の確保が基本である。これらの観点からは、防衛力の抜本的強化のための財源は、今を生きる世代全体で分かち合っていくべきである。

・歳出改革の取組を継続的に行うことを前提として、なお足らざる部分については、国民全体で負担することを視野に入れなければならない。
国を守る防衛力強化が急務となっているなか、国を守るのは国民全体の課題であり、国民全体の協力が不可欠であることを政治が真正面から説き、負担が偏りすぎないよう幅広い税目による負担が必要なことを明確にして、理解を得る努力を行うべきである。 
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/boueiryoku_kaigi/dai1/gijiroku.pdf

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小西 誠
私は現地取材を重視し、この間、与那国島から石垣島・宮古島・沖縄島・奄美大島・種子島ー南西諸島の島々を駆け巡っています。この現地取材にぜひご協力をお願いします!