【短文朗読】皓月の道標
☆所要時間:1分
☆人数 :1人用
山陰(やまかげ)から覗く
いつもより大きな明かり
まだ手が届くのではと
錯覚を起こすほどの
低く大きなその姿は
あっという間に天へと昇り
”わたしのあなた”ではなく
闇を照らす”道標”へと変わるのだ
山吹の強い光は
やがて黄味を帯び
やわらかな淡黄(たんおう)となるも
それでいて ありありと
その存在感を世界に知らしめながら
夜が更けていく様を忘れさせる
南の空へ移る頃には
世界を見守っているようで
個々への目配りをしてくれているような
清らかな光を送ってくれる
「ほんのひと時だけの
”わたしのあなた”
枕元のこの涙を照らし
流れ星にはしてくださいませんか」
皓月(こうげつ)の明かりに目を細め
いと恋し と
溢(こぼ)れ出たのは
誰に向けての
言葉であろうか
End
昇る月を見つめ
誰を想うだろう