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Polyclonal hypergammaglobulinaemia: assessment, clinical interpretation, and management
Lancet Haematol 2021; 8: e365–75
多クローン性高ガンマグロブリン血症のreviewです.
Introduction
ポリクローナル高ガンマグロブリン血症の原因は、以下の8つのカテゴリーに分類される.
肝疾患、自己免疫疾患や血管炎、感染や炎症、血液疾患、血液疾患以外の悪性腫瘍、IgG4関連疾患、免疫不全症候群、医原性(IVIG).
血清のCRP測定、IgGサブクラス測定は診断に有用である.
IL6を介する炎症は持続するCRP上昇(30mg/L以上=3mg/dL)を惹起し、ポリクローナル高ガンマグロブリン血症を誘導する.
IgG4の著明な上昇(>5g/L=500mg/dL)はIgG4関連疾患の診断に特異性が高いが(90%以上)、軽度のIgG4の上昇は多くの状況で認められる.
ポリクローナル高ガンマグロブリン血症の治療はほとんどの場合、原疾患の治療だが、まれに高粘稠症候群を引き起こし、血漿交換が必要となる.
血清蛋白電気泳動は、白血球減少、自己免疫疾患、免疫不全、炎症性疾患、リンパ増殖性疾患、形質細胞性疾患の検索に行なわれる.
パラプロテイン疾患(異常蛋白症)のガイドラインは存在するが、ポリクローナル高ガンマグロブリン血症の管理に関する文献はほとんどない.
多くの場合、ポリクローナル高ガンマグロブリン血症は肝疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患に対する生理的な反応である.
しかし、ポリクローナル高ガンマグロブリン血症はEGPA、キャッスルマン病、Rosai–Dorfman病など診断が難しい疾患の手がかりになるかもしれない.
5つの免疫グロブリン重鎖が上昇する原因疾患をtable 1に表示する.
ポリクローナルなIgM濃度の上昇は典型的にはB細胞の免疫グロブリンのクラススイッチの障害である.
IgAのポリクローナルな上昇は一般的には肝硬変によることが多いが、IgA腎症、IgA血管炎、AIDS、自己免疫疾患(セリアック病、RA、SLE)でも多い
最近、重症COVID-19感染者でIgAが上昇することが報告された.
IgDの上昇は、hyper-IgD症候群で認められる.
IgEの上昇はアトピー性皮膚炎のようなアレルギー疾患、リンパ腫、hyper-IgE症候群で認める.
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肝疾患
肝疾患によるポリクローナル高ガンマグロブリン血症は一般的に軽度だが、自己免疫性肝炎やウイルス性肝炎では著明にIgGが上昇することがある.
アルコール使用、IBD、嚢胞性線維症、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、α1アンチトロンビン欠損、肝毒性のある薬物の使用について病歴を確認する.
自己免疫性肝炎では、通常ポリクローナル高ガンマグロブリン血症を呈し、これらの中にはIgG4関連疾患の患者が含まれる.
抗核抗体、抗平滑筋抗体、抗LKM抗体の測定、CTや超音波などの画像検査が診断に有用である.
超音波エラストグラフィ(FibroScanなど)は線維化の程度を非侵襲的に評価可能.
蛋白電気泳動におけるβ-γ架橋パターンは、しばしばIgAのポリクローナルな上昇を反映し、肝疾患でよく見られる.
自己免疫疾患・血管炎
著明なポリクローナル高ガンマグロブリン血症を呈する自己免疫疾患は、シェーグレン症候群、RA、EGPAである.
抗核抗体を測定した後に、より特異的な核抗原のテストが推奨される.
EGPAは最大70%でANCA陰性なので、好酸球増多とポリクローナル高ガンマグロブリン血症のため、しばしば血液内科に送られる.
感染症・炎症性疾患
治療前のHIV患者の最大50%でポリクローナル高ガンマグロブリン血症を認める.
HIV感染により、メモリーB細胞とhyperactivate naive B cellが減少すると言われている.
他の慢性炎症性疾患として、結核などがある.
IgG4関連疾患
IgG4関連疾患は線維性炎症性疾患であり、あらゆる臓器の腫瘍性病変、後腹膜線維症、縦隔線維症を呈する.
血液専門医に紹介される一般的な理由としては、リンパ節腫脹、好酸球増多、多クローン性高ガンマグロブリン血症などがある.
好酸球増多症と多クローン性高ガンマグロブリン血症と診断された患者の中には、実際には未診断のIgG4関連疾患の患者が含まれているだろう.
IgG4関連疾患の患者のほとんどがアトピーを合併しないが、これら非アトピー患者で、IgE濃度の上昇と末梢好酸球増多が認められる.
濾胞性ヘルパーT細胞はIL-4とIL-19を分泌し、IgG4発現へのB細胞のクラススイッチの役割を担っている.
一般に、IgGおよびIgG4の産生は、白人よりもアジア人のIgG4関連疾患で高く、よって検査感度はアジア人の方が高い.
IgG4関連疾患は他の疾患と類似していることがあり、確定診断は臨床と病理学的検査の相関による.
ほとんどの場合で組織学的な確定が理想的である.
ACRとEULARは分類基準を作成しており、必ずしも組織診断がなくても診断できるようになっている.
IgG4関連疾患の病因において自己抗原であるannexinA11、laminin-511、prohibin、galectin3の関与が示唆されている、この疾患の基礎に自己免疫性疾患の機序があるものの、これらの抗原によって引き起こされる免疫学的なメカニズムについては依然論争がある.
血液疾患
多くの(だが稀な)血液疾患は、多クローン性高ガンマグロブリン血症を呈する.
多クローン性高ガンマグロブリン血症は、多中心性キャッスルマン病の診断基準に含まれる.
キャッスルマン病とIgG4関連疾患は、共に多臓器に浸潤し、リンパ節腫脹をきたし、血清IgG4値と共に多クローン性高ガンマグロブリン血症となるなど、多くがオーバーラップするが、キャッスルマン病ではより急性に発症する.
2017年の(HHV-8陰性)キャッスルマン病の診断基準では、血清IgG4濃度が高く、病理でIgG4陽性形質細胞が多い患者であっても、キャッスルマン病の診断がIgG4関連疾患の診断に優先する(supersede)ことが示されている.
多中心性キャッスルマン病は高IL-6となり、CRPは30mg/L=3mg/dL以上となる.
キャッスルマン病の組織(リンパ節など)ではIgG4陽性形質細胞が増加しているが、IgG陽性形質細胞に対するIgG4陽性形質細胞数は40%未満である(IgG4関連疾患の診断に必要な).
また他のIgG4関連疾患の特徴である、花筵状線維化(storiform fibrosis)と閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)はキャッスルマン病では見られない.
自己免疫性のリンパ増殖性疾患は、FAS遺伝子に生殖細胞変異または体細胞変異が起こり、引き起こされる.
制御不能になったリンパ球の増殖により、リンパ節腫脹、肝脾腫が起こる.他の特徴として自己免疫性の白血球減少、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、全身症状が起きる.
自己免疫性リンパ増殖性疾患(ALPS)
慢性のリンパ節腫脹,脾腫などを特徴とし,自己免疫疾患を合併する症候群.
多系統の血球減少がみられることが多い.FAS誘導アポトーシスに関与するFAS、FASリガンド、カスペース10の遺伝子異常で発症する.
患者数は、全世界で400例ほど、本邦で20例程度と推定されている.
海外からの報告によると、ALPS-FASの発症年齢は平均2.7歳、50歳までの生存率は〜85%とされている.
一般的に保険収載されている検査のみでは,確定診断は困難で、血清中の可溶性Fasリガンド(sFasL),IL-10の上昇,末梢血中のTCRα/β陽性,CD3陽性,CD4/CD8二重陰性リンパ球(double negative T:DNT)の増加などにより診断を行う.
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CRP上昇を伴う多クローン性ガンマグロブリン血症を呈する患者の病態
IL-6の上昇は多クローン性ガンマグロブリン血症を伴う疾患の病態として中心的な役割を果たすと考えられてきた.
IL-6は肝細胞を刺激し、CRPを産生する.
多くの検査室では、IL-6を測定しないので、CRPが30mg/L以上であることを高IL-6状態であることの代替マーカーとして使用する.
様々な炎症状態(強直性脊椎炎、心筋梗塞後、肥満など)で、CRPとIL-6が相関することが示されている.
IL-6は1970年代に発見され、最初はB細胞刺激因子2として知られていた.
この多能性を有したサイトカインは、炎症、造血、免疫反応において、抗体分泌細胞へのB細胞成熟の誘導、形質細胞の維持と生存の補助、肝細胞における急性期タンパク質の合成など、多くの役割を担っている.
多中心性キャッスルマン病は典型的な高IL-6症候群と考えられている.
マウスの造血細胞でIL-6遺伝子を人工的に活性化させると、多中心性キャッスルマン病に似た症候群が生じ、多クローン性高γグロブリン血症となる.
キャッスルマン病患者のリンパ節はIL-6を多く含み、患者の多くはトシリズマブかシルツキシマブでIL-6を抑制する治療が有効である.
皮膚および全身性形質細胞症は、皮膚、リンパ節、骨髄などの様々な臓器系における形質細胞浸潤、および多クローン性高ガンマグロブリン血症、時には高粘度症候群を特徴とするまれな高IL-6症候群である.
IL-6はRosai–Dorfman病の病態でも役割をはたしており、IL-6の阻害により単球機能を阻害する核酸アナログがこの疾患の治療に有効である.
自己免疫性肝炎は、感染などの環境因子がトリガーとなり、肝細胞を障害すると考えられている.それにより肝の自己抗原がT細胞、B細胞に提示される.
IL-6とTGF-βはCD4+Th細胞からTh17細胞への分化を誘導する.
Th17細胞はIL-17とIL-23を分泌し、肝細胞によるIL-6の産生を誘導する.
IL6のシグナル伝達は、サイトカインがIL6受容体サブユニットベータ(IL6RB)を発現する細胞上のIL6受容体に関与することで起こる.
膜結合型IL6RBを介した古典的なシグナル伝達経路は、免疫細胞(例えば、リンパ球や単球)、肝細胞、および腸上皮細胞に限られている.
他のほとんどの組織では、可溶性IL6受容体と可溶性IL6RB緩衝系が関与するトランスシグナル伝達経路によりシグナル伝達が行われる.
トランスシグナルは、多クローン性高γグロブリン血症にも関与している.
免疫刺激があると、古典的樹状細胞は可溶性IL6受容体を十分に分泌し、可溶性IL-6RB阻害に打ち勝つため、プラズマブラストの形質細胞への成熟が促進される.
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CRP上昇を伴わない(lowまたはmodestly elevate)多クローン性ガンマグロブリン血症の病態
IL-6は、炎症性状態における多クローン性高γグロブリン血症において重要な役割を持つが、多クローン性高γグロブリン血症は全身性炎症がなくても起こりうる.
さらに多クローン性高γグロブリン血症は、ある種の高IL-6症候群(COVID-19のサイトカインストームなど)においては起こらない場合もある.
IgG4関連疾患はRosai-Dorfman病やCastleman病に臨床的に類似しているが(リンパ節腫脹や多クローン性高γグロブリン血症など)、全身性の炎症は弱く、CRPは30mg/L以下の場合が多い.
IgG4関連疾患における多クローン性高γグロブリン血症は、、CD4+エフェクターメモリー細胞、B細胞、プラズマブラスト、およびIL4、IL10、TGFβを含むサイトカインや成長因子の混合物が関与する複雑な免疫調節異常を背景として起こる.
肝硬変では、肝臓でのフィルター機能の消失により、腸管の抗原やエンドトキシンが体内の免疫機構に接近し、IgGやIgAの産生が増加する.
このフィルター機能の欠如は、クッパー細胞の細胞障害によるものかもしれないし、単に門脈循環から全身循環への抗原の血行力学的シャントの現れかもしれない.
肺サルコイドーシスでは活性化したT細胞が肺組織でIgGの産生を仲介すると思われている.
IgGの上昇とIgMの低下は、自己免疫性リンパ増殖性疾患ではよく見られる.
これらの血清学的異常は、多糖類反応の欠陥、脾縁帯の無秩序化、リンパ節脾臓における形質細胞の増加によって引き起こされる.
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスを感染させたマウスは、おそらくピノサイトーシス(エンドサイトーシスの一つで、細胞が小さな小胞を用いて周りの環境から細胞外液を繰り返し取り込む作用)過程を通して、B細胞受容体の特異性に関係なく、CD4+ T細胞がウイルスペプチドを認識する際に高ガンマグロブリン血症を呈する.
次にB細胞は、T細胞レセプター、MHCクラスII分子、CD40-CD40L結合を介して相互作用しながら、ウイルス特異的T細胞からヘルプを受ける.
活性化したB細胞は、非特異的な免疫グロブリンを産生し、ポリクローナル高ガンマグロブリン血症の状態になる.
それによりB型肝炎関連糸球体腎炎やC型肝炎関連クリオグロブリン血症で見られるような、有害な自己抗体や免疫複合体が産生されてしまう場合がある.
HIV感染におけるB細胞およびT細胞の異常な(Aberrant)活性化は広く研究されているが、この状況における多クローン性高γグロブリン血症の正確なメカニズムはまだ解明されていない.
ほとんどの研究で、B細胞の活性化は抗原依存性であり、B細胞とT細胞の相互作用が非特異的な形で起こる.
ナイーブB細胞が活性化され、CD70を発現し、IgG発現にクラススイッチし、ポリクローナルIgG抗体を産生する.
B細胞はToll-like レセプター9により活性化されDNAのCpGサイトを認識する.
HIVアクセサリータンパク質Tatによって、HIV感染マクロファージやHIVウイルスタンパク質を介して間接的に、またサイトメガロウイルスやエプスタイン・バーウイルスなどの潜伏ウイルスや重複感染ウイルスに特異的なT細胞からの刺激によって誘導される.
Investigating polyclonal hypergammaglobulinaemia
身体検査ではリンパ節腫脹、唾液腺の腫脹、肝脾腫、関節炎・滑膜炎、慢性肝疾患の兆候、皮膚病変の有無.
著明なIgG値の上昇がある場合(IgG>60g/L)、過粘稠の症状や所見、視野異常、高拍出性心不全の所見、粘膜出血、網膜出血、乳頭浮腫、について評価すべき.
血清蛋白電気泳動、肝酵素、ウイルス血清、抗核抗体、CRP、免疫グロブリンの定量(IgG、IgA、IgM、IgGのサブクラス分析)を(臨床検査ですぐに原因がわからない場合)行うべきである.
電気泳動でβ-γブリッジングがある場合は、IgAのポリクローナルな上昇(肝疾患でよく見られる)かIgG4の上昇を意味するかもしれない.
肝疾患や悪性腫瘍の検索のため、画像検査が必要になる患者もいる.
初期検査をもとに、多クローン性高γグロブリン血症の原因を、CRPが上昇した高炎症状態(>30mg/L)によるものか、CRPの上昇が軽度である病態(<30mg/L)かにまず分ける.
なおEGPAや慢性感染症のように著明なCRPの上昇を伴う炎症性疾患もあるが、シェーグレン症候群やSLEのようにCRPが低値な場合もある.
同様にIgG4関連疾患やアルコール性肝硬変などの疾患は、典型例ではCRPは低値だが、感染症やその他の急性炎症のプロセスが合併することもある.
多クローン性高γグロブリン血症が起こりうる病態の範囲と、多クローン性高γグロブリン血症の解釈におけるピットホールを説明するために、4つの症例を表2と図3にまとめた.
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血清免疫グロブリンの測定法
免疫電気泳動法、免疫比濁法、 IgGサブクラス検査はすべて、多クローン性高ガンマグロブリン血症の調査において重要な補完的役割を担っている.
IgG1、IgG2、IgG3濃度は典型的には蛋白電気泳動のガンマ領域に認める一方、IgAとIgG4は初めのガンマ領域に当たる(Fig. 3)=β領域とガンマ領域の窪みが不明瞭になる場合があり、これをbeta–gamma bridgingという.
従来、血清蛋白電気泳動でβ-γ bridgingを伴うポリクローナル高ガンマグロブリン血症は、肝硬変によるIgA濃度のポリクローナル上昇に起因するとされてきたが、IgG、IgA、IgMの定量的免疫比濁法を行えば、免疫グロブリンのアイソタイプの上昇は容易に明らかになる.
免疫比濁法により得られた免疫グロブリン濃度は、血清蛋白電気泳動で得られた濃度よりかなり高くなる.
単クローン性ガンマグロブリン血症の場合とは異なり、多クローン性高ガンマグロブリン血症では、尿蛋白電気泳動と血清遊離軽鎖アッセイではほとんど追加情報は得られない.
多中心性キャッスルマン病や慢性HIV感染症などの疾患では、血清タンパク電気泳動の結果がM蛋白血症に類似することがあるが、免疫固定法では、M蛋白の免疫グロブリンバンドの存在とポリクローナルγグロブリンの異常な分布とを区別することができる.
血清蛋白電気泳動の結果を解釈する臨床医は、IgG4の増加によって起こる多クローン性高ガンマグロブリン血症が、M蛋白血症に類似することに気づくべきである=つまり蛋白電気泳動法と蛋白固定法を行う場合、IgGサブクラステストも行うべき.
IgG4関連疾患の臨床的特徴(自己免疫性膵炎、唾液腺腫脹、眼窩偽腫瘍、後腹膜線維症)は、形質細胞多発性骨髄腫(貧k熱、高Ca血症、溶骨性病変)とはほとんどの場合区別できるが、部分的にオーバーラップする点もある(腎不全、骨髄や障害臓器での形質細胞の増加、血球減少).
IgG多発性骨髄腫の1-5%がIgG4多発性骨髄腫である.
IgGサブクラスの測定に対する最近の関心は、IgG4関連疾患の出現に牽引されているが、IgGの4つのサブクラスは、1960年代のIgG骨髄腫の研究で発見された.
サブクラスは存在量の多い順に命名されたので、IgG4は血清中濃度が最も低く、ほとんどの検査室での正常値の上限は1.25-1.50g/L(125-150mg/dL)である.
多クローン性高ガンマグロブリン血症のほとんどの原因は、IgG1濃度の上昇による.
IgG4の軽度の上昇(1.5-5.0g/L=150-500mg/dL) )は様々な疾患で見られ非特異的であるが、5.0g/L以上の場合、IgG4関連疾患の診断において約90%の特異度がある.
IgG4の著明な上昇はEGPA、多中心性キャッスルマン病、他の状況でも認めることがある(Table 2).
IgG4関連疾患では、血清中のIgG4:IgG比はしばしば10%を超える.
重要なことは、血清タンパク電気泳動とIgGサブクラス検査を同時に行い、免疫グロブリンの上昇がモノクローナルかポリクローナルかを確認することである.
ほとんどの検査室で、IgGのサブクラス分析は免疫比濁法で行われる.
カナダのブリティッシュコロンビア州では、費用対効果の高い液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析計を用いた分析法が選択されている.
※この後、IgG検査法について述べられているが省略する.
IgGサブクラスの解析は、他の疾患においても価値があるかもしれない.
IgGサブクラスのいずれかが単独で増加した患者552人を対象とした後ろ向き研究で、いくつかの特定の疾患と統計学的に有意な関連があった.
HCV感染症とM蛋白血症は優位にIgG1の単独の上昇と関連した.
IgGのサブクラスの変化は特定の肝疾患に関連していた.
IgG1:IgG比の増加はウイルス性肝炎で認められた.
自己免疫性肝炎でもIgG1の上昇と関連した.
PBCはIgG3が上昇し、IgG4が低下していた.
SLE、HIV、慢性感染症はIgG1が上昇していた.
RAではIgG1かIgG3が単独で上昇していた.
甲状腺機能低下症と過敏性腸症候群ではIgG2が上昇していた.
EGPA、シェーグレン症候群、キャッスルマン病、lymphocyticvariant HESではIgG4が上昇していた.
多クローン性高ガンマグロブリン血症の管理
ほとんどの場合、原因疾患を治療することで、多クローン性高ガンマグロブリン血症の原因となる免疫異常や炎症病態を改善できる.
多クローン性高ガンマグロブリン血症に関連するまれな血液疾患に対する治療法の選択肢をTable 2およびappendix(pp.1-3)に示す.
自己免疫性溶血性貧血や免疫性血小板減少症などの患者は、自己免疫性リンパ増殖症候群(多クローン性高ガンマグロブリン血症を呈する)やCVID(低ガンマグロブリン血症を呈する)などの疾患を除外するために、ベースラインの蛋白電気泳動と定量的免疫グロブリン検査を受けるべきである.
IgG4関連疾患の場合、治療のファーストラインはステロイドやリツキシマブである.
約80%の患者はステロイドに反応し、PSL換算 0.5-1.0mg/kgを3-4週間継続する.
リツキシマブによるB細胞の消失は、IgG4関連疾患の疾患活動性に必要な免疫状態を破壊し、95%以上の患者が満足いく臨床的・生化学的反応を示す.
我々が好む治療方法では、リツキシマブ 1gを2週間空けて2回投与する.
IgG4濃度はベースライン値から90%以上低下し、症状や臓器障害が改善した患者は、蛋白電気泳動・IgGサブクラス、臓器障害の腫瘍マーカー(肝酵素、リパーゼ、Cre、尿Alb/Creなど)を含む血液検査を毎月検査しフォローアップする.
多くの患者は1年以内にリツキシマブの再治療か、低用量のステロイド治療、アザチオプリンやMMFなどのステロイドスペアリング薬剤が必要となる.
ステロイド抵抗性またはリツキシマブ抵抗性の場合、標準治療はないが、命に関わる状況の場合は、ベンダムスチンとリツキシマブの併用療法を考慮する
過粘稠症候群は免疫グロブリンの単クローン性またはポリクローナルな増加の稀な合併症であり、有症状の患者は緊急の血漿交換を行うとともに、原疾患の治療が必要である.
典型的な症状は粘膜出血、視野異常、神経学的変化である.
過粘稠症候群は、典型的にはモノクローナルなIgMが50g/L (5000mg/dL)の場合(リンパ形質細胞性リンパ腫)、IgGが60-70g/L以上、IgAが50g/L以上(形質細胞性多発性骨髄腫)に起こる.
多クローン性高ガンマグロブリン血症が過粘稠を起こすのは、IgGが60g/Lを超える場合であり、シェーグレン症候群、HIV感染、RA、自己免疫性リンパ増殖性症候群、IgG4関連疾患で報告されている.
Conclusion
M蛋白の場合、MGUSか他の形質細胞性の悪性腫瘍やリンパ増殖性疾患かを検索する必要があるように、多クローン性高ガンマグロブリン血症もまた、8つのカテゴリーのどれが原因なのかを調べる必要がある.
我々が概説したアプローチにより、臨床医と検査医はポリクローナル高ガンマグロブリン血症の正確な診断において合理的なアプローチをとることができる.
ほとんどの場合、注意深い臨床検査と、IgGサブクラス検査やCRP濃度測定を含む基本的な臨床検査によって、原因が明らかになる.
まれに、多クローン性高ガンマグロブリン血症は、多中心性キャッスルマン病、自己免疫性リンパ増殖症候群、IgG4関連疾患、Rosai–Dorfman病などのまれな疾患の診断の重要な手がかりとなることがある.
ポリクローナル高ガンマグロブリン血症の管理には、通常、基礎疾患の治療が必要であるが、過粘稠症候群を起こしうるためその場合は血漿交換が必要になる.