(動画)OpenAIのo1 (Strawberry) についての議論:推論能力向上への道筋
OpenAIのo1 (Strawberry) についての議論:推論能力向上への道筋
こんにちは、makokonです。近年のAI発展は目覚ましいものがありますが、中でも大規模言語モデル(LLM)の進化は目を見張るものがあります。しかし、LLMは時に期待通りの推論結果を出力しないこともあり、その精度向上は喫緊の課題です。今回、OpenAIの研究者たちがo1(Strawberry)の開発秘話やLLMの推論能力向上について議論している大変興味深い動画を見つけました。o1は、LLMと深層強化学習(Deep RL)を融合させた革新的なモデルで、その推論能力向上のアプローチは、私たちが普段LLMを使う上でも大いに参考になる知見が満載でした。本記事では、この動画の内容を基に、o1の特性やLLM推論能力向上のヒントを探っていきます。
はじめに
このドキュメントは、Sequoia CapitalのSonya HuangとPat Gradyがホストを務める、OpenAIの研究者Noam Brown, Ilge Akkaya, Hunter Lightmanによるo1(別名Strawberry)についての議論の様子です。
o1は、多くの主要なAI研究所が目指してきたLLMとAlphaGoスタイルの深層強化学習の融合を実現した、最も汎用的なモデルです。数学に優れており、既に多くのベンチマークでSOTA(State-of-the-Art)を達成しています。思考連鎖とバックトラッキングを用いて問題解決を行い、強力なテスト時計算スケーリング則を発見しました。今後のモデルの進化に期待が持たれています。
この記事では、o1の技術的特徴とパラダイムシフトの観点からまとめています。
1. 思考の深化:時間をかければ賢くなる!?
推論時計算スケーリング則とは
o1の最も重要な技術的特徴は、推論時計算スケーリング則の発見です。従来のLLMは、学習済みのモデルに即座に回答を生成させていましたが、o1は推論に時間をかけ、思考を深化させることで性能を向上させます。これは、人間のシステム2思考(じっくり考える思考)に類似しており、複雑な問題解決に効果的です。このスケーリング則は、AIの性能向上における新たな次元を示唆し、今後の発展に大きな期待が持たれています。
コメント
考えれば考えるほど、性能が向上する。とにかく、拙速に至らぬよう考えさせよう。
2. 思考過程の可視化:何を考えているかわかれば、アドバイスもできるよね。
思考連鎖とバックトラッキング
o1は、思考連鎖を用いて、人間が理解できる形で推論過程を記述します。これは、モデルの思考過程を分析し、改善点を特定するのに役立ちます。さらに、o1はバックトラッキング(行き詰まった際に、前のステップに戻って別の方法を試す)能力も備えています。これらの技術により、o1はより複雑な問題にも対応できるようになり、AIの透明性と信頼性向上にも貢献します。
コメント
推論する順序をあらかじめLLMに答えさせて、step-by-stepで考えさせる。考えた結果を前のステップの流れと合わせて矛盾を検証したり、前のステップのバリエーションを改めて考えるように人間が修正しても良さそう。プロンプトでできるかな。
3. LLMとDeep RLの融合:行動が環境を変化させる。変化した環境からより良い行動を学ぶ。
汎用的な推論能力の獲得
o1は、LLMとAlphaGoスタイルのDeep RLを組み合わせた、これまでにない汎用性の高いAIモデルです。LLMの持つ知識表現能力とDeep RLの持つ戦略的思考能力を融合させることで、様々な分野の推論タスクに適用可能な汎用的な推論能力を獲得しています。これは、特定のタスクに特化した従来のAIモデルとは一線を画す、大きなパラダイムシフトと言えるでしょう。
Deep RL的な能力をどうやって補足できるかな(コメント)
多くの知識を補充したり、適切な方向のフィードバックを促せば、似たような感じになるかもしれない。ありがちな技術だけど
1. 強化学習による微調整 (Fine-tuning with Reinforcement Learning)
ユーザーがLLMの出力を評価し、その評価を報酬としてモデルを微調整する。
報酬の設定: ユーザーは、LLMが生成した複数の出力に対して、それぞれの推論の質を評価し、報酬を付与します。例えば、論理の正確さ、妥当性、創造性などを基準に、数値やランキングで評価できます。
強化学習アルゴリズムの適用: Proximal Policy Optimization (PPO)などの強化学習アルゴリズムを用いて、ユーザーが設定した報酬を最大化するようにLLMを微調整します。
人間のフィードバックからの強化学習 (RLHF): これは、人間のフィードバックを報酬として使用し、モデルを微調整する手法です。ユーザーの好みに合わせた出力や、特定のタスクにおけるパフォーマンス向上などに利用できます。
2. 思考プロンプトの設計 (Designing Thought Prompts)
行動選択(思考プロセス)と環境の相互作用をこまめにチェックして、自己評価(強化)できるようなプロンプトも普通に効果がありそう。
段階的な推論を促す: 「まず〇〇について考え、次に△△を考慮し、最後に結論を導き出してください。」のようなプロンプトは、LLMに段階的な推論を促します。
複数の視点の検討を促す: 「この問題について、賛成意見と反対意見の両方を挙げてください。」のようなプロンプトは、LLMに多角的な視点から問題を検討させます。
仮説検証を促す: 「〇〇という仮説を立て、それを検証するために必要な情報を挙げてください。」のようなプロンプトは、LLMに仮説検証のプロセスを踏ませます。
3. 知識グラフや外部ツールの活用 (Utilizing Knowledge Graphs and External Tools)
Deep RLでは、エージェントは環境から情報を得て行動を決定します。だから考えるための前提と、結果になにか、指針となるような知識を渡して、検証しつつ思考を進めるようにすれば良さそう。たとえば、
知識グラフとの連携: LLMに知識グラフへのアクセスを許可することで、事実情報に基づいた推論。
計算ツールとの連携: Wolfram Alphaなどの計算ツールと連携させることで、複雑な計算を伴う推論。
検索エンジンとの連携: 検索エンジンと連携させることで、最新の情報を取得し、より現実的な推論。
まあ、今はありきたりの技術しかうかばないけれど、結局、適切な判断基準と、報酬と、多面的に思考を誘導することが重要ぽい。LLM自身がDeep RLエージェントのように自律的に学習するわけではないのだから、LLMの特性を理解し、適切なフィードバックやプロンプト、ツールを提供することが重要なんだろうね。o1のやり方には、無駄もあるだろうから、適切に必要な思考を補足するためにも、このあたりの手法を理解しておきたいところ。
4. STEM分野における卓越性:間違えていることがわかればもっと考えることができる。
検証容易性と推論能力の相乗効果
o1は、数学、コーディング、推論ベンチマークにおいてSOTAを達成しており、特にSTEM分野で優れた性能を発揮します。これは、STEM問題の多くが、解答の検証が容易であるという特徴を持つためです。o1の思考の深化能力とSTEM問題の検証容易性が相乗効果を生み出し、高い正答率を実現しています。
コメント
検証容易性と思考の深化能力が相性がいいのなら、検証のためのツールがあってもいいかもしれない。最終結果の検証が難しくても、サブステップでの相互の矛盾チェックとか、事実を調べれば分かる部分に検証を組み込めるかもしれない。
5. AI活用の進化:協働的ツールとしての可能性
o1は、単なる問題解決ツールではなく、人間と協働するためのツールとしての可能性を秘めています。例えば、研究者にとってブレーンストーミングパートナーや数学研究アシスタントとして活用できるだけでなく、将来的にはソフトウェアエンジニアリングなど、より広範な分野での活用が期待されています。o1の登場は、AIと人間の関係性を再定義し、より協働的な未来への道を示唆するパラダイムシフトと言えるでしょう。
動画の目次
実際の動画はこのような手順で議論が進みました。
o1への確信 (01:33~)
o1の仕組みと推論能力について (04:24~)
ゲームプレイからの教訓 (07:02~)
生成と検証 (09:14~)
o1の驚くべき点 (10:31~)
幻滅期からの脱却 (11:37~)
深層強化学習の適用 (14:03~)
o1のAlphaGo的瞬間 (14:45~)
開発中のAhaモーメント (17:38~)
STEM分野への強み (21:10~)
能力と有用性 (24:10~)
AGIの定義 (25:29~)
推論の重要性 (26:13~)
思考連鎖 (28:39~)
推論時スケーリング則の意味 (30:41~)
テスト時計算スケーリングのボトルネック (35:10~)
o1に関する誤解 (38:46~)
o1-mini (41:13~)
創業者にとってのo1 (42:15~)
内容の要約
研究者たちは、o1開発における確信、o1の仕組み、推論の定義、ゲームプレイからの教訓、生成と検証のギャップ、o1の驚くべき点、深層強化学習の適用、そしてo1のAlphaGo的瞬間について議論しました。
o1は、思考連鎖とバックトラッキングを用いて問題解決を行い、特にSTEM分野で優れた性能を発揮します。これは、STEM問題が検証しやすい推論タスクであるためと考えられます。o1は既に研究者にとって、ブレーンストーミングパートナーや数学研究アシスタントとして有用なツールになりつつあります。
推論時計算スケーリング則は、今後のAI開発における重要な発見であり、o1の将来性を示唆しています。現状のo1は完璧ではありませんが、その進化の方向性は明確であり、今後の発展に大きな期待が寄せられています。o1-miniのリリースにより、より高速なイテレーションが可能になり、エコシステムの発展にも貢献すると考えられています。
結論
o1は、LLMとDeep RLの融合という新たなパラダイムシフトを体現する画期的なAIモデルです。推論時計算スケーリング則に基づく今後の発展により、AGI実現への道筋を切り開く可能性を秘めています。
まとめ
o1は、推論時計算スケーリング則、思考連鎖とバックトラッキング、LLMとDeep RLの融合といった革新的な技術により、LLMの推論能力を新たな次元へと引き上げています。特にSTEM分野での目覚ましい成果は、その能力の高さを示す一例と言えるでしょう。o1の登場は、単なるAIモデルの進化にとどまらず、AIと人間の協働関係を再定義するパラダイムシフトの始まりと言えるかもしれません。私たちもo1の開発プロセスから学び、LLMへのプロンプト設計や思考プロセスの制御を工夫することで、より質の高いアウトプットを引き出し、AIとの協働をより効果的に進めていけるのではないでしょうか。今後のo1、そしてLLMの発展に大いに期待したいところです