足における外側アーチとは?
人間の足には、主に3つのアーチが存在します。これらのアーチは体重を支え、かつ歩行時の衝撃を吸収するなど、重要な機能を担っています。ここでは、そのうちの外側アーチ(足の外側に位置するアーチ)に焦点を当てて解説します。
1. 外側アーチを構成する3つの骨
外側アーチを形作る主な骨は次の3つです。
1. 第5中足骨
• 足の小指側にある中足骨で、アーチの前方を支えるポイント(前方支持点)。
2. 立方骨
• 足の中央からやや外側にあり、かかと(踵骨)と第5中足骨の間に位置。地面からわずかに浮いています。
3. 踵骨(かかと)
• アーチの後方を支える大きな骨(後方支持点)。
外側アーチは内側アーチほど高くなく、地面から3~5mm程度しか離れていないため、足裏の軟部組織を介してほとんど接地しています。
2. 外側アーチの特徴と機能
2-1. 下腿三頭筋の動力伝達
外側アーチは、腓腹筋・ヒラメ筋からなる下腿三頭筋の力を足へと効率的に伝える役割があります。
• 内側アーチよりも強固な構造を持つのが特徴で、主に体重を支えながら歩行や走行の安定性を確保する要となります。
2-2. 底側踵立方中足靱帯の役割
外側アーチを頑強に保つ一因として、底側踵立方中足靱帯の存在が挙げられます。
• この靱帯は、かかと(踵骨)と立方骨、および中足骨の関節部分が体重によって下方へ開いてしまうのを防止。
• アーチが落ち込まないように支柱のように機能します。
3. 外側アーチにかかる力学と損傷リスク
3-1. 骨梁システムを通じた力の伝達
足に加わる力は、主に2つの骨梁システムを通して距骨から踵骨へと伝わります。
1. 脛骨の前方骨皮質から出る後方の骨梁が、距骨下扇(距骨の下部周辺)へ向かう流れ。
2. 脛骨の後方骨皮質から出る前方の骨梁が、距骨→立方骨→第5中足骨を経て前方支持点まで到達する流れ。
3-2. 踵骨の弱点
踵骨には上方扇状システムと下方三角システムという2種類の骨梁システムがあり、圧迫や伸長に対してそれぞれ抵抗します。しかし、この2つのシステムの間には構造的に弱い部分(大突起付近)があるため、高所からの落下など、強い衝撃が加わると骨折が起こりやすいのです。
3-3. 骨折時の整復の難しさ
踵骨が骨折すると、整復が難しいことで知られています。
• かかと部分(踵骨台)を持ち上げるだけでなく、大突起も正しい位置に戻さなければなりません。
• 大突起がずれたままだと、結果的に内側アーチまで陥没したままの状態になる恐れがあり、歩行の際のバランスが大きく損なわれます。
4. 外側アーチを支える筋肉
外側アーチの安定性と機能には、以下の筋肉が大きく関与しています。
1. 短腓骨筋
• 第5中足骨の基部付近を支持し、底側踵立方中足靱帯と同様に関節が下方に開かないように抑制します。
2. 長腓骨筋
• 短腓骨筋と並走し、似たような働きを持つ。
• 腓骨筋結節によって、踵骨を弾力的に支える役割も果たします。
3. 小趾外転筋
• 外側アーチ全体の“弦”のように働き、内側の母趾外転筋と同様、足裏のバランス保持に寄与します。
4. その他
• 第3腓骨筋や長趾伸筋なども、条件によっては外側アーチを補助。
• 下腿三頭筋も外側アーチの形成・維持に影響を与えます。
これらの筋肉は、いずれも外側アーチの能動的な緊張器として機能し、足裏が衝撃に耐えられるようサポートすると同時に、足の形状を保っています。
5. まとめ
• 外側アーチは足の外縁に位置し、第5中足骨・立方骨・踵骨の3つの骨から構成されます。
• 高さは低めで、内側アーチよりも堅牢にできており、体重を支える重要な機能を持ちます。
• 底側踵立方中足靱帯がしっかりアーチを保持し、下腿三頭筋の力を効率よく伝達する役割を果たします。
• 骨梁システムの構造上、衝撃によって踵骨が骨折しやすい弱点がありますが、骨折の整復は難易度が高いです。
• 短腓骨筋や長腓骨筋などの外側の筋肉は、能動的にアーチの安定を支えています。
外側アーチの構造や力学的性質、さらに支える筋肉の役割を知ることは、足の健康を守るうえで非常に重要です。日常生活やスポーツの場面で足に過度の負担をかけないよう意識することで、ケガの予防やパフォーマンスの向上にもつながるでしょう。
著者情報
この記事を書いたトレーナー
山岸慎(やまぎし まこと)
パーソナルジム STUDIO KOMPAS 渋谷店
住所: 東京都渋谷区南平台町13-11 南平台WEST 地下102
ストレッチリラクゼーションサロン ESL 技術監修