【朗読】雨雫【ひとり声劇】
☆所要時間:約3分
☆人数 :1人用
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時計を見る。
この時間、あの人は仕事中だろうか。
それとも今日は、休みだろうか。
外は、雨。
昔から、楽しみにする日ほど天気はいつも雨だった。
連勤明けの休日。
例にもれなく、やはり雨。
ラジオに耳を傾け、人の声に触れ、笑顔になる。
机に置いたままの書類に目を通しサインする。
散らかった本を整理する。
洗濯物をたたみながら、また、ラジオの声から元気をもらう。
いくらでも、やることはあるのだ。
胸の奥のトゲに気付かぬふりくらい、いくらだってできるのだ。
これまで、ワガママを言わずにいられたはずなのに。
今は、言わないことでワガママを通してしまっている。
「もう、好きじゃない。」
嘘でもそう言えたら良かったのだろうか。
時計を見る。
あの人とよく電話していた時刻だった。
話していた内容
話しながら見た景色
電話を切りたくなくて、いつまでも家に帰れなかったこと。
どれも眩しくて、痛いほど鮮明な記憶。
あの人の声と過ごしていた私は
笑ってばかりだったのに、
端々(はしばし)に滲(にじ)む悲しみから目を逸(そ)らせなくて、
いつしか、自分を許すことができなくて、
私は
あの人から 離れることしか できなかった。
傘の雫(しずく)を見て笑いあった日が
まるで 遠い昔のことのように
雨音に隠されていく。
あの人は、雨を嫌いにならないでいてくれるだろうか。
抜けないトゲの痛みを戒(いまし)めにして
私の時間は、今日も止まったままなのに
涙だけは流れ落ちるのだ。
End
〜マコのひとりごと〜
フリーBGMの「雨雫」に当て書きした台本です。
もっぴーさうんどさま、素敵なサウンドをありがとうございました!!
Twitterでこの曲に当て書きをしたい!とつぶやいたところ、たくさんの方が当て書き作品を書いてくださいました(´。✪ω✪。`)
サービス終了してしまった配信アプリ「ボイコネ」には、この曲をBGMにした素敵な台本がたくさんありました。
またこれからも、この曲と一緒に、美しい文章が読めることがとても嬉しいです(*´艸`)
2023/5/29
一部、若干の文章変更をしました。